Day: 02/04/2021

【香川】A’s(高松)

またやって来ました。用事があるのはいつも対岸の岡山なのですが、最近はこの高松がマイブームなのです。なぜなのか?なんとなく都会からきっぱりと「離れた」気持ちになれる、からでしょうか。新幹線が通っているところは、駅に「東京行き」とか「大阪行き」とか視界に入ってきます。その瞬間に現実がまた戻ってくる感覚になります。また、新幹線という大動脈があると、人の流れも当然にあります。駅近くで飲んでいると、隣に座っている人と出身が同じってことも結構ザラにあります。「高松」という都市は、比較的容易にその動脈から「脱線」できて、でもそこまで田舎風ということでもなく、バー巡りを楽しめる繁華街もあります。なので、本当に最近は一押しの場所です。 その玄関口となるのがJR四国の高松駅。今では数少ない「ターミナル駅」(終着駅)です。関西で言うと阪急の梅田、東京だと昔の東急渋谷的な感じでしょうか。要は線路がそこで終わるところ、そしてまた、これを始点として同じ四国内の徳島や松山、さらには瀬戸大橋を渡った岡山に行く電車の始発駅となります。(夜にはサンライズ瀬戸という夜行列車が1便東京に向けて出ています。鉄道ファンには人気の列車です。)さて、駅を降りると大きな広場があり、近未来的というかモダンな建物群が目の前に展開します。ちょっとした飲み屋街も右手にあります。ここで注意したいのは、この界隈が高松の中心ではないことです。繁華街は「古馬場町(ふるばばちょう)」と言いまして、駅から南東の方角にあります。空港からのバスや琴電というローカル電車でいうと「瓦町」という駅を降りた正面に広がります。アーケード街が縦横に走り、その隙間の横道に飲食店などが立ち並びます。規模は大きくありませんが、小さく密集しているので、街歩きには非常に都合の良い大きさです。 今回お邪魔した「A’s(エース)」さんは、その瓦町のバスターミナルから歩いて数分の場所。夕方に高松に着いたのですが、日帰りの予定であったので長居ができませんでした。まだお店はどこも開店前のような感じでどこも営業しておらず、困り果ててアーケードの酒屋さんに立ち寄り、ダメ元でどこか早く開けているお店(バー)をご存知ないか伺ったところご紹介頂いたのが今回のエースさんになります。(買い物もせずご親切にありがとうございます!)丁度酒屋さんからも近く、お店は階段を上がった2階にあり、カジュアルとオーセンチックの間くらいの感じでした。でもカウンターの中の方は皆正装で落ち着いた雰囲気、接客も非常に丁寧、お値段もとてもリーズナブルでハーフ(ショット)のオーダーもOKでした。品揃え的には、ウイスキー、バーボン、ラム、ジンなどオールラウンドに揃えていて、お目当てのスコッチウイスキーについては棚に出ていないモノもあるとのこと。とりあえず、キルホーマンのマキヤベイを頼んで、寛ぎます。お伺いした際には、男性二名女性一名で切り盛りされていて、お客さんにマンツーマンで接客するようなスタイルでした。毎回思うのですが、地方のバーテンダーの方は接客に対する流儀がしっかりしているなと感心します。都会は人が多いので色んな客層の人もいて、サービスも各種各様といった感じですが、地方都市のバーは「それなりの人が来る場所」という感じがします。 いつもはスコッチウイスキーを中心に攻めるのですが、今回はカウンターに座った目の前にあったラム酒に興味が惹かれ、また接客して頂いたバーテンダーの方が「ラム酒」押しの方であったので、今宵はスコッチではなくラム酒の飲み比べをしました。という訳でズラッとならんだラム酒(全てハーフ)です。 ラム酒というのは簡単にいうと、サトウキビ(の糖蜜)を原料とした蒸留酒です。簡単に右側から紹介します。まずは「MOUNT GAY」(マウントゲイ)。「1703」は蒸留所の創業年で、カリブ海のバルバドスにあります。バルバドスは「ラム酒発祥の地」とも言われ、マウントゲイ蒸留所は現存する最古の蒸留所とのこと。