今日は久々に行きつけのお店にお邪魔しました。
コロナ禍で大変ですが、こちらのバーは常連さんがメインで、だいたいは落ち着いた感じです。
やっぱり行きつけの店って大切にしたいですよね。とにかくご迷惑はおかけしたくないんで、比較的空いてる早めの時間帯によってみました。
ここのバーはコロナ前から何度か通っていて、ある程度どのような銘柄が置いてあるのかも、頭の中にあります。
要するに、今日飲みたいウイスキーについてある程度イメージを持ったうえで、店の門をくぐることができるということ。
今回、自分は、キャンベルタウンの「スプリングバンク」と初対面すると決めていました。
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キャンベルタウンの「スプリングバンク」。
ウイスキーの好きな方なら、知らない方はいらっしゃらないと思います。
それくらい有名です。
スコットランドにおける蒸留所は、地域別におおよそ5つに分かれます。
まずはおおまかに、「ハイランド」(北部/田舎)と「ローランド」(南部/都会)。
「ハイランド」の中で、スペイ川流域を「スペイサイド」と言います。
このスペイサイド地区が最も蒸留所が密集する地域です。
また、スコットランドの周りにある島々で生産されるウイスキーを「アイランズ」といいます。
キャンベルタウンというのは、スコットランドのある島の西の外れに位置する都市です。
現在この地域で稼働している蒸留所はたったの3つ。
なぜ、たった3つの蒸留所しかないのに、別に区分けされるのか?
それは、ここがかつては「世界のウイスキーの首都」と呼ばれるほどにウイスキーで繁栄していたからです。
日本でのウイスキーの創成期に活躍し、ニッカウヰスキーを起こした竹鶴正孝も、この地でウイスキー作りを学びました。
ところが、20世紀前半の大不況の影響で、30ヶ所以上もあった蒸留所は次々と閉鎖。
今世紀に至るまで生き延びたのが、今回取り上げるスプリングバンク蒸留所他、3つです。
残りの二つは、グレンガイル蒸留所とグレンスコシア蒸留所。
グレンガイルは「キルケラン」という銘柄を作っていますが、実は出資者がスプリングバンク。2000年にスプリングバンクを運営する会社が買収し、当時閉鎖されていた蒸留所を復活させました。
グレンスコシアはオーナーが頻繁に変わり、廃業と復活を繰り返しながら、何とか生き延びてきました。
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さて、スプリングバンクに焦点を当てましょう。
ここまでの話で、スプリングバンク蒸留所が、スコットランドのキャンベルタウンにある蒸留所であるということは、お分かり頂けたかと思います。
また、キャンベルタウンの最盛期から今日まで、継続して安定的に運営しているという意味では、唯一の蒸留所と言って良いでしょう。
この苦難の歴史を力強く生きてきたスプリングバンク。
生き延びてきたには理由がもちろんあります。
ウイスキー愛好家から愛される確固としたポリシーを貫いてきたからです。
この蒸留所は、何百とあるスコットランド全体の蒸留所から見ても希少価値の高い特徴を持っています。
フロアモルティング、全工程の一貫生産、そして最古の家族経営。この3つを挙げます。
先ずは、全てのモルト(麦芽)がフロアモルティング。これはスコットランド唯一です。
フロアモルティングというのは、大麦を麦芽にする際の工程の一つですが、
大麦を床に敷き詰めて作業することから、こう呼ばれます。
昔は全ての蒸留所がフロアモルティングでしたが、人力による手作業のため大変。
1960年代にほとんどが機械化されてしまいました。
今でも部分的に行っている蒸留所はいくつかありますが、全てのモルトをフロアモルティングで生産しているのはスプリングバンクだけです。
スプリングバンクも1960年に一度はフロアモルティングを止めましたが、1992年に再開した経緯があります。
二つ目は、一貫生産。大麦の栽培からボトリングまでの全ての工程を自社で行います。
原料となるモルト(麦芽)や、ボトリングは専門業者に任せることが多い中で、
最初から最後まで全て自前で行うというのは珍しいです。
三つめは、家族経営で独立して運営してきてきた蒸留所としては最古であること。
設立は1828年で、現在のオーナーは創業者から数えて5代目になります。
このスプリングバンク蒸留所が製造するのは3つのブランドがあります。
まずは、蒸留所の名を冠した、「スプリングバンク」。
2回半蒸留という特色があります。
2回半というのは、最初の蒸留で得られたローワイン(初留液)の半分を再度蒸留させることからこう言われます。
そして、「ロングロウ」
こちらは一般的な2回蒸留ですが、モルトがピート焚きなので、ピートが強いです。
最後に、「ヘーゼルバーン」
アイリッシュ式の3回蒸留。ピートは使いません。因みに、竹鶴正孝が実習したのが、このヘーゼルバーン蒸留所です。
さて、まず試したのは「スプリングバンク12年」。
飲んだ後に気づきましたが、これはカストストレングス。
要は、樽からボトル詰めするときに加水していないということで、アルコール度数が高いです。一般のウイスキーは40度くらいですが、カストストレングスは60度近くになります。
そんなことをお構いなしに飲んでしまったのですが、噂の通りボディ感が独特です。
ジャパニーズ的な芳醇さというようも、オイリーな感じです。
ピートもほのかにありますが、ハイランズ的な塩っ辛さもあります。
なんでもこの地は霧が立ち込めることが多いそうで、海の塩が霧に乗って運ばれてくるのでしょうか。
次に飲んだのが、「ロングロウ10年」
さすがにピート感が結構あります。やはり塩っ辛さもあります。
ただ、アイラモルト的なのとは少し違います。
ピートはその土地固有なものが使われるので、風合いは各地で異なります。
ボディの独特感に比べると、ピート感はアイラのようなクセのある感じはしないです。
そして、最後に「ヘーゼルバーン」をと思ったのですが、見つかりませんでした。
そんな訳で、代わりに「キルケラン」を頼みました。
キルケランもほんのりとピートがしますが、ロングロウほどではない感じ。
モルトは親会社であるスプリングバンクから調達しているということなので、
ボディ感は似ています。ややスプリングバンクをマイルドにした感じがしました。
さて、今回飲んだ感想の総括。やっぱりスプリングバンクの独特なボディ感ですね。
どう表現して良いのか分かりませんが、オイリー感というのでしょうか。
スペイサイドのフルーティな感じでも、ハイランドのシャープな感じでも、またジャパニーズの芳醇的な感じとも違う、独特のボディです。
しかし、理由は簡単。全て一貫した工程で、全部フロアモルティングというオリジナリティに溢れる、しかしそれは単純に伝統をひたすら受け継いでいるという、蒸留所の味。
そして、ジャパニーズ・ウイスキーの発祥の起源ともなったキャンベルタウンの味を堪能できました。