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【東京】the TRAD(上野)

本日は久々に東京の北の玄関口とも言われる上野に来ました。 ところで、「上野」というのは、皆さんはどういう印象を持たれているでしょうか? 浅草の玄関口であったり、動物園であったり、アメ横であったりと色々な顔のある町かなと思います。自分にとっての上野というのは鉄道(JR)の「ターミナル駅」(終着駅)という印象が未だに強いです。 とは言っても鉄道好きか、ある年齢層より上の方でないと、もうピンと来ないかもしれませんので簡単に説明します。 昔、(こんな表現をすること自体、時の流れを感じてしまいますが)、上野駅というのは東北方面に発着する、恐らくすべての列車の起点(=終点)となる駅でした。 現在はといと、新幹線は東京が始発になり上野は途中駅、在来線も東海道線との直通運転。このため、「上野行き」という列車は非常に稀になりました。 でも一昔前は、東北・上越の新幹線は上野が始発駅でしたし、在来線の普通電車も上野が始発でした。 また、今はもう無くなってしまいしてしまいましたが、昭和の時代は、上野発の夜行寝台列車「ブルートレイン」が全盛期で。夜になると多い時には数分置きに東北方面へ長距離列車が旅立っていきました。 なので、今でいうところの「飛行場」のような感じで、上野駅というのは大きな荷物を抱えた人たちが集まる、旅情感満載の「駅」というイメージが自分の中にはまだあります。 もちろん、今でも時々地下ホームに降り立つと、往時の雰囲気を感じることがありますが、在来線が直通運転になり、ブルートレインも廃止されてからは、「旅情」を感じることは少なくなってしまいました。 でも上野の街から活気が失われた訳ではありません。駅の周辺の名所は、今まで通り活況があります。特に駅の西側にある上野公園は博物館や美術館がたくさんあり、緑も多く、駅前の雑踏から解放されます。 近くを散策してみましたが、古い様式の独特な建物が多いことに改めて気づかされました。さながら、建築博物館のようでもあります。近くには東京学芸大学や、東大もあります。国立の大学は敷地が大きくキャンパスの中を散策するのも楽しいのですが、残念ながら今は「関係者以外入門禁止」の貼り紙が。 さて用事を済ませたところで、帰り際にどうしても一杯飲みたいものがありました。上野・湯島にあるオーセンチック・バーTRADさんのアイリッシュ・コーヒーです。 先日読んだ村上春樹の『もしも僕らのことばがウイスキーで会ったなら』という本。 スコットランド・アイラモルトのことについては前回述べましたが、隣のアイルランドにも訪問されています。アイルランドといえば、アイリッシュ・ウイスキー。 これは世界5大ウイスキーのひとつに数えられるばかりではなく、ウイスキー発祥の地としても知られています。かつては世界最大のウイスキー生産国でもありました。 それではアイリッシュ・ウイスキーとは何か? スコッチと何が違うのか? 原料が大麦であったり、単式蒸留器を使ったりと、基本はスコットランドのシングルモルト・ウイスキーとほぼ同じですが、一部の工程が違います。 簡単に言うと、スコッチは蒸留工程、つまり発酵してできたお酒(醪)を加熱してスピリッツにする作業、が2回ですが、アイリッシュは3回行います。(細かく言うとスコッチでも3回行っているところもあります。) また、通常のモルトウイスキーとは別に、「シングルポットスチル」という未発芽の麦芽を使ったアイルランド独自のウイスキーもあります。 このような違いによって生み出されるウイスキーの特徴は、どんなものか?ということですが、自分は当初は少し飲みにくいウイスキーなのかなという感じがありました。昔からの伝統にこだわる少し古臭いイメージしかなかったのです。 今回こちらのバーでそのアイリッシュ・ウイスキーの銘柄をいくつか飲ませて頂きました。飲んで驚いたことですが、「まろやか」であるということです。正直びっくりしました。 この驚きを例えて言うなら、お昼のランチにお店を探していて、なんとなく外見から頑固おやじが切り盛りをしている定食屋に仕方なく入ってみたら、意外にフレンドリーな対応に好感を持ってしまったときの感じ、とでも申しましょうか。(笑) 隣で同じようにアイリッシュを飲まれていた方がうまいことをおっしゃいました。 「日本酒みたい」。 いや、全くその通りだ!と思いました。これは日本酒です! (でも日本酒は有りません、アイリッシュ・ウイスキーです。度数も40度超えています。) でも日本酒のようなまろやかさが確かにあります。それはあの「獺祭」の様な、透き通る感じではなく、「灘の酒」のような辛口というものでもなく、例えるなら、地方の田舎の町を訪問したときに偶然出会うようなまったりとした「地酒」のような感じです。 香りの芳醇さ、フルーティさでいえば、スコッチのスペイサイド系の感じも確かにあります。 それこそグレンフィディックやマッカランの12年くらいのと似たような感じです。 ただし、スペイサイドはテイストに少しパンチがあり、キリっとした感じが有るのですが、 このアイリッシュはテイストしても、舌にまろやかさを残したまま、スーッと終わります。 これは旨い!ということで、いくつか言われるままに、頼んでしまいました。 どれも味の系統はよく似ています。何かスコッチのシングルモルトのように、あるものは塩辛く、また別のものはピートでというような主張するよう個性がある味というわけでもありません。 角が取れて丸い感じです。(後で知りましたが、基本的にはアイリッシュはピートを使わないようです。このことも、アイリッシュのまろやかさの特徴を裏付けていると思います) 手にしていた村上春樹の本を少しパラパラとめくりながら、アイリッシュの特徴とは何か、を考えていた時に、面白い表現を見つけました。 アイルランドの「風土」ついて書かれた部分ですが、そっくりそのままアイリッシュ・ウイスキーの特徴とも重なると思いました。 アイルランドの美しさが僕らに差し出すのは、感動や感嘆よりは、むしろ癒しとか鎮静に近いものである。口を開くまでに少し時間がかかるけれど、いったん話し出すと、穏やかな口ぶりでとても面白い話をしてくれる人が世間にはいるが、アイルランドはちょっとそれに似ている。(p76) アイリッシュの味というのは、この描写がピッタリと合う気がしました。自らガンガンと個性を主張してくるようなタイプでは無いけれど、ひとたび口に含めば、何かものすごい安心感に包まれるような感じがする。そのようなウイスキーです。 スコッチだと、いつもボトル毎の解説をしていますが、今回は少し悩んで止めました。あまりあれこれ説明するよりも、これはただじっくり飲むに適していると思ったからです。 スコッチは個性豊かな銘柄が群雄割拠しますが、このアイルランドはそういった喧噪から離れて予定調和的に、うまくやっている、そんな感じさえしました。どこか余裕がある。そして、その「余裕」がアイリッシュの魅力なのかもしれません。 そんなことを考えながら、最後に締めのアイリッシュ・コーヒーをオーダーしました。 これはアイリッシュ・ウイスキーをベースにしてホットコーヒーと砂糖、クリームを混ぜ合わせたカクテルです。マスターによると、こちらのベースは北アイルランドの「ブッシュミルズ」を使っているとのことでした。 (因みに、このブッシュミルズ蒸留所と、「ジェイムソン」の銘柄でも知られる南部の「ミドルトン蒸留所の二つがアイルランドの蒸留所の中でも長く安定的に操業を続けている蒸留所になります。) あまりの飲み口の良さについつい杯を重ねて、少しほろ酔い気分になったところで出てきたアイリッシュ・コーヒー。クリーミーな甘さとコーヒーの苦みが絶妙なバランスで、少しウトウトしかけていたところに、ほんわかと目が覚めました。とにかく、アイリッシュは刺激とは無縁で、心地が良いです。 このブログでも、常に何か面白い味わいを求めるために、色々なスコッチを飲んできました、いうなれば「探求心」。ですが、このアイリッシュを飲んで感じたのは「癒し」。冒険につかれた旅人を癒すかのようなアイリッシュの「まろやかさ」に、ホンワカした気持ちになったところで帰路につきました。

