Month: March 2023

池尻のタコスショップ2号店でメスカルを楽しむ。

池尻大橋から玉川通り沿いに歩いていると、面白そうなバーが結構並んでいることに気づきます。上は首都高が、下は東急田園都市線が走っていて、交通量も多いので、あまり歩くのに快適というワケではなく殺風景な気もするのですが、発見の多い場所です。玉川通は渋谷から二子玉川までの区間のことを指しますが、通りに沿って池尻大橋や三宿、三軒茶屋、駒川大学、更に二子玉川と世田谷区の東部を突き抜けて多摩川に出る感じです。渋谷へのアクセスも良いので、夜の〆とかに近隣にお住いの方らが立ち寄っていくスタイルなのでしょうか。華やかな渋谷とか二子玉の感じとは違って、高速道路の高架下のどんよりした雰囲気であるんですが、さすがにそこは垢抜けた世田谷の感じがあります。今回立ち寄ったのは、その中のオシャレな1軒、「TACOS SHOP」池尻大橋店です。店内はカウンターとこじんまりとした空間、スタンドバーちっくで若者向きかなという感じ。ミニマリスティックな店内ですが、フードは本格的なモノが提供されていました。ちょっと立ち寄って軽く飲んでいくサッパリとした感じ。渋谷とか目黒とかに比べて、客層も若い印象です。 タコスやトルティーヤなどのフードが本格派であったことや、お店の名前がタコスショップであることは後で知りました。スタンドバーかなあ、と思ったのですがその根拠がこちらに並んでいたボトル。ウイスキーとかワインではないことはパッと見て分かったのですが、銘柄がよく見えなかったので凸撃入店した次第です。中に入って商品のラベルをもう一度よく観察したのですが、聞いたことない名前ばかりで良く分かりませんでした。ただ、どうもテキーラらしいのかなあと思ってメニューを見たら「メスカル」の文字が。なるほどです、メスカルはほとんど分かりません。昔、蒲田の若林さんというところでちょっと嗜んだことありましたが、その時以来の挑戦になります。テキーラ、ジン、ラム、こういうのは最近になってようやく理解してきましたけど、それまでは全くといってよいほど知識がありませんでした。メスカルは簡単にいうとテキーラの仲間のようなものです、同じ原料(アガヴェ)を使っていますが、産地によって名称が異なり、テキーラとメスカルは産地の違いと考えれば良いかと思います。ここからはほとんど後付けの知識ですが、写真の左端にあるカラフルなボトルは「コスナル」というクラフトメスカルのようです。伝統的な製法と素焼き粘土器などを使って手作りに近い手法で作られているようで、国内流通のボトル価格も調べたところでは2万円くらいするようです。メスカルというとちょっとテキーラに比べて何となくですが大衆酒のイメージがありましたが、他のお酒もそうですがクラフトスピリッツのごとく高価なブランド価値をもつ銘柄も出てきているようです。右隣りのグルグルしたラベルですが、こちらも貴重なボトルなようで、ライシージャというテキーラやメスカルとは少し違うタイプの原料を使っているお酒のようです。野生のアガベを使うことが特徴らしく、生産量も限られていることからかなり希少でもるとのこと。こんなわけで、実はすごいボトルが並んでいたのですが、訪問した時にはそういう知識が全くなく、とりあえず一般的なモノをお願いします、ということで頂いたのがこちらです! 「アビタンテ」というメスカル。家族経営の老舗ブランドのようです。ストレートにチェイサーを頼んでいただきました。無色透明ですが、しっかりとした味わいで、率直にはボタニカルな印象でした。これも帰ってから後で説明書きをみたら「甘い香りとスモーキーさのバランスが良く余韻が心地よく続きます」ということで書いてあったんですが、まあ感じ方は人それぞれということでm(__)m。いずれにせよ、割って飲むにはもったいない質感がありました、ロックかストレートがおススメかと思います。隣では若いカップルがタコスにトッピングを色々のせながら楽しんでいましたが、まさにこれが醍醐味なんでしょう。ちょうど軽く食事をしたばかりであまりお腹が空いていなかったのと、外にはすでに列を為して待っていらっしゃるお客さんもチラッと見えたので、この一杯でサッと飲んで帰りました。また機会を設けて来たいと思いました。今度はタコスと一緒に楽しみたいですね。〆の一軒としてこんな素敵なお店があると最高でしょうね、さすがにここから帰宅するとなるとかなり大変なので、ちょっとご縁は無さそうですけど、近くに住んでる方はうらやましいです。まだ開店はしていませんでしたが、他にも面白そうな雰囲気のバーがいくつかあって、池尻エリアは大人の印象があったのですが意外に若さのあるところだなあと感じた次第。こういうところを歩いていると、高齢化とかそういう話がまったく別世界のように聞こえてしまいます。外国人観光客とかにはまだまだノーマークの穴場的なエリアかと思うので、そういう意味でもゆっくりと落ち着いた雰囲気で楽しむことができそうです。

