「くればわかる」(新宿ゴールデン街)

「くればわかる」(新宿ゴールデン街)

今回は少し番外的な話になりますが、新宿ゴールデン街と、その中の素敵なお店「くればわかる」さんのことについて感謝の気持ちを込めて!書きたいと思います。 まず、新宿のゴールデン街について最初に説明をさせてください。ご存じの方も多いかと思いますが、新宿ゴールデン街は新宿歌舞伎町の一角にある木造長屋の飲み屋街。2000坪(サッカー場くらい)の大きさの区画に一説には280軒ものお店が密集した、ディープでノスタルジックな空間です。 また、場所柄もあるそうですがここの界隈は文芸・音楽・舞台関係の方が昔から多いそうで、「文壇バー」のようなところもあったりするそうです。サラリーマン生活をしている自分から見ると、普段は接することの無い方も多く、お酒目当てよりも色んな方の「話」を聴くのが楽しみで来ているという感じでしょうか。 新宿ゴールデン街(https://www.tokyo-np.co.jp/article/71810) そんな訳もあって、常に違う店を回り歩くと言うのが自分の信条なのですが、とっても印象に残ったお店もあって、ついつい足が戻ってしまったお店が数件だけあります。「くればわかる」さんもそのうちの一つです。 「くればわかる」なんてチャーミングな名前をどうやって考えられたのかはいつかお伺いしたいところですが、奄美ご出身の親子(母娘)さんが経営されています。同じ建屋の1階と2階にお店があり、現在は2階だけで営業をされています。お店は奄美のお酒や九州の焼酎、ウイスキーもスコッチがいくつか置いてあり良心的な価格設定です。 ゴールデン街のお店はどこも個性的なお店が多いです。それはお店の中に置いてあるお酒や料理であることももちろんありますが、特に自分が惹きつけられるのがお店の方とお客さんが作り出すその時々の雰囲気です。カウンターに立たれている方も日替わりだったりするお店も多く、お客さんも何店舗が界隈で梯子をされる方も多いので、お店の中の様子も凄くめまぐるしく変わります。ある時は結構盛り上がったりしたかと思えば、次にはガラッとゆったりした時間が流れたり、お客さんも(時には店の方も)入れ替わりがあるので見てるだけでも楽しいです。 また、基本は独りで来られる方が割合に多いので、見ず知らずの人同士の会話を楽しめるというのも自分は好きです。誰の紹介でもなく初対面の人と気軽に話をする機会というのがあまり無いので、一人でも気軽に呑めるという意味でもこの街が面白いなと思います。その上で、やはりお店の方の切り盛りというか采配というか、これは重要な要素だと思います。これも各店舗さんで様々で、どういったスタイルが一番良いと思うかは人それぞれだと思いますが、自分は「くればわかる」さんに一番「温もり」を感じました。また、こちらの母娘さんがとても素敵な方でで、掛け合いが見てていつも楽しいです。(あまりにもの居心地の良さに前回訪問時は完全に酔っぱらってしまいました。その節は大変に失礼をいたしました!) こういう表現が適切か分かりませんが、何となく小学校のときの「放課後の教室」的な空気感とでも言いましょうか。。 現在は時節柄、大変な時期ではあります。でも、こうした大変な時期だからこそ、お店とお客さん(特に常連さん)の関係、つまりお客さんに愉しんでもらいたいというお店側の気持ちと、また頑張っているお店を応援したいという常連の方の気持ち、この両者の「支え合い」の中で経済を回している。また、新米の客にも店側と常連さんの両方が迎えいれてくれるような独特の雰囲気。こうした空間は独りフラフラするのが好きな自分のような人間には最高の「癒し」の場でしかありません。 恐らくこの界隈を歩けば、確実にどこか、自分の居場所みたいなものを見つけることができると思います。それくらいに色んなスタイルと言うかバリエーションがあります。一時期は外国からの観光客が大挙して押し寄せたこともありましたが、今はやはり静か、逆に言えば落ち着いています。また、昔は不夜城のような場所で、早い時間に開けている店も少なかったですが、今はランチ営業などもされている店もあるようです。そういった意味で、この界隈での楽しみ方も多様化しているのかとも思います。今の状況が改善して新宿に立ち寄る機会があれば、ぜひゴールデン街に、そして「くればわかる」さんに、足を運んでみて欲しいと思います。必ず、くればわかります! 奄美の黒糖焼酎(https://shochuishinkan.jp/collections/kokutou) ところで、奄美の黒糖焼酎について少しだけ最後に。(そもそも奄美ってどこ?って言う方は先にgoogle map で検索ください。簡単にいうと、九州と沖縄の間です。)奄美諸島というのは古くから「さとうきび」が名産らしく、糖分あるところにアルコールあり、と言うわけで黒糖と米麴を原料にしてできたのが黒糖焼酎、分類としては「本格焼酎」になりますが、あまり全国的な地名度は高くないような気がします。「泡盛」や「ラム酒」などとも比較されることがありますが、とにかく黒砂糖をそのまま使っているところが大きな違いかと思います。(ラム酒は廃蜜という「搾りかす」を使います)くればさんで取り扱っているのはその中でも奄美大島の町田酒造さんというところが作っている「里の曙」(通称:さとあけ)。黄色いボトルが特徴的です。1階のお店は今は残念ながら営業されていないのですが、棚が黄色いボトルで一杯だそうです。まさに「奄美愛」。ですが、味わいはというと、奄美と言うよりキリっと引き締まった感じです。この他にも、同酒造のラインアップにはウイスキーのようにオーク樽で熟成させたボトルもあるそうで、アメリカのスピリッツコンテストで賞を取るなど海外でも注目されているようです。最近は焼酎も色々な銘柄が出て来て楽しいですが、「黒糖焼酎」はなかなかお目にかかることが無いと思うので、何を飲もうか迷ったらまずは「さとあけ!」と頼んでみましょう!