村上春樹さんの『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』を読んで、

村上春樹さんの『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』という本があります。『ノルウェイの森』や『海辺のカフカ』など(古くてスミマセン)大作が色々とありますあ、こちらの紀行文はあまり知られていないのかなと思います。平易な言葉の連続で、本当に種も仕掛けも無いのに、読み進めていくうちに完全に虜になっている。不思議な本です。 この小さな旅行記もまさにその氏の魔法的な性質を十分に宿したものだと思いました。答えは本当に単純なのです。氏は冒頭でこう宣言しています。「ささやかな本ではあるけれど、読んだ後で(もし仮にあなたが一滴もアルコールが飲めなかったとしても)、ああ、そうだな、一人でどこか遠くに行って、その土地のおいしいウイスキーを飲んでみたいな、という気持ちになって頂けたとしたら、筆者としてはすごく嬉しい」 はい、当にそういう気持ちになりました。読み終わった後に、居ても立ってもいられないような、すぐにでも飛行機で旅立ちたいような。それぐらいに、自分の心をズバン、ズバン、と打ち抜くものが、この文章には詰まっていました。 この本ではスコットランドとアイルランドが紹介されていますが、こちらのホームページはスコッチウイスキーを一応メインに据えているので、スコットランドの部分だけを切り出して少し紹介できればと思います。 スコットランドの部分に関してですが、内容は全てアイラ島での話です。アイラ島というのは、スコットランドの西側にある島々の中のひとつの島で、ウイスキーの生産地として古くから有名です。 この島のウイスキーはモルトを乾燥するときに使う泥炭(ピート)の香りが特徴的で、スコッチファンの間でも、好みが分かれるところかと思います。個人的にはクセのある味わいというのが好きなのタイプなので、自分は最初から抵抗がありませんでした。むしろ、その特徴に惹かれて好きになったくらいです。 まずは次の箇所。これはアイラ島の最初の紹介の場面です。アイラ島は辺鄙な場所にあり、天候も厳しく、観光名所と呼ばれるものはほとんどない。それにも関わらず、この島を訪れる人がいる、とした上で次のように続けます。 「暖炉によい香りのする泥炭(ピート)をくべ、小さな音でヴィヴァルディのテープをかける。上等なウイスキーとグラスをひとつテーブルの上に載せ、電話の線を抜いてしまう。文字を追うのに疲れると、ときおり本を閉じで膝に置き、顔を上げて、暗い窓の外の、波や雨や風の音に耳を澄ませる。」(pp. 22-23) まさに「英国人的な」余暇の過ごし方なのかと思うとともに、このようにしてウイスキーを楽しむものなのかと強く胸打たれました。 アイラ島のシングルモルトは、それぞれが個性の塊。アイラのシングルモルトといえば、「有難い教祖様のご託宣のようなもの」との表現には、思わず微笑みがこぼれました。もともとはブレンドウイスキーを作るときの隠し味的な要素ととして使われており、原酒そのものを楽しむというのは島の中だけのことであったようです。それが昨今のウイスキーブームなどによりその個性的な味わいが評価され一躍有名に。今では世界中からウイスキーファンが「巡礼」に訪れるようになっています。 小さな島の中で、各蒸留所がそれぞれの個性を維持し続けるとはどういうことなのか?そのことを次のように説明しています。 「それぞれが自分の依って立つべき場所を選びとり、死守している。それぞれの蒸留所には、それぞれのレシピがある。レシピとは要するに生き方である。何を取り、何を捨てるかという価値基準のようなものである。何かを捨てないものには、何も取れない」(pp. 38-39) 後半では、ボウモア蒸留所を訪れた際のことが書かれています。当時の蒸留所のマネージャーであったジム・マッキュアンとの対話が印象的です。ジムは樽職人の仕事から始めたそうですが、樽熟成の様子を次のように語ります。 「アイラでは樽が呼吸をするんだ。倉庫は海辺にあるから、雨期には樽はどんどん潮風を吸い込んでいく。そして乾期(6~8月)になると、今度はウイスキーがそいつを内側からぐいぐいと押し返す。その繰り返しの中で、アイラ独特の自然なアロマが生まれていく。」(p.42) アイラウイスキーの特徴ともいえるのが「磯の香」。 この島は一年を通して風が強いため、島の至る所にその匂いがしみ込んでいるそうです。それを「海藻香」と島の人は呼ぶそうです。泥炭(ピート)も、その土地の特徴によって香りが異なりますが、アイラモルトはこの磯の香りがのったピート感が特徴的(※)。この独特な香りは初めて飲まれる方には、少し驚かれるものかもしれません。 ※厳密にはアイラ島の蒸留所すべてがピートっぽいわけでなく、ピートを焚かない蒸留所もあります。 しかし、あなたがアイラ党(アイラが好きになるか)かどうか、このようにユーモアある表現で説明されています。 「一くち飲んだらあなたは、これはいったいなんだ?、とあるいは驚かれるかもしれない。でも二くち目には、うん、ちょっと変わってるけど、悪くないじゃないかと思われるかもしれない。もしそうだとしたら、あなたは、かなりの確率で断言できることだけれど、三くち目にはきっと、アイラ・シングルモルトのファンになってしまうだろう。僕もまさにそのとおりの手順を踏んだ」(p.46) アイラのウイスキーの特徴は、「土地の香り」を明確に感じることができるシングル・モルトだという点です。具体的にそれは、磯の香をたっぷり含んだ泥炭(ピート)の香りであると、言い換えることもしれません。しかし、アイラの中にある蒸留所は、その同一条件でも、さらにそれぞれに個性があります。それは恐らく各蒸留所の微妙なレシピの違いであり、その伝統を純朴に今に至るまで守ってきた結果であると思います。 アイラウイスキーの特別な味の正体は何なのか?。最後にもう一度ボウモアのジムに問いかけます。ジムはその味を決める上で、島の水やピート、上質な大麦などの要因が間違いなくあるとしたうえで、次のように答えます。 「いちばん大事なのはね、ムラカミさん、いちばん最後にくるのは、人間なんだ。ここに住んで、ここに暮らしている俺たちが、このウイスキーの味を造っているんだよ。(中略)それがいちばん大事なことなんだ。だからどうか、日本に帰ってそう書いてくれ。俺たちはこの小さな島でとてもいいウイスキーを造ってるって」(p.65)

【栃木】BAR×BAR×BAR WATARASE(足利)