カナディアンウイスキーの彗星、サンズ・オブ・バンクーバー

今回はカナディアンウイスキーの話題をお伝えします。Whisky Cast(Episode988号)を聴いていたら、毎年1月にカナダの西海岸、ビクトリアで開催されているウイスキーフェスティバルの模様が紹介されていました(ビクトリアの位置は以下の地図を参考ください)。その目玉は最優秀賞であるウイスキー・オブ・ザ・イヤーに「サンズ・オブ・バンクーバー」というまったく無名の蒸留所が選ばれたことにあります。今回はその話題について紹介していこうかと思いますが、とりあえずその前にサラリとカナディアンウイスキーについて復習をしておこうかと思います。カナディアンウイスキーとは何か?という問いなんですが、「カナダで作られたウイスキー?」。まあ、たぶん正解には違いないのですが、もう少しだけ教科書的な定義の確認をしておきたいと思います。 https://www.travel-zentech.jp/world/map/Canada/Victoria.htmlより 「カナディアン・ウィスキーは、カナダの法律によって縛りがかけられている。それによれば、カナディアン・ウィスキーは、穀類のみを原料とし、これを麦芽の持つデンプン分解酵素によって糖化し、酵母によって醗酵させ、カナダ国内で蒸留し、容量700リットル以下の樽を用いて熟成を行い、最低でも3年以上の熟成期間を経たものである。」 wikipedia 簡単に特徴を要約すると、スコッチと違い原料はモルトというよりライ麦とかコーンが使われます。Barrel365さんのページからの引用ですが、「ライ麦主体のフレーバリングウイスキーと、トウモロコシ主体のベースウイスキーの2つをブレンドするという、一般的なカナディアンウイスキーの製法でつくられています。」とのことです。バーボンはメインがコーンなので、バーボンともちょっと違う感じで、ドライでさっぱりした感じが特徴なのかと思います。有名ブランドとして、カナディアンクラブとクラウンローヤルの2強でしょう。どちらも発祥は東部オンタリオ州で、五大湖の対岸のあたりになります。カナディアンウイスキーはもともとは米東部の影響を受けて誕生し、アメリカの禁酒法(1920~33年)の時代に、その代替需要として発展したというのがざっくりとした経緯になります。 主に東部で発展してきたカナディアンウイスキーの歴史から見て、西海岸のバンクーバーにある新しいクラフト蒸留所が、カナディアンウイスキーの最優秀賞を獲得したというのは、地理的なことを考えると非常に面白いのでないかと思います。カナディアンクラブやクラウンローヤルに期待するような、ライ麦をベースとしたスパイシーさのあるオーソドックスなウイスキーが定番のイメージですが、西海岸の遊び心にあふれるクラフトウイスキーによって多面的な、新しい展開を迎えようとしているのでないかということです。アメリカの西海岸にはすでにいくつかのチャレンジ精神に溢れるクラフト蒸留所が誕生し、成功を収めています。ウエストランド蒸留所やウエストワード蒸留所(→リカマンさんの紹介記事)などです。特に興味深い流れとして、「アメリカン・シングルモルト」という独自のブランドを確立しようとしている動きは特筆に値します。(→詳しくはこちらの記事など参照)今回、最優秀賞を受賞した「パームツリー&トロピカルブリーズ」はその名前から想像できるようにラムカスクのウッドフィニッシュで味わいの深いカスクストレングスの仕上がりになっているとのことです。1樽分のみの販売のため、受賞時にはすでに完売していたということです。