Day: 06/28/2020

BAR GOSEEにて

今日は久々に行きつけのお店にお邪魔しました。 コロナ禍で大変ですが、こちらのバーは常連さんがメインで、だいたいは落ち着いた感じです。 やっぱり行きつけの店って大切にしたいですよね。とにかくご迷惑はおかけしたくないんで、比較的空いてる早めの時間帯によってみました。 ここのバーはコロナ前から何度か通っていて、ある程度どのような銘柄が置いてあるのかも、頭の中にあります。 要するに、今日飲みたいウイスキーについてある程度イメージを持ったうえで、店の門をくぐることができるということ。 今回、自分は、キャンベルタウンの「スプリングバンク」と初対面すると決めていました。 *** キャンベルタウンの「スプリングバンク」。 ウイスキーの好きな方なら、知らない方はいらっしゃらないと思います。 それくらい有名です。 スコットランドにおける蒸留所は、地域別におおよそ5つに分かれます。 まずはおおまかに、「ハイランド」(北部/田舎)と「ローランド」(南部/都会)。 「ハイランド」の中で、スペイ川流域を「スペイサイド」と言います。 このスペイサイド地区が最も蒸留所が密集する地域です。 また、スコットランドの周りにある島々で生産されるウイスキーを「アイランズ」といいます。 キャンベルタウンというのは、スコットランドのある島の西の外れに位置する都市です。 現在この地域で稼働している蒸留所はたったの3つ。 なぜ、たった3つの蒸留所しかないのに、別に区分けされるのか? それは、ここがかつては「世界のウイスキーの首都」と呼ばれるほどにウイスキーで繁栄していたからです。 日本でのウイスキーの創成期に活躍し、ニッカウヰスキーを起こした竹鶴正孝も、この地でウイスキー作りを学びました。 ところが、20世紀前半の大不況の影響で、30ヶ所以上もあった蒸留所は次々と閉鎖。 今世紀に至るまで生き延びたのが、今回取り上げるスプリングバンク蒸留所他、3つです。 残りの二つは、グレンガイル蒸留所とグレンスコシア蒸留所。 グレンガイルは「キルケラン」という銘柄を作っていますが、実は出資者がスプリングバンク。2000年にスプリングバンクを運営する会社が買収し、当時閉鎖されていた蒸留所を復活させました。 グレンスコシアはオーナーが頻繁に変わり、廃業と復活を繰り返しながら、何とか生き延びてきました。 *** さて、スプリングバンクに焦点を当てましょう。 ここまでの話で、スプリングバンク蒸留所が、スコットランドのキャンベルタウンにある蒸留所であるということは、お分かり頂けたかと思います。 また、キャンベルタウンの最盛期から今日まで、継続して安定的に運営しているという意味では、唯一の蒸留所と言って良いでしょう。 この苦難の歴史を力強く生きてきたスプリングバンク。 生き延びてきたには理由がもちろんあります。 ウイスキー愛好家から愛される確固としたポリシーを貫いてきたからです。 この蒸留所は、何百とあるスコットランド全体の蒸留所から見ても希少価値の高い特徴を持っています。 フロアモルティング、全工程の一貫生産、そして最古の家族経営。この3つを挙げます。 先ずは、全てのモルト(麦芽)がフロアモルティング。これはスコットランド唯一です。 フロアモルティングというのは、大麦を麦芽にする際の工程の一つですが、 大麦を床に敷き詰めて作業することから、こう呼ばれます。 昔は全ての蒸留所がフロアモルティングでしたが、人力による手作業のため大変。 1960年代にほとんどが機械化されてしまいました。 今でも部分的に行っている蒸留所はいくつかありますが、全てのモルトをフロアモルティングで生産しているのはスプリングバンクだけです。 スプリングバンクも1960年に一度はフロアモルティングを止めましたが、1992年に再開した経緯があります。 二つ目は、一貫生産。大麦の栽培からボトリングまでの全ての工程を自社で行います。 原料となるモルト(麦芽)や、ボトリングは専門業者に任せることが多い中で、 最初から最後まで全て自前で行うというのは珍しいです。 三つめは、家族経営で独立して運営してきてきた蒸留所としては最古であること。 設立は1828年で、現在のオーナーは創業者から数えて5代目になります。 このスプリングバンク蒸留所が製造するのは3つのブランドがあります。 まずは、蒸留所の名を冠した、「スプリングバンク」。 2回半蒸留という特色があります。 2回半というのは、最初の蒸留で得られたローワイン(初留液)の半分を再度蒸留させることからこう言われます。 そして、「ロングロウ」 こちらは一般的な2回蒸留ですが、モルトがピート焚きなので、ピートが強いです。 最後に、「ヘーゼルバーン」 アイリッシュ式の3回蒸留。ピートは使いません。因みに、竹鶴正孝が実習したのが、このヘーゼルバーン蒸留所です。 さて、まず試したのは「スプリングバンク12年」。 […]