今日の訪問先を語るにあたってまずお見せしたいのはコレです。 ものすごく素敵な景色ですよね?! でも北海道とかじゃありません、完全に関東圏内です。場所は栃木県の足利市です。 雑居ビルの5階だったかと思います。店の看板すらありませんでした。オーナーのこだわりのようで、敢えて出してないとのこと。意外性という意味では憎らしいほどの演出です。 ビルを上がるエレベーターも昔の旧式のもので、ゆっくり、ゆっくりと上がっていきます。 因みに上昇中にも外が窓を通して見えるようになってました。恐らくこのビルとエレベーターができた時は、最新式だったのだと思います。 この感じ。もうこのブログをいくつか読んでらっしゃる方にはお分かりかもしれませんが、私の大好きなノスタルジック昭和です。 そもそも、この足利という街自体が少し昭和ノスタルジーの遺跡のような感じです。このバーの開店まで少し時間があったので街中を散策していた時に撮ったのがこちらの写真。 ただの廃虚じゃないかって?いや、私にはこのくらいが丁度良い感じです。笑 廃墟マニアという訳では無いのですが、その毛は多少あるものと自覚はしています。時間の中に溶け込みながら往時を少し偲ばせるような佇まいがとても惹かれます。 なんですかね。ものすごく安心してしまうんです。こうして時の流れるままに身を委ねられる建物が存在する、そのような街はある程度の「器の持ち主」であると思います。 それもそのはず、この足利というのは平安時代から存続したと言われる学府「足利学校」を擁した地。当時は関東の最高学府であったそうです。もちろん江戸とか東京とかのずっと前の話です。 明治以後も一時は栃木県の中で、県都のある宇都宮に次ぐ2番目の人口を誇りましたが、時代の流れとともに周辺地域の開発(郊外型ショッピングモールなど)により繁華街が廃れてしまい、現在は閑散ととした状況。デパートも複数あったようですが、今では見る影も有りません。しかし、街の各所に点在する寺社仏閣の多さは目を見張るものがあり、その価値は全く色褪せていないように感じました。 さて街の観光案内はこれくらいにしておきますそろそろお店の扉を開けましょうか。 因みに玄関にも看板はありませんでした。一瞬本当に営業してないのかと思いましたが、消毒用のスプレーが置いてあり、なんとなくコレは店の方針だろうと解釈してインターホンを鳴らしました。 少し間を置いてから扉が開かれました。店に通されたら第一印象。え、ここは何処?! インテリアが凄すきます。さっきの街の感じと全く噛み合ってません。笑 都心の繁華街にある隠れバーに、どこでもドアで通された感じです。 そう考えて今までのことを逆戻しして、もう一度再生してみました。普通の街、どちかというと寂れた繁華街、そしてたどり着いた雑居ビルの一階、看板もない、とりあえずオンボロにエレベーターで上に、またもや何の挨拶もないただのドア、その横にアルコールひとつが暇そうに置かれている。 全ての期待を裏切り、不安感がクライマックスに到達したところで開けられた魔法の世界。洗練された内装、垢抜けたバーカウンター、綺麗に並べられたボトル、そして窓から見える優雅な景色!渡良瀬川が静かに流れ、視界を遮るものは何もありません。 いやいや、これは反則でしょう!こんなところで!あ、失礼しました。地方都市を、そして足利市を見下している訳では無いのです。お許しください。全く心の準備ができていなかったもので!汗 正直申し上げてこのようなバーに出会えたことは全くの「想定外」であったことは告白します。潔く。 さて、想定外ばかりが続きます。こちらのバーマスターがまさにその張本人です。なんとバーテンダーの大会で優秀な成績を収めただけでなく、コーヒーのバリスタの大会でも好成績を収められたとのこと。 因みにバーテンダーとは、バーでカクテルなどのお酒を作る人のこと。よく金属の水筒のようなものをシェイクして、シャカシャカ音を立てている格好良い感じの人がいますよね。 バリスタとはお酒ではなく、こちらはコーヒーのスペシャリストになります。エスプレッソマシンの使い手のような感じです。 片方だけでも難しいと思うのですが、両方とは凄すぎます。しかも店の内装とかも全て自己流アレンジだとのこと。何でもできるスーパーマン・タイプですね。恐れ入りました! さて、恐れ入ってばかりでも始まらないので、飲み物を頼みます。ここはどうやらジンをベースにしたカクテルが看板商品の様子。 とりあえず一杯目はマスターお任せのカスタムアレンジのカクテルを注文。こちらの味の好みなどを伝えれば、それに合ったカクテルをオリジナルに即興アレンジしてくれると言うもの。 出てきたのは柑橘系のパンチが効いたスッキリした感じ。しかもアイラモルトが好きなことをお伝えしていたのですが、ブルイックラディのほのかなスモーキさとピートが後を追いかけるようにやってきます。 この反則的な上手さ。これでイエロカード2枚目です! ところでジンについて簡単におさらいです。既に知ってるよ!という方は飛ばし目で読んで頂ければと思います。全く知らない方はいないと思いますが、一応簡単に。 ジンはウイスキーと同じ蒸留酒です。原料も色々ですが、基本はボタニカル系です。その中でもジュニパーベリーと呼ばれる針葉樹からとれる実が原料として使われます。ジンという名前も、このジュニパーベリーから来ているそうです。 正直ジンそのものはボタニカルでスパイシー。ベリーとはいえ甘みはほとんどありません。しかし、逆にこれを下地とすることでカクテルには扱いやすく、カクテルベースとしてよく使われます。 また原料の配合に変化をつけることで、様々な味の表現をすることが可能になります。これらはクラフトジンとして昨今人気が出てきています。ウイスキーの新しい蒸溜所でも、3年熟成を待つ間の当座しのぎとしてジンを作ることがあります。以上簡単な説明です。 さて、そのクラフトジンも、いくつか試させてもらいました。一言で言うなら「飲める香水」ですね。ウイスキーと違ってものすごくハッキリとした香りと表現です。 ウイスキーがクレヨンや油絵具で描く絵だとすると、クラフトジンは蛍光色のマーカーで描くカラーポスターのような感じ。微妙なニュアンスというより、結構クリアな味が伝わってきます。また熟成が基本無いので、余韻が下に残るような複雑性はありません。かなりはっきりとした主張です。 さて、ここでついに本日3つ目のイエロカードに「気付きました」。この夜景です。 はい、もう退場ですね!笑 このバーの魅力を色々とお伝えしてきましたが、こちらに関してはご自分の目で見て、肌で感じて、体感していただくことを是非オススメしたいと思います。 なかなか用事があって行く機会というのは少ないかもしれませんが、マスターによると来客の半分以上は地元以外の方だそうです。 でも良く分かります!このバーは、わざわざ来るバーでしょうね。それだけの価値はあるように感じました。店内もゆったりとした空間と落ち着いたインテリアで長居をしても全く疲れません。飛行機のファーストクラスに座っているようです。(因みに私は一度も乗ったことは有りません。でも乗ってる方の姿は何度も見たことがあるもので例えとして理解ください笑) 帰りはマスターがエレベーターホールまで見送っていただきました。そして改めて看板も何も無い雑居ビルの一階に降り立ち、振り返った時、この素敵な演出の全てに笑みがこぼれ落ちました。

BAR GOSSEにてIII

早速ですが、今日は珍しい来客がありました。 基本このブログはバーとウイスキーに焦点を当てることを目的としていますが、 あまりにもの珍事に、今回はゲストにもフォーカスをさせてもらいます。 なんと20代の女性、しかも美人さん。本ブログではこれを「三拍子揃う」といいます。笑 実のところ、こうしたウイスキー・バーに女性が来られること自体は珍しくはありません。 全員が美人じゃない?いえいえ、そういうことではないのです、皆さまお美しいです! 今回珍しいと大騒ぎしたのは、「ウイスキーが好きで、且、知識量も豊富で、しかも実際に行動されている」ところ。 行動している、というのは自分で蒸溜所を訪問したり、酒屋さんに行ったり、バー巡りしたりという意味です。 しかも、フレンドリーに取材許可までいただきました。もう感謝しかありません! お名前は、「さくら」さんということです。さくら様、とお呼びしたいところですが、変なバーと混同するといけないので、とりあえず「さくらさん」で本ブログは通します。 さて、まずは一杯いきましょう。 とりあえず、取材に入る前にコレをハイボールで。そう、ホワイトホースです。キーモルトはラガブーリン。 個人的に好きな銘柄なので、先ずはテンションを上げていきたいところでしたが、いきなりシングルモルトをストレートというのも飛ばし過ぎ。 そういう訳で、まずはやさしめに軽く一杯ということでホワイトホースを、ハイボールで頼見ました。気持ちを落ち着かせます。 さて「ホワイトホース」について、少し補足しておきましょう。名前の通りボトルの中央に白馬が描かれています。 このブランドは1881年、ピーター・マッキーにより立ち上げられました。 ホワイトホースの名前は、マッキー氏の近所にあった酒場兼宿場 「白馬亭(The White Horse Cellar)」に由来します。 ラベルの白馬は、白馬亭の看板を描いたもので、1742年というのは白馬亭の創業年になります。 この「白馬亭」ですが、普通の宿ではなく、18世紀にスコットランドの独立を図った「ジャコバイトの反乱」の際の拠点。 単純に良さげな宿があるから、という理由ではなく、スコットランド人の誇りの源に肖(あやか)ったというところでしょうか。 また、キーモルトがラガヴーリンというのもちゃんと理由があります。 マッキー氏の叔父ローガン・マッキーは同蒸留所のオーナー!若かりし頃にウイスキー造りを学んだのがラガヴーリンだったというワケ。 (なんと贅沢な!)ローガン氏が亡くなってからは蒸溜所の経路も引き継ぎます。 さて、もう一度バーに戻ります。さくらさんのストーリーです。あれだけ騒いでホワイトホースに脱線しかかりました。 さて、私が興味があったのは、どうしてそんなに若くしてウイスキーに興味を持ってしまったの?ということです。 男性諸君でアルコール好きな人なら、ウイスキーは「男の酒」みたいな感じで入り口付近に連れていかれます。 同僚やお客さんとの飲み会、友達とのバカ騒ぎとかで、一度や二度はウイスキーのボトルに触れる機会はあるのでは無いでしょうか? 女性の方も当然にそういった席はあると思うのですが、そこでウイスキーなどの蒸留酒が出てくるケースは少ないのでは?と。偏見ですかね? すみません、女子会とかお呼ばれしたことが無いので。もし違うよ!っていうことでしたらぜひ取材にいかせてください!交通費は払います。笑 さて、さくらさんの場合ですが、学生の頃にフランスのノルマンディー地方での体験がひとつのきっかけだったようです。 皆さんは「サイダー」をご存じでしょうか?日本でサイダーというと三ツ矢サイダーとかを想像されるかもしれませんが、 向こう(ヨーロッパ)でサイダーといえば、リンゴ酒です。フランス語ではシードルと発音します。 フランス北部のノルマンディー地方は、南仏のようにブドウが育ちにくいため、代わりにリンゴの栽培で有名。(日本の青森みたいなもんですかね) そのリンゴを使って作る醸造酒が「サイダー」。さらに、それを蒸留したリンゴの蒸留酒を「カルヴァドス」と言います。リンゴのブランディーのようなものです。 ノルマンディを学生時代に旅された時に、このカルヴァドスに惹かれ、それをきっかけに蒸溜酒に興味を持ち、そしてウイスキーに至ったようです。 社会人になってからはバーなどで勤務された後、アイルランド(※)にワーキングホリデーを使って1年ほど滞在されたとのこと。 ※アイルランドは言わずと知れたウイスキーの聖地として有名、ウイスキー発祥の地とも言われかつては(1920年より前)最大の生産量を誇りました。 その間に現地の蒸溜所やバーを巡られたそうです。因みに、ジャパニーズにも造詣が深く、山崎、白州、余市、宮城狭などすべて回られたそうです。すごい!汗 小生から見ると、もう完全に大先輩の域です。そういう訳で、次に大先輩の一杯をいただきました。それがコレ。 「美味しいウヰスキー」。マンマじゃないですか?! それもそのはず。これもウイスキー好きの間では聖地とも言われるスコットランド・スペイサイドの有名なバー&ホテル「ハイランダーイン」のオリジナルボトル。 このホテルの支配人はなんと日本の方で、皆川さんという京都出身の方です。 中身は36年熟成のスペイサイド系ぶブレンドのようです。クレイゲラヒと小さく書いているのは、このハイランダーインがある村の名前です。 因みに同村にはクレイゲラヒ蒸留所があります。実はこの蒸留所は、先のマッキー氏と関係があり、ホワイトホースにブレンドする原酒確保のために1891年に設立されました。 ホワイトホースはブレンドなので、キーモルトのラガブーリンのほかに、クレイゲラヒを始めとしたスペイサイド系原酒がブレンドされています。 さて、「美味しいウヰスキー」。 飲んだ印象ですが、まずシェリー系かなと。それと、スパイシーですっきりした感じ。 原酒はスペイサイド系ということなのですが、テイストした後の直感はハイランドかなと思ってしまいました。 36年の熟成期間でしかもブレンドというと、かなり複雑な味わいを想像してしまいますが、なぜか若さを感じさせます。 玄人好みの一杯ということなのでしょうか。正直、ボトラーズのブレンドでこれほど熟成期間の長いものは、自分からは選ばない、というか選べないですね。予期せぬ出会いというのは貴重です! さて、最後に私からの感謝の気持ちということで、大先輩に一杯おごろうかと思い勢いよくボーイ君に注文。 […]