これ以前に商品化されたボトルもピートウイスキー樽や自社で製造しているアマレット樽などを使用し独自のフレーバーを追求している、職人(アルチザン)気質が特徴。ジェンナ・デュバルド(Jenna Diubaldo)さんという女性の方がいわゆるマスターディスティラーのようです。他にジェームズ・ラスター氏(James Lester)と、マックス・スミス氏(Max Smith)を含めた若い3名が経営陣として運営をしているようです。ホームページを確認すると以下の写真があったので、おそらくその3名かと思います。ウイスキー造りのほかに、アマレットやウォッカ、ジンなども製造をしているようです。 https://sonsofvancouver.ca/aboutより 同社ホームページの商品販売のページを確認してみましたが、半分くらいはすでに売り切れとなっていました。クラフト蒸留所なので、生産量が多くない事情もあるとは思いますが、注目を受けて受注が殺到しているものと思われます。ウイスキーもすべて売り切れ。すでに新しいバッヂ「SUMMER ROAD TRIP ACROSS THE MIDWEST」のボトルが紹介されていましたが、今月(2023年3月)発売予定となりながら、すでに「SOLD OUT」の文字が。187本の限定販売なので、これもシングルカスク品でしょうか。もはや、プレミアムウイスキーのような感じですね。レシピを見ると基本はブレンドで、熟成も3~5年くらいとのことなので、まだまだ若いウイスキーなのかとは思います。蓋を開けてみないと分からない段階にもかかわらず、これだけの注目を受けるというのは、期待値の高さを証明しています。カナディアンウイスキーは他にも注目を受けているクラフト蒸留所が出来てきていますので、今後も話題が出てきたら着目をしていきたいと思います。今までの定番品と違うという意味では老舗ブランドではありますがサントリーさんが扱っている「アルバータライ」とか(→サントリーさん紹介記事)が手ごろな価格でかつ面白いのかなと思います。「スムースで軽快な飲み口に、リッチで複雑な味わいとバニラのような甘みの中にほのかなスパイシーさを感じられ」るとのことです。作り手がどのような経緯で酒造りを学び、どのようなウイスキーを目指して行くのかというのも非常に面白いかなと思っています。ウイスキー造りの中心では無いけれど、辺境でもない、ある意味適度な距離感にあることでユニークな発想が今後も出てくることに引き続き期待していきたいと思います。! もうちょっと他の記事も読んでみたい方へ、 >>クリックでウエストランド蒸留所の記事へ

モルトウイスキーイヤーブック2023年版をしっかり読んでみる(1)

モルトウイスキーのイヤーブック、その名も「Whisky Yearbook」。毎年、スコッチウイスキーに関する新たな情報がまとめてアップデートされており、最近の動向や注目の人、最新ニュースや背後のストーリーなどが細かく紹介されています。スコッチウイスキーの蒸留所はほぼ網羅して紹介されていて、スコットランドの主要な蒸留所は1ページを使って丁寧にその特徴や歴史、ブランドが写真付きで紹介されています。またその他の蒸留所についても新興蒸留所から世界各国のモルトウイスキーの蒸留所について幅広く紹介されています。そのほか、スコッチウイスキー業界の動向であったり、作り手の話であったりマーケットの情報などが簡潔にまとめてられていて、今年の趨勢を見極めるには最高の本だといえます。このスコッチウイスキーの楽しみ方ブログでは、昨年に初めてこの本をアマゾンで購入して記事を書いたのですが、1回限りの紹介で終わってしまいました。今年はもう少し掘り下げていきたいと思いますので、よろしくお願いします。(因みにページヒット数が最高記録をしたことでもうれしい記憶となっています。ありがとうございます。)このホームページで扱っている蒸留所の紹介記事についてはこちらのアップデート情報をもとにグーグルで検索をして調べています。このイヤーブックから受けている影響はかなり大きいです、感謝しかありません。日本語版とかもでれば良いと思うのですが、いまのところ自分が知る限りはこの英語版のみです。アマゾンでも頼めば普通に購入できるので、興味があれば一度手に取ってみてほしいです。値段も3,000円くらいなので、内容を考慮するならかなりお買い得かと思います。