【千葉】BAR ALBA(II)(千葉)

千葉方面に用事があり、その帰りに再び先日訪問した千葉駅西口のバーALBAさんを訪問しました。 店名の「ALBA」という名前であるが、オーナーに由来をお伺いしたところ現地の言葉で「スコットランド」という意味らしいです。因みに大昔(といっても6世紀くらい)にはスコットランドに住んでいたピクト人が建国したアルバ王国というのがあったそうです。日本でいうところの「大和(やまと)」とか、そういう感じなのでしょうか。 JAPANという名前も、もとを辿ればマルコポーロが指した黄金の国「ジパング」が由来というから、結構勝手なものですが。しかし、そんな勝手につけられた名前になぜか愛着を感じてしまうから面白いモノです。 さて、前回ここを来訪したときに頂いた格調高き王室御用達のブレンドスコッチ、「ロイヤルハウスホールド」。このウイスキーのストーリーを少し復習しておきたいと思います。 このウイスキーと英王室の関係は100年以上前に遡り、時は1897年。 「当時自社ブランドが英国下院の公式ウイスキーにもなっていたジェームズ・ブキャナン社が、英国王室によって皇太子(後のエドワード7世)専用のブレンデッド・スコッチウイスキーを造るよう、勅命を受けたことに由来」。 要は英王室のご用命で特別に作られたブレンドウイスキーになります。 繰り返しになりますがこのウイスキーが飲めるのは、イギリス以外では、日本だけなのです。 イギリスでさえ特別な場所に行かないと買えないそうなので、町の酒屋さんでも(値段はともかく)普通に買えて、家で飲めますというのは、素晴らしいことです。 なぜ日本で飲めるのか?という話ですが、昭和天皇が皇太子時代にイギリスを訪問された際、英王室からこのブレンドを授かり、特別な許可を経て日本でも楽しめるようになったからだそうです。 今回ALBAさんを再訪したのは、このロイヤルハウスホールドのキーモルトである「ダルウィニー」を飲むためでした。キーモルトというのは、ブレンドウイスキーにおいて味の中核を為すウイスキー原酒のことです。 そんな訳で、開口一番「ダルウィニー(15年)」を注文しました。 香りは確かにロイヤルハウスホールドと同じような感じもするかなあ、と思いましたがテイスティングしてみてちょっとビックリです。 丸みのある味を想像していましたが、シャープですっきりした感じです。あまりフルーティとか、まろやかとか、そういう感じではありません。 そこで、蒸留所について考えてみました。ダルウィニーはスコットランド北部にあり、いわゆるハイランズという分類に分けられます。 蒸留所はスコットランドの蒸留所の中でも最も高い場所にあり(とは言っても300mそこそこですが)、年間を通じた気温がイギリス国内で最も低い所として知られています。 ということは?味にどのような影響があるのでしょうか。 通常ウイスキーは貯蔵庫で熟成する際に、温度の変化により樽が膨張と収縮を繰り返し、中のウイスキーも「呼吸」をします。 気温がずっと低いということは、呼吸が静かでゆっくりと熟成することを意味します。 比較的温度の高い条件で熟成をしたりすると樽感が良く出る反面、味わいが結構丸みを帯びることがありますが、低温熟成というような感じのため蒸留した後のスピリッツの感じが生きているような気がしました。生半可な知識の中でただの想像に過ぎませんが、こうしたいろんなことを考えながら飲むのも楽しみの一つです。 ロイヤルハウスホールドには、モルトとグレーンの原酒が45種類も使用されています。 キーモルトのダルウィニーの静かな佇まいを下地として、様々なウイスキーの調和により独特な柔らかさが作り出されているのだと思います。 