【東京】バー恵(中野)

そういう訳でやってきました「バー恵(めぐみ)」さん。 先ほどの「美術館」から歩いて5分くらいでした。 先ほどの彼によると仕事が終わって店長さんとこちらのバーで飲まれることもあるようです。 店に入っての印象は昭和のノスタルジックな秘密基地という感じでしょうか。細長い店内にカウンター席が8席くらい。 うちらが入った時には先客の方が3名おられて、うちらが入店した時点で結構がっつりという感じでした。 店の中の移動もカウンターに座ってる人の協力なしには後ろの壁とのスペースがカツカツで通れない感じ。 そんなわけで、なんとなく居合わせた者同士親近感を感じてしまうお店です。 語り合いバーみたいな感じでしょうか。 気さくな女性のマスターさんが店を切り盛りされてます。 この辺に住まれてる方には憩いの場みたいな感じかと思います。現にお一人で来られてた方は常連さんのようでした。 さて、席についてから「初めてですか?」と先ほどの女性マスター。 先ほどの経緯をお伝えすると「ワサビは終わったんですよねー」とのこと。 「あの子(件の美術館の彼)まだ宣伝してるのね」と笑っておっしゃってました。 どうやら彼は宣伝部長のようですね。我々の前にもこうしてワサビ杯を求めて来たものがいるようです。(笑) 何を飲もうかなぁと思い棚をキョロキョロ。 オススメで頂いたのがコチラ。 小学館さんのデビルマンシリーズ。 中身はアードモアの10年。ラフロイグカスクとのことです。 飲んでみたんですが、第一印象は思いっ切りラフロイグですね。笑 アードモアは飲んだことがないんですが、10年熟成なのにラフロイグに染まってる感じがします。 もちろんオフィシャルのラフロイグの様にブアッと煙が出る感じではありません。カスク越しなんで、上品に香るラフロイグという感じ。 このくらいだとアイラ系苦手なヒトとかでもイケそうな感じですね。 さて、これは後付けの知識なのですが、アードモアを調べてみました。アードモアはブレンドのティチャーズのキーモルトとして知られているようですが、ズバリその特徴はピート。 しかし、いわゆるアイラのピートでは無くハイランドのピートです。このピートの特長はアイランズのような磯の香りではなく、炭っぽい香りだとのこと。 ということは、先ほどのアードモアはアイラモルトとハイランドモルトの競演だったという訳ですね。知識が無くて追いつきませんでしたが、次はアードモアもぜひ試してみたいと思いました。 さて、次に試したのがコレ。 この中野には実はとても有名なバーがありました。 現在は残念ながら閉店されていますが、駅南に方に「サウスパーク」と言われるウイスキー好きの聖地がありました。 自分も行きたかったのですが、残念ながらそのバーを初めて知った時には、すでに閉店報だったのです。 本当は「聖地巡礼」もしようかと思ったのですが、繁華街と反対方向であったので今回は結局断念。 しかしながら、幸運にもそのバーがボトリングされたボトルにこちらで巡る会えました。まさに恵さん。笑 ボトルにはサウスパーク5周年記念とあります。設立は2012年12月29日だったようです。 ボトラーはアスタモリス。輸入元はガイアフローとあります。 中身はグレントファース。2009年に蒸留された8年モノで、PXシェリー熟成。 ここからは後日談になりますが、実はこのボトルについての感想を後で書こうとしたのですが、どうしても思い出すことができませんでした。 記念ボトルのため、オフィシャルものとかと違ってネットで他の方の感想とかも「参照」することは不可能。 また適当なコトを書いて、親愛なる読者の方々を欺く訳にも参りません。 そんな訳で、もう一度飲みに恵さんを訪問してしまいました。汗 ここからはその時の感想です。 改めてですが、PXシェリーは香りから伝わってきます。 テイスティングですが、スペイサイドのグレンファークラスのような感じでしょうか。グレントファースそのものはあまりオフィシャルでは出回っていないので何とも言えませんが、結構シャープで余韻もキレがあるような気がしました。 どうですか?と恵さんから聞かれたにですが「難しいですね」汗、としか答えられませんでした。スミマセン! 因みにこの日のお通しが「鰻」で、意外にもウナギとウイスキーが合いました。より正確にはこのボトルのキレと鰻の脂がうまくマッチングした感じです。 さて、最後に余談になりますが実は再訪して経緯をお伝えした時に誤ってアスターモリスさんの別のボトルが出て来たんです。 コレです。 ボトルの記載を見たら5年もののアードモアになっていたので、え?と思って確認して発覚。 因みにこちらはサービスで頂かせてもらいました!ありがとうございます!誠に恐縮です。 こちらは先ほど飲んだモノに比べると味に柔らかさがあり、シェリーも感じます。5年という割には結構ボディが熟成しているように思いました。 アードモアといえば先ほどいただいたデビルマンのベースもアードモアで、ピートが特徴的であるコトを書きましたが、帰宅してから知ったため意識が及びませんでした。 いずれにせよアイラほどの個性的で主張するピート臭では無かったと思います。次回は意識してみようと思います。 因みにですが、こうした個人などが手配するオリジナルボトルというのは、基本的にはシングルカスク由来であるコトが多いように思います。いわゆる樽買いというものです。 樽は大きさにもよりますが普通のバレルですと180リットル、1/4のクォーターで110リットルくらいと言われます。 細かい算数の話になりますが、シングルバレルorシングルカスク(要は1つの樽)を1バッヂとした場合、 ウイスキー1瓶の容量が700ミリリットルなので 200本強のロットであればバレル。100本前後ならクォーターカスクかなあ、と想像ができます。 […]

【東京】お酒の美術館(中野)