とにかく情報量が半端無いです。 まずウイスキー業界の英仏二強を紹介します。あまり表立ってこれらの会社の名前が出てくることはないですが、イギリスの「ディアジオ(DIAGEO)」社とフランスの「ペルノリカール(PERNOD RICARD」社です。どちらもウイスキー以外に様々なアルコールブランドをグローバルに展開しており、ディアジオ社傘下のブランドとしてはスコッチならジョニーウォーカー、バーボンのハーパー、他にビールのギネス、ウォッカのスミノフ、ジンのタンカレーなどを保有しています。ペルノリカー社はフランスの老舗スピリッツメーカ2社が合併して誕生したのですが、それ以後各地のブランドを取り入れて成長してきました。アイリッシュのジェムソン、ラムのハバナクラブ、スコッチではシーバスブラザーズ社を傘下にして多数のブランドを保有しています。この2社が保有する銘柄をまずは以下に列挙していきます。(個人的な主観で、スーパーのリカーコーナーでも比較的良く見かけるかなというブランドは特に太文字にしています。特に理由も根拠もありませんm(__)m) DAIGEO- オフロイスク ベンリネス ブレアアソール ブローラ カリラ カーデュー クライヌリシュ クラガンモア ダルユーイン ダルウィニー ダフタウン グレンデュラン グレンエルギン グレンキンチー グレンロッシー グレンオルド グレンスペイ インチガワー ノッカンドゥー ラガブーリン リンクウッド マノックモア モートラック オーバン ローズアイル ロイヤルロッホナガー ストラスミル タリスカー ティーニニック PERNOD RICARD- アベラワー アルタベーン ブレイヴァル ダルムナック グレンバーギー グレンキース グレンリベット グレントファース ロングモーン ミルトンダフ スキャパ ストラスアイラ これだけのブランドを保有していることの特徴として、一つ挙げるとするならより良いスコッチを作るための戦略といえるかもしれません。シングルモルトに特化するだけであれば、これだけのブランドを傘下に持つ必要もありませんが、安定した品質のブレンドスコッチを世界規模のマーケットに大量に作ることを考えるなら、そのレシピの元となるブランドと供給キャパを確保することは至上命題になることは容易に想像がつきます。下の写真はとあるスーパーのリカーコーナーですが、下段にスコッチブレンドが並んでいます。ブレンドの方が、モルトよりもお手頃な価格で購入できるので、数量的には圧倒的にブレンドウイスキーを身近に見かけることが多いかと思うのですが、高級スーパー、酒屋さん、スピリッツなどの専門店とグレードが上がっていくにつれてその重心は大衆向けブレンドから、シングルモルト、更にはボトラーズなど高価なものになっていくイメージです。さて、その中でブレンドスコッチの有名銘柄として「ジョニーウォーカー」や「ホワイトホース」はディアジオ社、「シーバスリーガル」はペルノリカール社のブランドです。他にも、「ティーチャーズ」はビーム・サントリー社、「デュワーズ」はジョン・デュワー&サンズ社のブレンドウイスキーになります。 スーパープレッセのリカーコーナーに並ぶスコッチウイスキー さて、ここからは先に紹介した二大巨頭ほどのブランドを保有していないもの、複数のブランドを傘下に収めている企業となります。まずはブレンドウイスキーで名前の挙がった、ビーム・サントリー社と、ジョン・デュワー&サンズ社を手掛かりに紹介していきたいと思います。 まずはビーム・サントリー社です。ビームはジムビームで知られるアメリカのバーボンメーカですが、サントリーが2014年にこれを買収したことでサントリーの子会社となりました。この傘下のブランドでもっとも有名なのはなんといってもアイラモルトのラフロイグでしょう。もとを遡ればラフロイグが今は亡きアライドドメク社(英)がフランスのペルノリカール社に買収され(2005年)、その結果傘下にあったブランドがアメリカのフォーチュンブランドや、先のディアジオ社などに分散してしまったことに端を発します。ララフロイグはジムビームなどを擁する米フォーチュンブランドの傘下になったのですが、それがサントリー社に買収されたことで、現在に至ります。他にもアードモア、ローランドのオーヘントシャン、ボウモア、グレンギリーがあります。 