(たぶん非合法とかいれたら話は違ってくるかとも思いますが、そこは深く立ち入らないことにします。(笑))バルバドスは元々イギリスの植民地であったこともあってか、蒸留はポットスチルで2回蒸留したものも使われているそうです。また、マウントゲイはイギリスのスパイ映画007シリーズでも、主人公のジェームズ・ボンドと共に登場します。(CASION ROYALE)飲んでみての印象ですが、かなりバーボンに近い芳醇な味わいで、ライウイスキーのようなスパイシーさもあり、パッと思ったのは「カナディアンクラブ」に近いかなと感じましたん。それもそのはずで、熟成にはバーボン樽が使われ、フィニッシュには中をじっくり焦がした(いわゆるヘビーチャーの)アメリカンオーク樽が使われおり、BLACK BARRELというのはじっくり樽を焦がした質感のことかと思います。 ベーシックなハバナクラブと比べてみると分かるのですが、バーボン樽熟成による独特なまろやかさがエレガントな質感を醸し出していると思いました。さすがに300年以上の伝統ある蒸留所の味です。 真ん中は「フロール・デ・カーニャ」、ニカラグアの蒸留所になります。このシリーズのラインアップは熟成年別に、12年、18年、25年、更に30年というのもあるようですが、この「25年」はかなり希少なようです。原料は100%オーガニックで、蒸留には再生エネルギーを活用し、サステナブルな生産にこだわりが。こちらも130年以上の歴史を持つ老舗の蒸留所です。その味わいはというと、ものすごく深みと円熟味を感じるユニークなもの。この味はウイスキーの系統ではなく、恐らくラム本来の熟成感というのかなと思わせる一杯でした。さすがに25年モノということで、お値段もそれなりでしたが、ハーフであればなんと千円台。とても印象に残る味でした。 最後に飲んだのが地元香川のテロワールということで、地元産のさとうきびで造ったラム酒。ただし、熟成はほとんどされておらず、ほとんどニューポットに近い状態、色目も見ての通り透明です。香川(と徳島)は地元のお菓子で「和三盆」という伝統和菓子があるのですが、このお菓子のメーカがクラウドファンディングを通じて、原料のサトウキビを活用してラム酒を作れないかという事で、これまた地元の酒造メーカとタイアップして造られたものだとのこと。市販はされておらず、クラウドファンディングに出資した方へのリターンとしてこちらのニューメークスピリットがリリースされたようです。味わいは、やはり甘さがきます。ウイスキーのニューポットは麦感のほのかな甘さを少し感じる程度ですが、こちらはさすがに「糖蜜」から作るだけあって素材そのものの甘さが十分にある感じ。これから熟成ものも出来てくるようなので、引き続き将来も楽しみです。 47都道府県の終着駅は自分にとっては島根県となった。46番目の熊本は昨年、45番目の沖縄はその前の年にクリアした。流石にラスト三つくらいになると、一つ一つの思いも重くなってくるのを感じた。 鉄道旅の好きだった自分にとっては、昔は青春切符で多くの地方を回ったけれど、今は専ら飛行機と車。特に山陰や九州に鉄道だけで行くのは、仮に新幹線を利用したとしてもかなりシンドイ。 その中でも最後まで残った島根は、恐らく多くの人にとって最も遠い県なのでは無いか。空港は出雲にあるが運行は主にJALのみで、新幹線は通っておらず、高速網は幹線と接続しているものの中国道の山の中を寂しく分岐する。 出雲大社の国造りの話でその名をよく知られるが、伊勢や大和(奈良)のような華が無い。「山陰」という名が示す通り、陰に隠れて目だないような存在である。 今回その地に遂に初めて辿り着いて、この目で確認したのは、その「距離感」の上に守られ続けてきた時間の流れであった。忙しくなく変化をし続ける都会の街や、その例に倣って開発が進む多くの地方都市とはやや違い、県都松江にはある種の独特な世界観が保持されていた。

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