本日は中野にお邪魔しました。 自分は都内に住んでいますが、あまり中央線沿線とは縁がなく、中野もたまに通ることはありますが、途中下車はしたことがありません。 そんなところに今回来たのは訳がありまして、、行きつけのバーのボーイ君が誕生日を迎えるということで、 どこかでささやかなお祝いでもしようかという話になり、先方の希望で中野が選ばれたいという経緯。 中野のほかには、上野も候補だったのですが、普段行くことが無いところという点で、中野をチョイス。 さて、その当の本人が、なかなか来ません!思ったより、恥ずかしがり屋さんのようです。とりあえず時間を潰します。しかし、この中野は面白いですね!まるで昭和にタイムスリップしたような感じです。 先日、広島を絶賛しましたが、この中野も結構いけます。どうしてなのでしょうか?コジンマリした店が、商店街の周辺にも密集しています。 待ち合わせの時間は15時くらいだったのですが、日曜ということもあってか結構の数の店が開けていて、またかなり混んでいます。 恐らく地元の方だとは思うのですが、老若男女が良いバランスで混ざっている感じ。とくに若い子が多い印象でしょうか。 さて、アレコレしていると到着したとの連絡を受け、駅前で再び合流して、どこか良さそうなバーの探索を開始。 そこで見つけたのが「お酒の美術館 中野店」。 15時オープンということで、ちょうど店を開けたばかり。我々が一番の先着だったようです。 席はどこかなと思って探していましたが、どうやら立ち飲み。店の棚を拝見する限り、ウイスキーとか蒸留酒系が中心の様。 すごいですね。飲み方にもよりますが、ウイスキーの立ち飲みは初めてです。 さてもうひとつの発見。店員さんがまた若い!聞くとまだ大学生(もちろん二十歳超えていますよ)。 良いですね。また、どうして?とお伺いしたところ、この店のオープニングに面接を受けたら、採用されたとの話。 いやはや、オーナーさんも度量のある方のようです。爽やかな青年でした。(ご本人の許可も得ての掲載。イケメンはマスク無しが映えますネ(笑)) 本人曰く、お酒も好きだけど、「人とのコミュニケーションが好き」だとのこと。可能性は無限ですので頑張ってください! さてさて、飲み物の話に移りたいと思います。 とその前にですが、このバーは「オールド」が売りのバーのようです。「オールド」というのは、廃番品のことで、現在は市販されていないものです。 では、なぜそのようなボトルがあるのか?理由は主に二つあると思います。そのボトルが市販された当時に買って、未開封のままでたまたま残っている。もしくは、コレクターの方がきちんとキープされていた。普通は買うと開けちゃうと思うのですが、開けずにちゃんとキープされるのがコレクター。というのは、将来性のあるボトルは、希少性が増して価値が上がります。 特にウイスキーはアルコール度数が高いため、腐敗しづらく、また保存熟成による味わいや香りの変化を逆に楽しめたりします。もちろん、保管状況によっては劣化もしてしまいます。 「オールド」の中でも昔の酒税法区分による「特級」などのラベルがついているものはかなり貴重です。1962年の酒税法改正(1989年に廃止)では、それまで「雑種類」であったウイスキーが、「ウイスキー類」として扱われるようになり、さらに原酒混和率により特級・一級・二級などの区分けができました。これにより「ウイスキー特級」には高額な税が課される反面、「高嶺の花」としてのブランド価値を確立しました。 当時の日本が行動経済成長期であったことと相まって、サラリーマンにとっての憧れとヤル気の源であったようです。 さて、今回こちらのお店で試したのは、スコッチブレンドのシリーズ。ラベルをよく見て頂けると分かると思いますが、下の方に「特級」とあります。なので、おそらく30年以上前に誰かが購入されたものと、こうして巡り合えたという事になります。 ボトルを簡単に紹介。左のBELL’S(ベル)はイギリスで最もポピュラーなブレンドスコッチです。ボトルの上の所に「afore ye go(船出の前に!)」とありますが、門出を祝う縁起の良いウイスキーとして、昔は出征する兵士に贈られたそうです。また、weddling bellとかけて、結婚式で供されたりもするそうです。おっと、そういえば今日はボーイ君の誕生日でしたね。ハッピーバースBELL‼ さて、真ん中はHAIG(ヘイグ)というこれも向こうでは有名なスコッチブレンドのようです。正直、こちらの方ではあまり見かけないような気がします。ただ、今回飲んだ3本の中では個人的にはこのHAIGが一番品の良い感じがして、良かったです。甘いシロップの様な感じというのは例えが変ですが、隣の二つがあっさり、すっきりの感じでしたので、特に印象的だったのかもしれません。最後に、J&B。つい最近までジム&ビームと思っていましたが、違いますよ。(笑)ジャステリーニ&ブルックス社のイニシャルでJ&Bです。特徴的なラベルで、割と見かける印象ですが、同社は1749年に設立、J&Bレアは1933年に登場。キーモルトはスペイサイド系が中心で、ライトな味わいです。 自分はもっぱらスコッチのシングルモルトしか飲まないため、見分を広めるためにと思ってスコッチブレンドを頼んでは見ましたが、どれもオールドボトル。現行品とはまた違う味わいだと思います。次回またどこかで機会があれば、現行のものがどうなっているのかも試してみたいと思います。 さて、主にカウンター席だけの立ち飲みバーですが、結構人が入ってきました。次のどこに行こうか、カウンターに立っていた写真の彼に相談したところ、一押しの店があるということで1件ご紹介頂きました。なんでもワサビ漬けのお酒が飲めるとか?!

【愛知】共栄窯(常滑)

人生を悔いなく生きるにはどうするか?その日その日を精一杯に生きる、とかありきたりの言い方がありますけれど、自分流に言わせてもらえればこういう事です。 「気になったことは、その場でやる」、これだけです。 でも、モヤモヤしたりウジウジしたりで先延ばしにしてしまうことが未だに多い。 若いうちはそれでも可愛らしいですが、歳を取るにつれて「次」っていうのが、日に日に重たくなって来ます。その「次」はいつくるのか?ホントにくるのか? 一回一回がすべてチャンスと思えば姿勢も変わってきます。もちろんすべてに気を張っていたのでは息苦しいんで、ある程度のメリハリも必要なのですが。。 さて、そういった意味で、自分はやっぱり出張とかで出かけた時に、何をするかというのは、とても重要です。仕事の次にです!もちろん。笑 さて前置きが長くなりました。 今回の訪問先は、自分にとって5年ぶりくらいの「再チャレンジ」になります。 再チャレンジとはどういう意味かというと、以前中部空港を利用するのに前泊でここ(愛知県常滑)に泊まったことがあるのです。その時はただ空港に近いというだけで選択しただけで、焼き物で有名だとか、このバーに存在とかは全く知りませんでした。 ただ、その時はこのお店の扉を開けることができなかったのです。当時はそこまでお酒にも詳しく無かったですし、外観が非常に特徴的で面白そうだとは思ったんですが、中が全く窺い知れず勇気が出ませんでした。 初めて来た土地で、夜遅くに、バーを訪問する。しかも独りで。冷静に考えれば結構ハードル高いのかなとも思います。 今では大分こういうのにも慣れてきて、緊張で扉を開く勇気が無いということは無くなりました。それでも、やっぱり扉を開ける一瞬は緊張します。注射に慣れても、チクッと刺すときは意識してしまう、そんな感じです。 さてこのバーの特色は何と言っても外観もさることながら、その中の空間にあります。 ここ愛知の常滑は焼き物の町で有名です。街の中を歩いてても感じは伝わって来ます。このバーも実は焼き物(しかも土管!です)を以前焼いてた窯だったのこと。内部の空間はカマボコ型をしていて、土管を焼いてただけありかなりデカイ。 カウンター席の他に、テーブル席もありますが、それでも広々しています。器とかを焼く「登り窯(のぼりがま)」とかは見たことあるのですが、とても人が中に入って寛げるような感じでは無かったですね。 それにしても誰のアイデアなんですかね?焼き物の窯をバーにしちゃおうなんて。本来の用途とは全く違いますが、再活用として初めてナイス・アイデア! さて、釜の中で何を飲もうか考えました。 とりあえずメニューから興奮を覚ますべくローランドのウイスキー・グレンキンチーをロックでまずは一杯。  ローランドはあまり飲む機会がありません。スコットランドの中心都市であるエジンバラを含む南部地域がローランドと呼ばれますが、この地域に現存する蒸溜所は非常に少ないです。 グレンキンチーと、オーヘントシャンがよく知られている蒸溜所ですが、他はほとんど見ることが無いかと思います。 さて、今回トライしたグレンキンチー12年。 ノージングはフローラルで軽く、味わいはハイランドとはまた違う柔らかな感じで、まろやかさがあります。都会的なタッチとでもいうのでしょうか。 マスターにお話を伺ったところでは、このバーはまだ始めてから7年ぐらいとのこと。窯自体は昭和前半くらいの作りなので、建物は古いですが店は非常にまだ若い。 土管を焼いてたというこの窯が現役で使用されていたのが、昭和46年迄ということなので、使われなくなってから半世紀近くの経つ計算。 しかし、店の中の感じはつい最近まで火を炊いていたのでは無いかと思うほど内壁が黒光りしています。 恐らく何かしらの復元なりメンテ工事をしたのだろ思われますが、平日夜の遅い時間にも関わらず店の中は終始バタバタの状態。 今回は経緯などをゆっくりお伺いすることが残念ながらできませんでした。 忙しく動くマスターが少し手を外された瞬間に、次の一杯を注文。ロイヤルロッホナガーです。これはメニューから見つけました。ジョニーウォーカー・ブルーラベルのキーモルトとして知られる銘柄です。 元々の名前はロッホナガー蒸溜所でしたが、英王室の夏の離宮が近くにあり、その縁でビクトリア女王が蒸溜所を訪問されたことから、ロイヤルの名前を冠するようになりました。1848年のことです。 ノージングはフローラルで柔らかな感じがありますが、味わいはハイランド系に特有なスッキリとした感じ。 二本続けて柔らかなウイスキーを飲んだので、最後に違う系統を頼みたくなりました。アイラ系でなにかシメをしようと思い手元のボトルを眺めながら決めたのがアードベック・ブラック。 結構よく見かけるのですが、飲んだことはありませんでした。LVMHのアードベッグ。そうです、LVMHは傘下にルイ・ヴィトンやディオールを持つフランスの大手企業体。超高級シャンペンとして知られる「ドンペリ(ドン・ペリニヨン)」のモエ・エ・シャンドン社も同じ傘下です。 そんな訳で、自分は普段あまりお世話になっていない(泣)仏高級ブランドのウイスキーということで、なぜか飲む前からソワソワします。敷居の高さを勝手に感じていたのかもしれません。(笑) ノージングはまさにアイラ系という感じで、口に含むとスモーキーさが全体に広がります。ラフロイグやラガブーリンのような癖のある感じではなく、割とスッキリしたスモーキーさです。 ラベルの後ろを見ると「ニュージーランドのピノノワールのワイン樽」を熟成に使用したと書いてありますが、正直私には分かりませんでした。とにかくスモーキーなパンチがあって、言われてみればベリー系の余韻もあるかなという感じです。 終電の都合のあり、もう少し窯の中でまったりしたかったのですが、最後はいそいそと荷物をまとめて店を出ました。最後までカウンター席は一杯でした。やっぱり皆さん常連の方のようで、このバーの雰囲気に惹かれて来られるようでした。 常滑を訪れることがあれば、焼き物見学の後にぜひともオススメします。フードメニューも充実していて、ウイスキー以外のドリンクも豊富にあり、テーブル席もありました。色んなシチュエーションに対応できそうです。