次にジョン・デュワー&サンズ社です。調べてみたのですが、実はラムなどで知られるバカルディ社の傘下のようです。バカルディは他にもスコッチブレンドのデュワーズや日本ではほとんど出回っていないですが同じくブレンドのウィリアム・ローソンや、アイリッシュのティーリング、イタリアのスパークリングワイン、マティーニなどのブランドを有しています。スコッチの蒸留所としては、アバフェルディ、アルトモア、クレイゲラヒ、グレンデベロン(マクダフ)、ロイヤルブラックラが傘下にあります。 さて、先のペルノリカール社や、ビームサントリー社、バカルディ社のように本場スコットランドではない資本が実はたくさんあるスコッチ業界。ディアジオも元はグランドメトロポリタンとギネスが合併したもので、スコットランドというようりはイングランドとアイルランドの連合のようなもの。こうして考えると酒造りとしてのスコッチはスコットランドの領土内で今も盛んにおこなわれているものの、その運営資本は外部から集めているという構造です。ある意味、伝統的な産業でありながらすごく国際化が進んでいるというか、日本の日本酒とかとは表向き似たような様相であっても実はすごくグローバルな国際的商品としての顔をもっているとも言えそうです。外資系企業の傘下になったブランドを挙げていきましょう。まずはタイビバレッジ傘下になったインバーハウス社のブランド群です。ハイランドのプルトニーを筆頭に、バルブレア、バルメナック、ノックドゥー、スぺイバーンがあります。ダルモアなどで知られるホワイト・マッカイはフィリピンのエンペラドール社の傘下になっています。ダルモアの他に、フェッターケイン、ジュラ、タムナブーリンがあります。南アフリカの飲料大手ディスティル社は、ブナハーブン、ディーンストン、トバモリーを保有。バーボンの国アメリカでオールドフォレスターやジャックダニエル、ウッドフォードリザーブなどで知られる巨大資本ブラウンフォーマン社の傘下にあるスコッチとして、ベンリアック社の傘下にあるベンリアック、グレンドロナック、グレングラッソーがあります。更にはロッホローモンドやグレンスコシアを有するロッホローモンドグループは中華系の投資会社ヒルハウス・キャピタル・マネジメント社によって2019年に買収され、その傘下にあります。他にもルイヴィトンで知られる世界的コングロマリットであるLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)社は傘下に多数のアルコールブランドを抱えており、その中にグレンモーレンジ社のスコッチブランド、グレンモーレンジとアードベッグがあります。 さて外資の傘下にあるスコッチモルトウイスキーのブランド名を続々と書き連ねてきましたが、ここからはようやくスコッチ資本によるスコッチウイスキーになります。まずはエドリントングループ。スコッチのロールスロイスとも呼ばれるマッカランを擁します。他に、グレンロセスやハイランドパーク、ブレンドのフェイマスグラウスなどがあります。家族経営の伝統を有する蒸留所は非常に少なくなりましたが、今でも生き残っているところがあります。もっとも有名なものとしてはウィリアムグラント&サンズでしょう。スコッチのシングルモルトで販売量のトップをグレンリベットと争うグレンフィディクが有名です。他に、アイルサベイ、バルベニー、キニンヴィーを有します。今では昔の勢いを失いましたが、キャンベルタウンのJ&Aミッチェルとスプリングバンクもあまりにも有名です。スプリングバンクの他に、キルケランのブランドで知られるグレンガイル蒸留所があります。家族経営で言えば、グラント家のグレンファークラスも有名です。 […]

川越発のクラフトジンを目指して、中福本店の「棘玉(とげだま)」。

