【香川】BAR タビ(弐)(高松)
先ずは香川県民の皆様に深くお詫び申し上げます。正直、甘く見ていました。 1件目に訪ねてみたシャムロックさんが開いてなかったので、google mapで再検索してふらっと寄ってみただけだったのですが、激しく期待を裏切られてしまった次第。その顛末を謹んでご報告申し上げます。 最近キルホーマンに魅せられていたので、とりあえずマキヤベイくらいが置いて有れば良いかな、むしろ置いてなくてもまあ仕方無いかな、なんて思いながら聞いて見だけなのですが、これはどういうことですか?!店の方が「ちょっとお待ちください!並べてみますので。」と言われてカウンターの前がこんな感じになりました。 確か四国に行く飛行機に乗ったかと思ったのですが、もしかしてアイラ島に来ちゃいました?その割には1時間くらいしか乗ってなかったような気がするのですが、気のせいでしょうか?? 少し目も慣れてきたのでが、ちょっと待ってください!このバーはかなり「半端無いです」。 先ず、よく見たら目の前に石垣らしきものがあります。お聞きしたら、本物の石垣のようです!そして、江戸時代頃の棚を活用した改造シェルフ!前にも横にもリアレンジした骨董品、そしてその中にはリキュールやジンのボトルがお宝のようにズラリ。さらに、さらに!グラスやコーヒーメーカなどの備品や器具にもかなりこだわりがあるのが見て取れます。スゴイ!地方のバーで内装に凝った歴史を感じさせるオーセンティク・バーは結構あると思うのですが、ここは自分が今まで行った中でも一番「今風に」オシャレな感じ。 客層も面白いです。老若男女がいる感じです。カウンター側も女性が二人。実はこの日、カウンターは満員御礼でした。一人で来ている方は少なくて、自分ともう一人の男性の方以外はペアかカップルでした。あと、話を聞いている感じでは、そこまでウイスキー好きが集まるというよりかは、リキュール的なものを楽しみにくる方が多いように見受けました。お酒の楽しみ方は色々なので、自分も逆にジンやラム、メスカルといった他のお酒も少し勉強させてもらいました。 また、フードも充実しているようです。自分は頼んでいないのですが、「突き出し」(関西では「お通し」をこう言います)ででてきたのはミニクロワッサンに生ハムを載せたかわいらしいもの。ウイスキー専門バーだと、だいたいナッツとかの乾きモノくらいしか出て来ないので、これは新鮮です。地方のオーセンティックバーは、内装やフードなど初めての方にも楽しめる演出に凝っているところが多い気がします。都内とかは、専門で細分化され過ぎてしまっていて、分かっている方には天国でも、初めての方とかには少し難しいと思われる店も少なくありません。(もちろん地方にもそういった超マニアックのモルトバーもあります。実はこの香川県内にも「聖地」と呼ばれているところがあって、自分も一度だけ立ち寄らせて頂いたのですが、また自分が投稿するには恐れ多いのでまたの機会にします!) さて、バーに戻りましょう。先ずはキルホーマンとは何ぞや?というところを一応説明します。詳しくはホームページの蒸留所ページ(→キルホーマン蒸留所)を参照頂ければと思いますが、ここでは簡単に。キルホーマン蒸留所はアイラ島にある家族経営の小規模なクラフトディスティラリーです。その特色を一言でいうなら「モルト感(大麦)」。大地の蒸留所とでも良いでしょうか。アイラ島の他の蒸留所が海沿いに立地するのに対し、このキルホーマン蒸留所は内陸にあります。その意図するところはFARM DISTILLERY。要するにウイスキーの原料である大麦を自家栽培し、その大麦畑の中に蒸留所があるのです。この蒸留所を開設したのは、アンソニー・ウィルス氏。2005年の事で、アイラ島で新しく蒸留所が開設されたのは、なんと124年ぶりのことでした。 という訳で、このキルホーマンの特色は、なんといっても「モルト」だと個人的には思っています。