【広島】バー・リトルハピネスさん(広島)

広島が好きです。 理由、要りますかね?笑 敢えて言うなら、昭和の香りです。それも品の良い香りです。 自分は昭和の生まれですが、平成、令和となって、街に昭和の雰囲気がめっきり無くなった気がします。建物や街全体が新しくなることは良いことだとは思います。便利で快適になりますから。 でも少し寂しい気もします。ヨーロッパの都市の旧市街を散策してたりすると、やっぱり羨ましく感じてしまいます。 古くても良いものは輝きがあります。年を経ることで良さがでるものは確かに存在します。 日本で昭和っぽい街並みと聞いて連想するのは、時代遅れで古臭い感じでは無いでしょうか。 古びた建物に、シャッターの下りた商店街、廃墟と化したような街並み… そういう場所も沢山あると思います。地方に行くと街の中心にある商店街は閑古鳥が鳴いていることは少なくありません。 その中で広島は、その街並みが昭和っぽさの上に築かれながらも、「美しく」繁栄している、そんな気がします。 市内の川に架かる橋。結構沢山あります。どれも結構年季が入ってますけど、ヨーロッパの橋の様に品があります。 街中では新旧両スタイルの路面電車が仲よく走るのを見かけます。市民や観光客の交通手段として現役で活躍してます。 繁華街も昔の感じそのままに賑わいがありノスタルジックな感じがして素敵です。中には怪しげな店もチラホラありますけど、全体的に肩肘張った緊張感が無い。お寺の縁日の祭りの様な懐かしい感じがします。 日本の街は古いものを壊して新しく作り替える式が多い。その中で広島は、うまく昔のものを引き継ぎ活かしている、そんな気がします。贔屓しすぎですかね?!笑 結局長々と語ってしまいました。 そろそろ本題のウイスキーバーに話を移しましょうか。 今回お邪魔したのはリトルハピネスさん。 ウイスキーバーにしては可愛らしい名前、建物の一階にあったのでふらっと寄ってみました。 店内はスタイリッシュな感じで、結構きれいにボトルが並べられてます。 オフィシャルを中心にボトラーズも。 パッとみた感じ左がスペイサイド、真ん中がアイラで、右はジャパニーズやバーボン系 今日はスペイサイドが飲みたかったので左側に席をとりました。 さて一杯目は広島ということで、コレを頂きました。 広島・廿日市の中国醸造さんのウイスキー。戸河内TOGOUCHI。 ウッドフィニッシュで酒樽とビール樽が置いてあり、ビール(IPA)樽フィニッシュのものをロックでいただきました。 ビールのホップ感までは正直分かりませんでしたが、スッキリした味わいです。ソーダ割りとかでも美味しいかもしれません。 中国醸造さんは「桜尾」という国産のジンを作っており、こちらの方がよく知られているかとは思います。 2021年にはスコッチウイスキーの慣習に習い3年の熟成を経た待望のシングルモルトが発売されるようです。 広島といえば賀茂鶴を始めたした西条のお酒というイメージが強いですが、今後はウイスキー造りも楽しみです。 2杯目は何にしようかなーとメニューを眺めていました。 因みにここのメニューはウイスキーバーにしては珍しく、一つ一つのボトルが丁寧に紹介されています。 真っ暗でメニューすら置いてないとこもあるので、初めての方とかオススメですね。 ノッカンドゥーのナッティーさが気になりましたが生憎売り切れ。 そこで真ん中にドンとあったモートラック16年をストレートで注文。 結構特徴的なボトル。ここのロゴって、丸ビルのロゴに見えてしまいます。笑 さて味わいなんですが、ノージングはスペイサイドっぽい華やかな感じ。16年モノなので力もあります。 テイスティングはこちらのメニューのコメントにもありますが、フルボディでどっしりした感じ。主張感のあるボトルのスタイルと合ってます。アフターもしっかりとした余韻が残ります。重量系なスペイサイドって感じですね。 次に頼んだのはこちらのお店の特注ボトルでビンテージもの(簡単いうと熟成年数だけではなく、蒸留した年も明記されているボトルです)で、フェターケアン10年。 フェッターケアンはブレンドスコッチ・ホワイト&マッカイのキーモルトとして知られる東ハイランドの蒸溜所。淡い黄色してるので、バーボン樽熟成でしょうか、さっきのモートラックと比べても色が全然違います。 しかし何よりも驚いたのはこの香り。なんだろコレ?!柑橘系の皮のようなシトラスっぽい感じです。テイスティングはハイアンドに特徴的なスッキリでスパイシーな感じがあります。 スペイサイドも一応ハイランドの一部なんですが、やっぱり味の質が違いますね。個人的にはハイアンドの水は透明感があって、バーボンの特徴がより綺麗に出るような気がします。 ミックスナッツをポリポリしながらしばし広島の夜を楽しませてもらいました。翌朝に少し打ち合わせをして出発なので、広島滞在時間は実質12時間未満。 お店の方が色々とオススメのボトルを並べてくれて、どれも興味があったのですが明日から仕事ということもあり次回以降のお預けとなりました。 特に40%offになっていた「響21年」はかなり迷いました。 年に一度くらいしか来ることないので、本当に短い時間ではありましたが堪能させてもらいました。他にも市内にはいわゆるオーセンティックバーと言われる正統派のバー(いわゆる普通の人がイメージするような感じのくら〜いバー)が結構あるようで、また機会があれば回って見たいと思います。 【編集後記】 ところで、このバーに置かれていた一つ一つのボトルが紹介された「メニュー」。これを写真に撮り収めるのを忘れていたことに後で気づきました。少し迷った末、直接連絡してみたところ、ご親切にもそのメニュー、というかメニュー「帳」の写メを送っていただきましたので掲示いたします。ありがとうございます! ウイスキーは名前とかだけでは味のイメージがピンと来ないことが多いです。かといって、これがスペイサイドで、カスクがシェリーフィニッシュでと説明されたところで、どんな味か普通は想像つかないですよね。ですが、このメニュー帳には、初めての方にも分かりやすく丁寧にイラスト付きで説明がされていてとても良かったです。ウイスキーに興味を持ち始めた方で、こちらの方面にお住まいの方であれば、特にこのリトルハピネスさんをぜひ推したいですね!