以上が、ロイヤルハウスホールドと、そのキーモルトであるダルウィニーをテイスティングした上での感想です。 お次は何を頼もうかということで、棚をチラチラ見ていると隅の方に面白そうな銘柄を発見。「ウルフバーン」とあります。モノクロのラベルに動物の絵が。ウルフ(狼)なのでしょうか。 ウルフバーン蒸留所が出来たのは今世紀。2012年12月に誕生しました。 場所はスコットランドの最北端、ケイスネス州にあります。 2013年から稼働を始めたこの蒸留所が、スコッチの規則である「熟成3年」の時を経て、出荷を始めたのが2016年。 従って、まだまだ熟成年度が若いボトルしか登場していません。 今回トライしたボトルもいわゆるノンエイジ、熟成年数の表記が無いものです。 テイスティングして、こちらも驚きです。 とても透き通るような感覚です。なんというか、本当に何も無い皿のような感じです。 先のダルウィニーもそうですが、いわゆるスコットランドの北部地域はハイランズと言われます。 スペイサイド地区がフルーティさ、芳醇さを特徴とするのに対して、ハイランズ系はウイスキーの純朴な味を極めているような感じがあります。 さて、この新設のウルフバーン蒸留所ですが、設立に至る経緯についても述べておきたいと思います。 先ず「ウルフバーン」という名前は、1821年~1877年の間、この地で約50年間創業した蒸留所の名前からとっています。 設立者はアンドリュー・トンプソン氏で、ウルフバーンのあるケイスネス州の出身。 これだけだと、どこか別の蒸留所で経験を積んだ後に故郷で操業したのだろう、と推測してしまいそうですが、前職はかなり異色の経歴の持ち主です。 なんと元軍人。英海軍に7年間勤務し、アフガニスタンやイラクなどにも派遣された経験があるようです。 その後は南アフリカに移住し、通信関係のビジネスを起業しバリバリのビジネスマンとして活動。 まるで、スーパーマンのような人です。 そんな彼ですが、休みも十分に取れず人間らしい生活ができない事に疑問を感じたとのこと。 また、さびれゆく故郷を目の当たりにしながら、考え始めました。 「この土地で事業を始めることで雇用を生み、地域の活性化に役立ちたい」。 そんな訳で、図書館でウイスキーの事を勉強しながら、事業で稼いだ資金を投じて、まるっきり一から作られたのがこの蒸留所です。 この蒸留所の製法的なこだわりも面白いです。 これだけビジネスをした彼なら、最新鋭の設備を導入した現代的な作り方をするかと思いきや、こだわったのはあくまで「昔のやり方」。 そうです、かつて19世紀に操業し、廃業してしまったあの当時の製法。 「デジタル時代だからこそ、徹底してアナログでいることが強みを持つ」という考え方です。 しかも、雇うのは円熟したベテランではなく、あくまでまだ成長過程の現役組。 若い蒸留所の活力を生かすためには、若い力が必要だと考えているようです。 ここまで蒸留所の設立の経緯を振り帰ってみました。他にもネットで探せばいろんな記事がありますが、詳しく知りたい方は など参考ください。 改めて、このウイスキーの透き通るような味を考えたときに、これは新たな始まりの味なのだと思いました。 ウイスキーが熟成を得て本来の旨さを持ち始めるには10年以上の歳月が必要です。 まだまだ若い蒸留所と、若い年数のボトルしかありませんが、今後蒸留所がどのような進化を遂げていくのか、ウイスキーの味がどのような深みを持っていくのか、非常に楽しみです。 […]

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