もちろんアイラ独特のピート感もあるのですが、ラフロイグやアードベッグのような磯風のピートとは少し違うような気がします。やはりこれは内陸にあるので、潮風などの影響が少ないからなのかもしれません。因みにこのキルホーマンは大麦栽培からボトリングまでの全ての工程をワンストップで行っています。現在、ほとんどの蒸留所はモルトやボトリングなどの工程を外注に出して、発酵~貯蔵のメイン工程に特化している中でかなり珍しいと思います。要は100%テロワールといったところでしょうか。 という訳で、キルホーマンを飲むなら、自分が一番オススメするのは、100%自家栽培の大麦を使用した、「100%アイラ」(現状は、蒸留所で作る全ての大麦を賄うだけで生産できていない。将来的には全量を自家栽培にしたいようです)。ただし、今日は目の間にボトルを並べて頂いたので、そこから選んでみることにしました。先ずは、「LOCH GORM」(ロッホ・ゴルム)。キルホーマンのベーシックなラインアップの中で、最もシェリー感にあふれます。それもそのはず、熟成は100%オロロソ・シェリーです。バーボンが基調のキルホーマンにしてはかなり珍しいと言えるでしょう。 飲んでみての感想ですが、ボディのモルトにシェリー感が覆いかぶさっているような感じ。これまで飲んできたのでは確かに一番甘い。でも、個人的にはこの「覆いかぶさる」感が、要はうまくマリッジしてないように感じました。要は強烈なモルト感とシェリーがうまくマッチしてないのかなと。この辺は、個人の好みの範疇ですが、自分の正直な感想です。 という訳で、やっぱりバーボン熟成のものを頼みました。ヴィンテージ品のシングルカスクです。 2011年蒸留の2018年ボトリング、なので7年熟成。50ppm。はい、案の定というか、めちゃストライクです!やっぱり、バーボン熟成がマッチしている気がしますね。次は、セカンドフィルのバーボンで10年以上熟成させたものとかを飲んでみたいなと思いました。アイラモルトは、アードベックやラフロイグだととにかく薬品のようなピートとスモーキーさがぶぁっとと口の中に広がるのですが、その代わりというか、あまりモルト感を感じにくいのかなと思います。キルホーマンは、ピートとモルトの両方のダブルパンチがさく裂します。これが爽快です。 さて、最後にちょっと口直し的に「ボウモア12年」を頼んでみました。近頃はコンビニとかでも小さな瓶に入ったのを見かけます。口に含んで思ったのですが、やはりかなりマイルドです。アイラ初心者向きですね。正直、どこでも目にするので頼んだ記憶が無かったのですが、実際にこうして飲んでみてコンビニやスーパーでも並んでいる理由が分かる気がします。アイラに抵抗感のある方や、ウイスキー初めての方でもトライできますね。逆にキルホーマンは、そういう意味ですと初心者の方にはパンチが強すぎるかもしれません。一発KOも有り得ます。(笑) 蒸留所は、それぞれのこだわりで自らの味を作り出しています。伝統の味を守り続けるところもあるし、消費者目線で作るところもあるし、はたまた作り手のこだわりを前面に押し出すところもある。そういう意味では、キルホーマンは、キルホーマンですね。わが道を突き進む感じです。まだ若い蒸留所ですが、すでに様々なボトルをリリースしてきているようなので、これからもっと発見がありそうです。 さて、キルホーマンの宣伝ばかりになってしまいましたが、こちらのバーは本当に居心地がよかったです。ウイスキーを楽しむには、やはり「居心地」はとても大切だと思います。繊細な感覚を研ぎ澄ませるのに、やはり「ノイズ」があると集中できません。そういった意味でも、環境、グラス、セレクション、全てにおいて満足がいくと感じました。スタッフの皆さんもお若いですが、ホスピタリティとプロフェッショナリズムに満ち溢れて言います。 間違いなく、また来たいと思わせるバーでした。 P.S. 最後にお店を出るときに気づいたのですが、玄関の扉の高さが(!)汗