BAR GOSSEにてII

先日訪問したバーで、敢えて置かれていなかったジャパニーズ・ウイスキー。 今回は5年ぶりくらいに再会する友人Y氏と訪問。 さて、今回はウイスキーを普段飲まれない人を連れてなので、「ウイスキー」の面白さを知ってもらうべく近くのコンビニでこんなものを調達。 言わずと知れたサントリーの「角瓶」。本当にどこでも手に入ると思います。数百円です。 ウイスキーは安いから美味しくない、という訳ではありません。 特に角瓶は1937年に発売されて以降、名実ともに日本で最も良く知られたウイスキーで、売上№1を誇ります。 ドライですっきりした後味から、ハイボールでも美味しく飲めます。 とはいえ、やはり熟成年数の若い樽をバッティング(混ぜ合わせて)して作られているので、熟成前の原酒の味に近いのかなと。要は、スピリッツのような感覚。 ウイスキーは原酒の出来も重要だと思いますが、やっぱり熟成による味の変化が一番の醍醐味。 なので、やっぱり個人的には物足りない感じ。 でも、とりあえず山に登るには登山口から、という訳で無理を言って「角瓶」からのスタートをお願いしました。 *ちなみに、コンビニで買ってきたウイスキーを飲ませてくれるワガママ聞いてくれたことに感謝!普通では考えられないです。どうか真似をしないでください。(笑) さて、角瓶をストレートで楽しみながら昔話に花を咲かせました。 個人的な話ですが、Y氏とは大学時代からの付き合いです。 外資や日系大手の海外駐在を経て、かなり最近、というか先月に勤めていた会社を退職。 「え、何するの?」と聞いたら「勉強」との答え。しかも学部、しかもアメリカ、しかもニューヨーク。 ??? すみません、まだ一杯目ですが頭がクラクラします。汗 なんでもコロナや子育てで、再度人生の意義について考えた結果、自分の本当にやりたい事がなにか、という問いに返ったそうです。 アメリカはまだ大変なので、しばらくは日本待機なようですが、時代の変化をつくづく感じます。 **** 「山崎」 「山崎12年」 「山崎18年」 日本の山崎は、世界のYAMAZAKIになりました。 ウイスキーの熟成年数の表記をエイジ・ステイトメントと言います。 その表記の無いものはNAS(ノン・エイジ・ステイトメント)、通常ノン・エイジと言います。 山崎12年、山崎18年とあるのは、それぞれ12年以上、18年以上、熟成した樽の原酒のみを使用しているという意味です。 山崎のエイジもの(熟成年数の表記があるボトル)は昔に比べて非常に入手が困難で、値段も高くなりました。 *ともっともらしく書きましたが、自分はそれらが入手容易であった時にはウイスキーに興味が無かったので、実感としては分かりません。 国内でも、ノンエイジはともかくとして、エイジものを頼むときは値段がいくらか頼む前に確認します。 やはり、希少価値で値段が高くなっているところがあるので、適正価格という枠が無い気がします。特に海外では、非常に高価な価格で販売されることもあるようです。 ウイスキーは熟成年数を経て完成品となります。 需要が突発的に上昇しても、熟成していた樽の分が無くなれば終わり。 限りあるストックに対して、それ以上の引き合いがくればどうなるかは明白ですよね。 タイムマシンで過去に遡って仕込み量を増やしておく様に指示ができれば良いのですが、 残念ながらそうはいきません。 在庫が減るほどに、希少価値が高まり、値段は上がります。 しかも、単純にラインを増やして作れば良いという話ではありません。 原酒を急いで作っても、そこから熟成に数年、数十年の歳月を要します。 山崎のエイジものが入手困難になっている理由はまさにここにあります。 当時は、これぐらい仕込んでおけば大丈夫だろう、と思っていたのが、実際は全然足りなかった。 しかし、この問題はウイスキー作りに必ずついて回る問題です。 今作るウイスキーの仕込み量は、10年後、20年後の需要を想定しながら計算しなという訳。 他にこんな商売は自分には思い当たりません。 自分がウイスキーに惹かれるのも、こうした「不確実性のロマン」があるからです。 さて、「山崎」も「角瓶」も同じサントリーの蒸留所で熟成したウイスキーを元に作られていますが、何が違うのでしょうか? 簡単に言うと、二つです。 ひとつは、「山崎」はサントリーの山崎蒸留所で蒸留し、熟成したモノのみを使用していますが、「角瓶」は他の蒸留所(白州蒸留所)由来のモノも混ぜ合わせています。 また、ウイスキーのタイプも違います。「山崎」はいわゆるシングルモルト。原料は大麦由来の麦芽(モルト)のみ。 しかし、「角瓶」はブレッド(ブレンデッド)ウイスキー。これは、モルト・ウイスキーと、グレーン・ウイスキー(トウモロコシや小麦など大麦由来の穀物を使用)の2種類のウイスキーを混ぜ合わせたものです。 これによってどのような違いが出てくるのか? これも簡単に言うと、シングルモルトは単一なのでより蒸留所の特徴が出る個性的な味に。ブレンドは様々なものをミックスしますので、どちらかというとバランスが取れた味になります。 また蒸留設備の違いから、モルト・ウイスキーの方がより複雑に、グレーン・ウイスキーはスピリッツに近い味わいになります。 そして、山崎蒸留所の大きな特徴としてひとつ挙げておきたいのは、熟成樽の豊富さです。 […]

【群馬】ショットバーキャップ(太田)

群馬県の太田を仕事の関係で訪問した。 太田といえば、自動車メーカSUBARUのお膝元。 静岡の浜松とかと同様に、日系のブラジル人が多く住むことでも知られる町です。 仕事の用事が終わって車を太田駅に返却したところで夕方の5時くらい。 さすがにバーが開店するにはちょっと早い時間帯。 しかし、ここまで来るのは滅多に無い。特急電車の待ち時間もある。 色々と言い訳を自分なりに作って駅前をフラフラしていると、駅近くの雑居ビル2階に見つけました。お目当てのウイスキー・バー。 扉の近くに行くと、マスターがバタバタと店を開ける準備をしていたところでした。 店内にもまだ日が差し込む夕暮れ時にカウンターに着席。さて、このお店ですが、 入店した瞬間からちょっとただならぬモノを感じていました。 なんというか直感です。やはりスゴイものって、理屈無しで伝わるものあります。 カウンターに座ってちょっとビックリ。薄暗くて良く見えませんでしたが、ボトルを逆さに宙吊りした状態で、ウイスキーの銘柄がずらりとカウンターの上と後ろに並んでいます。 ボトルを逆さにしているのには仕掛けがあります。 通常は、ボトルを毎回開けて、ワンショットをマスターが計量して、ウイスキー用のチューリップ型のグラスにつぎ込ます。 このボトル逆さタイプ(「ワンショットメジャー」とか言うようです)は、キャップの所にバルブが付けられていて、バルブをひねると、その下の計量カップにワンショット分が自動的につぎ込まれます。 要するに手間がかからないという訳。中にはボトルを逆さに吊るすように、ラベルも逆さに貼ったボトルまであるそうです。 海外では多いと聞きますが、個人的にはあまり国内で見かけたことは無いです。 さて、ズラリと並んだボトル。棚の奥はオフィシャルのスコッチ、カウンターの上に吊り下げられているのはバーボンと、きれいに並べ分けられています。 そして、カウンターの背面の壁には、いわゆるボトラーズのボトルがズラリ。 ちょっと興奮を抑えながら、とりあえずバーボンをロックで。 「バーボンがお好きなのですか?」と聞かれたのですが、これはあくまで準備運動。 本命(スコッチ・ストレート)の前に、最初に少し違う系統のお酒を敢えて頼むのが自分流。 生ビールやスコッチのソーダ割りを頼むことが多いのですが、今日は頭の上にズラッと並んでいるバーボンを選んでみました。 さて、何から頼もうかと頭の中で思案しつつ、マスターにお話しを伺いました。 なんでも、御年80歳で現役。30年以上もお店を続けられているとのこと。 サラリーマン時代にいつかは脱サラすると決めて、40代で少しずつウイスキーのことを勉強し始め、50代で独立されたとのこと。 近くには繁盛している時で、30軒以上も同じようなウイスキー・バーがあったそうですが、現時点で残っているのはココぐらいだとか。 周辺の前橋とか、足利とかからもお客さんが来るそうです。 店のスタイルはいたってシンプル。ウイスキーのみの提供。食べ物は一切無し。 そういえば、ナッツ系のお通しすらも無かったです。 長く続ける秘訣は何でしょうか?との問いかけに、 「軸をブレないこと」との答え。 そういえば、以前に横須賀のスナックで飲んでいた時に、隣のおじさんから同じようなことを言われたことがあります。 「飲んでも軸はブレんな!」、と。 他の廃業されたバーはお客さんからのリクエストで、食べ物とか色々と工夫をされたところもあったようです。 しかし、結局はお店の特徴があやふやになり、どこも上手くいかなかったとの話。 そんな話を伺いながら、何を頼むかを決めました。 ズバリ、「マスターのおすすめ」。 人任せに頼むのは久しぶりですが、ここまでの話の流れで、マスターの飲まれる銘柄が気になってしまいました。 そこで出てきたのが、「グレンドロナック」。 マスターはシェリー樽熟成が好みなようで、同じくシェリー樽熟成で有名なウイスキーのロールスロイスと呼ばれる「マッカラン」と似たような系統。 実は、この間ちょっと寄ったバーで「マッカラン12年」を飲んだばかりだったので、予習はバッチリでした。 香りは確かに、マッカランと同じ様な感じですが、味はかなり引き締まった感じ。 ネットのレビューを見るとフルーティで甘いとかありましたが、個人的にはテイスティングはナッティーでドライな感じがしました。 「どうですか?」とマスターに聞かれたのですが、うまく答えられませんでした。 自分はまだノージングやテイスティングの感覚には自信が無くて、30年以上もベテランのマスターに感想を述べるのは緊張しかありませんでした。 しどろもどろしている自分に、 「これと比べるともっと面白いですよ」 と、出てきたのが同じくグレンドロナックの18年。 熟成年数が長いだけでなく、熟成樽も違います。 12年モノはオロロソ・シェリーとペドロヒメネスのバッティングですが、18年はオロロソのみ。 オロロソとか、ペドロヒメネスというのはシェリー(酒精強化ワイン)の種類です。 産地はスペイン。簡単には、オロロソは辛口で、ペドロヒメネス(PXとも)は甘口。 18年は単一の樽熟成なので、シンプルかと思いきや、やはり熟成年数が高いので深みのある香りと味わい。色もかなり深いルビー色です。 こちらもやっぱり一味飲んだ後に、「どうですか?」と質問が。 […]