【島根】Kagoya Bar(松江)

㊗47都道府県制覇記念 47都道府県巡り?というのをやっていたのかどうかは定かではなが、今回の島根県訪問でついに制覇。その記念にと訪れたのがこちらのバー。全都道府県制覇、というのが頭にチラついて来たのは、ラスト3つくらいかな、ということに気づいたころからだった。45番目は沖縄、46番目は熊本であった。自分はあまり暑い場所には興味が無くて、どちらかというと雪深くて寒い地方への憧れが子供の頃からずっとあった。そのために北海道や東北、甲信北陸などといった地方はかなり早い時期に制覇した気がする。昔は結構「乗り鉄」で青春切符を駆使して色々と当てもなく、ただ電車に「乗る」ために周遊を繰り返した。今となっては、JRも新幹線の延伸が進み、並走する在来線が第三セクターなどに移管されて鉄道網が細切れとなってしまったため、青春切符での周遊はめっきりご無沙汰になってしまった。昔と違って、「鉄道」というもの利便性が、特に日本では「通勤」と「通学」というものに集約されて来たような気がするが、とてもなんだか寂しさを感じている。「鉄道」というものは、そもそもは陸の王者であり、産業や国土開発、更には重要な平坦線として非常に重要な役割を果たしていた。海外では未だに、そのような目的で活躍しているところもあるが、今の日本は道路網の整備やもびもは陸の王者であり、産業や国土開発、更には重要な兵站線として非常に重要な役割を果たしていた。海外では未だに、そのような目的で活躍しているところもあるが、島国の日本では道路網の整備やモータリゼーションで鉄道の役割は都市を除いて衰退した気がする。話が脱線したが、実は最後の島根訪問ということでこの話はしておきたかった。というのは、結局のところ島根が「最後に」残ってしまった理由というのは、やはり交通の便というものが大きく関与しているからだ。当たり前の話ではあるが、交通の便が不便というのは理由がある。便の良いところには人が集まるし、不便であれば人は離れていく。人が集まれば、さらに利便性は良くなるし、離れればさらに交通網の維持をする必要が難しくなる。そういった意味では、島根県はまさに「不便な場所」である。新幹線も通ってないし、高速道路も細切れの状態。そしていわゆる東海道山陽地区とは中国山脈で隔たれている。まさに「陸の孤島」と化していると言えるかもしれない。ところが、である。 上の図は江戸時代中期から明治時代くらい、すなわち鉄道網が全国に発達するまでの間(恐らく200年くらい)、交易の「幹線網」として活躍した北前船の航路と寄港地を示したものである。鉄道や車が出来る前というのは物資の輸送において大量の物が一度に運べる「海運」の役割はとても重要で、現代なら空路、鉄道、道路、などいくらでも便利な代替手段はあるだろうが、当時は「船」が王者だったのだ。寄港地の場所から明らかなように、今でこそ日本海側というのは不便なイメージがあるが、江戸~明治期は海運の幹線に沿って荷下ろしや風待ちに使われる寄港地は「繁栄」していた。島根県は江戸時代の国の名前いうと、東部が出雲、西部が石見になるが、「美保関」や「鷺浦」には往時を偲ぶ街並みが今でもそのままに残っている。建物や店の名前などにもその名残があって、例えば鷺浦にあるカフェ「しわく屋」さんは、四国丸亀の塩飽諸島出身の船乗りの定宿だったそうだ。 美保関の石畳 鷺浦の街並み(sukima.com) つまり、島根県と言う場所は、今でこそ時代の流れによって現代の交通の幹線網から離れた「奥地」となってしまったが、昔は交通幹線の中にあって繁栄をしていた時代もあったこと。これをまずは頭に入れた上で、この島根県の県都である「松江」の話をしたい。 「水都」、松江の図。 松江とは何か?この答は「水都」ということに尽きると思う。実際にこの地を訪れるまで、自分はこのことについて全く意識が回らなかった。