埼玉県で蒸留所といえば、もちろん、イチローズモルトの秩父蒸留所が真っ先に想像できるのですが、埼玉の小江戸として有名な川越近郊にクラフトジンを作る蒸留所があると聞いて立ち寄ってみました。どうしてこの蒸留所を知ったかというと、埼玉アリーナで開催された物産イベントでこちらの会社さん(㈱マツザキ)が出店をしていたからです。直接お仕事の上では関係が無いのですが(m(__)m)、興味本位でブースに立ち寄り、その場に居た方と話をしてみた次第。そしたら、なんと川越でクラフトジンを作られているということを(おそらく社長さんから)紹介されまして、初めて「棘玉」というクラフトジンのことを知ったという経緯です。すでにIWSCなどの国際コンペでも賞を獲得すrほどの評価があるのですが、クラフトジンを作り始めたのは最近のようです。本業は酒屋さんで1887年(明治20年)創業の老舗。クラフトジンを作る蒸留所があるのはその酒屋の敷地の中にあります。「武蔵野蒸留所」と呼びます。地域環境保全の観点から武蔵野の森を守る活動もされているということ。クラフトジンの原料となるジュニパーベリーの植林にも挑戦されているという話もお伺いしました。 中福本店と棘玉の看板 そんな話を展示会のブースでお聞きした後です。川越に用事があって出かけた際、足を延ばして蒸留所のある場所に立ち寄ってみました。「中福本店」という酒屋さんがあり、その裏手が林になっていて、その中に小さな蒸留所を見つけました。一般向け非公開ということで、中の様子を見ることはできなかったのですが、いかにもクラフトな感じの趣がありました。社長さんが直接酒造りをしているのかと思いきや、キーマンはこちらの記事を見て知ったのですが、社長の息子さんのようです。特徴としては、地元産のボタニカルを活用した川越産のジン造りを目指しているとのことです。ご存じの方もおられるかと思いますが、川越近郊といえば「狭山茶」(実は狭山茶とうのは川越茶から派生したものだそうですが)。他にも、山椒(さんしょう)だとか、越生(おごせ)のゆずだとか、近隣のボタニカルを使って独自のテロワールを表現しようとしているようです。そして、その目玉となるのが、敷地内に植えられたジュニパーベリーの木。日本でジュニパーベリーが育つなんて知りませんでしたが敷地裏の林に生育している若木を見つけました。もしかしたら何年か後に川越産のジュニパーベリーで造られた、川越オリジナルのクラフトジンができる日が来るのかもしません。 中福本店裏の敷地にある武蔵の蒸留所 裏手の林は散策道にもなっていていました。休憩ができるベンチも用意されていて地元の方々にも開放されているようです。こちらの酒屋さんは昔からこうした環境保全活動をされているようです。日本ではまだまだ「環境」をテーマとした酒造りは目立った動きにはなっていないような気もするので貴重な取り組みだと思いました。同時に、こうした動きがさらに広がっていってほしいなとも思います。お酒とはいっても穀物などの食物がベースになっているわけで、自然のオーガニックが母体。野菜や果物は有機栽培などがとてももてはやされますけれども、どうしたわけかお酒はあまりそこのところがクローズアップされず、「フレーバー」のみが注目されてしまっているような気がします。熟成した蒸留酒などはもちろん穀物感というのが埋没してしまうことも多いのですけど、スコッチの本場やアイルランドなどでは(実は原料の大麦を農業大国のフランスから大量に輸入している現状の問題意識もあるのかもしれませんが)テロワールにこだわる動きや地場で育った大麦を使っていることをクローズアップしているケースが最近増えているような印象を受けます。イチローズモルトの秩父蒸留所も地元産の大麦使用に力を入れているようですし、国産オークのミズナラ樽を自社で作るなど、そのフレーバーだけでなく地元のテロワールや環境を意識した酒造りをされていと聞いたことがあります。マツザキさんも同じ県内ということで、イチローズさんとも交流があるとの話。環境に配慮した酒造りが埼玉県から育まれていくというのはとても面白いです。立地的には都内からも非常に近く、西武新宿線の特急であれば1時間程度です。マツザキさんは新宿にも店舗を構えられているので、今後さらに人気が出てくるのではないかと思います。最近は焼酎などでもライチ香りが特徴な「DAIYAME」など国際コンペで受賞して認知度が上がったりと、ウイスキーや日本酒、ワインに限らず、世界的に注目される地元に根差したローカルな醸造所や蒸留所に元気があります。もしかしたらお住いの地域にも人知れずその界隈で注目されているようなところがあるかもしれませんね。 若いジュニパーベリーの木 https://www.1887.co.jp/

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