恐らく日本地図で見る中国山脈の「山」のイメージがありすぎたのかもしれない。しかし、これだけはハッキリと言いたい。「松江」に山は無い。あるのは「水」である。すなわち、「宍道湖(しんじこ)」と「大橋川」がそれである。今回訪問したBar Kagoyaさんも大橋川の川沿いに位置。松江は城下町で、繁華街はお城寄り(要は昔の遊郭)の「東本町」と、駅寄りの「伊勢宮町」の二つがメイン。簡単に言うと、「東本町」が格式高めで、「伊勢宮町」はワイワイ・タイプということだそうだ。 Kagoyaさんは東本町の中心通りから少し離れた路地裏という隠れ家的な場所で、夜も更けた時間帯は静かな水辺のひっそりとした佇まいという感じであった。 目の前には大橋川が流れる お店は入ってすぐのカウンター席と、窓辺のテーブル席があり、一人でもカップルやグループでも入りやすい感じのカジュアルバー。店内は落ち着いたシックな雰囲気で、棚に並んだウイスキーの他、各種カクテルやフードメニューなどもあった。オーナーさんはとても物腰の柔らかい方でフレンドリー。松江のご出身ということで、他県で修行された後に故郷に戻ってきたとのこと。店舗は元々は雑貨屋さんだったようで、店内もいわゆるウイスキーバー的な長細い空間にカウンターという感じではなく、席も広く取られているので比較的広々としたスペースで十分なゆとりを感じた。スコッチウイスキーの品揃えということでは、ベーシックなオフィシャルが中心。さすがにマニアックなものはニーズがそれほどないらしく、これは致し方ないところ。それでもこうした静かな路地裏の落ち着いた空間で楽しむウイスキーというのは同じものでも、せせこましい都会の喧騒なバーで飲むのとは違う格別な味わいになるというもの。良いお酒はあくまで「五感で楽しむ」ものなので、その場の雰囲気でも味わいの印象は全く異なってくる。素敵な空間を提供してくれるバーというのは、大変に貴重だと思う。今回頂いた銘柄は二つ。一つ目は、スコッチブレンドの「ベル」。この「ベル」(BELL)という名前に肖って、向こうでは結婚祝いにも贈られたりするそうだ。(少し前まではイギリスで最も人気なブレンドウイスキーであったが、今はその座を「フェイマス・グラウス」に譲っているそうだが、、)何となくフルーティで軽い味わいがするものだというイメージがあったが、今回初めて飲んで思ったのはかなりスモーキーでハード、意外にもどっしりした重量感のある味わいにびっくり。キーモルトはハイランドのブレアソール蒸留所ということであるが、シングルモルトとしての流通量が少なく正直ほとんどイメージがない。いずれにせよ、スペイサイド的なフルーティ感とは違った、男っぽい味わいといったところか。 二つ目はアードナムルッカン。これは、プレミアムなシングルカスクウイスキーを出すことで有名なボトラーズのアデルフィ社が新たに建造したアードナムルッカン蒸留所のシングルモルト。ただし、まだ3年の熟成を経ていない時期のもので、正確にはまだスコッチウイスキーと呼べない。ただし、このアデルフィ社は上質な樽熟成が特徴で、3年の熟成を経ていないにも関わらず樽の質感を十分に感じる。アードナムルッカンは2019年よりシングルモルトをリリースしており大変に興味はあるのだが、残念ながら未だにその幸運には出会えていない。 Ardnamurchan 2017 AD 47都道府県制覇の記念ということで訪問した今回のバーは、「リバーサイド」にある素敵な場所だった。次回来るときはもう少し明るい時間帯にお店のテラス席に座って、ゆっくりとした大橋川の流れを見ながらスコッチを一杯してみたい。滞在中は雨が降ったりやんだりのどんよりした天気ではあったが、それ故に立ち込める山の雲と宍道湖の水辺がとても幻想的な雰囲気を醸し出していた。 昼間に立ち寄った宍道湖畔のカフェ 宍道湖と船と雲 川を望む絶景のテラス席 バーカウンターと店内の様子