BAR GOSEEにて

今日は久々に行きつけのお店にお邪魔しました。 コロナ禍で大変ですが、こちらのバーは常連さんがメインで、だいたいは落ち着いた感じです。 やっぱり行きつけの店って大切にしたいですよね。とにかくご迷惑はおかけしたくないんで、比較的空いてる早めの時間帯によってみました。 ここのバーはコロナ前から何度か通っていて、ある程度どのような銘柄が置いてあるのかも、頭の中にあります。 要するに、今日飲みたいウイスキーについてある程度イメージを持ったうえで、店の門をくぐることができるということ。 今回、自分は、キャンベルタウンの「スプリングバンク」と初対面すると決めていました。 *** キャンベルタウンの「スプリングバンク」。 ウイスキーの好きな方なら、知らない方はいらっしゃらないと思います。 それくらい有名です。 スコットランドにおける蒸留所は、地域別におおよそ5つに分かれます。 まずはおおまかに、「ハイランド」(北部/田舎)と「ローランド」(南部/都会)。 「ハイランド」の中で、スペイ川流域を「スペイサイド」と言います。 このスペイサイド地区が最も蒸留所が密集する地域です。 また、スコットランドの周りにある島々で生産されるウイスキーを「アイランズ」といいます。 キャンベルタウンというのは、スコットランドのある島の西の外れに位置する都市です。 現在この地域で稼働している蒸留所はたったの3つ。 なぜ、たった3つの蒸留所しかないのに、別に区分けされるのか? それは、ここがかつては「世界のウイスキーの首都」と呼ばれるほどにウイスキーで繁栄していたからです。 日本でのウイスキーの創成期に活躍し、ニッカウヰスキーを起こした竹鶴正孝も、この地でウイスキー作りを学びました。 ところが、20世紀前半の大不況の影響で、30ヶ所以上もあった蒸留所は次々と閉鎖。 今世紀に至るまで生き延びたのが、今回取り上げるスプリングバンク蒸留所他、3つです。 残りの二つは、グレンガイル蒸留所とグレンスコシア蒸留所。 グレンガイルは「キルケラン」という銘柄を作っていますが、実は出資者がスプリングバンク。2000年にスプリングバンクを運営する会社が買収し、当時閉鎖されていた蒸留所を復活させました。 グレンスコシアはオーナーが頻繁に変わり、廃業と復活を繰り返しながら、何とか生き延びてきました。 *** さて、スプリングバンクに焦点を当てましょう。 ここまでの話で、スプリングバンク蒸留所が、スコットランドのキャンベルタウンにある蒸留所であるということは、お分かり頂けたかと思います。 また、キャンベルタウンの最盛期から今日まで、継続して安定的に運営しているという意味では、唯一の蒸留所と言って良いでしょう。 この苦難の歴史を力強く生きてきたスプリングバンク。 生き延びてきたには理由がもちろんあります。 ウイスキー愛好家から愛される確固としたポリシーを貫いてきたからです。 この蒸留所は、何百とあるスコットランド全体の蒸留所から見ても希少価値の高い特徴を持っています。 フロアモルティング、全工程の一貫生産、そして最古の家族経営。この3つを挙げます。 先ずは、全てのモルト(麦芽)がフロアモルティング。これはスコットランド唯一です。 フロアモルティングというのは、大麦を麦芽にする際の工程の一つですが、 大麦を床に敷き詰めて作業することから、こう呼ばれます。 昔は全ての蒸留所がフロアモルティングでしたが、人力による手作業のため大変。 1960年代にほとんどが機械化されてしまいました。 今でも部分的に行っている蒸留所はいくつかありますが、全てのモルトをフロアモルティングで生産しているのはスプリングバンクだけです。 スプリングバンクも1960年に一度はフロアモルティングを止めましたが、1992年に再開した経緯があります。 二つ目は、一貫生産。大麦の栽培からボトリングまでの全ての工程を自社で行います。 原料となるモルト(麦芽)や、ボトリングは専門業者に任せることが多い中で、 最初から最後まで全て自前で行うというのは珍しいです。 三つめは、家族経営で独立して運営してきてきた蒸留所としては最古であること。 設立は1828年で、現在のオーナーは創業者から数えて5代目になります。 このスプリングバンク蒸留所が製造するのは3つのブランドがあります。 まずは、蒸留所の名を冠した、「スプリングバンク」。 2回半蒸留という特色があります。 2回半というのは、最初の蒸留で得られたローワイン(初留液)の半分を再度蒸留させることからこう言われます。 そして、「ロングロウ」 こちらは一般的な2回蒸留ですが、モルトがピート焚きなので、ピートが強いです。 最後に、「ヘーゼルバーン」 アイリッシュ式の3回蒸留。ピートは使いません。因みに、竹鶴正孝が実習したのが、このヘーゼルバーン蒸留所です。 さて、まず試したのは「スプリングバンク12年」。 […]

【千葉】BAR ALBA(II)(千葉)

千葉方面に用事があり、その帰りに再び先日訪問した千葉駅西口のバーALBAさんを訪問しました。 店名の「ALBA」という名前であるが、オーナーに由来をお伺いしたところ現地の言葉で「スコットランド」という意味らしいです。因みに大昔(といっても6世紀くらい)にはスコットランドに住んでいたピクト人が建国したアルバ王国というのがあったそうです。日本でいうところの「大和(やまと)」とか、そういう感じなのでしょうか。 JAPANという名前も、もとを辿ればマルコポーロが指した黄金の国「ジパング」が由来というから、結構勝手なものですが。しかし、そんな勝手につけられた名前になぜか愛着を感じてしまうから面白いモノです。 さて、前回ここを来訪したときに頂いた格調高き王室御用達のブレンドスコッチ、「ロイヤルハウスホールド」。このウイスキーのストーリーを少し復習しておきたいと思います。 このウイスキーと英王室の関係は100年以上前に遡り、時は1897年。 「当時自社ブランドが英国下院の公式ウイスキーにもなっていたジェームズ・ブキャナン社が、英国王室によって皇太子(後のエドワード7世)専用のブレンデッド・スコッチウイスキーを造るよう、勅命を受けたことに由来」。 要は英王室のご用命で特別に作られたブレンドウイスキーになります。 繰り返しになりますがこのウイスキーが飲めるのは、イギリス以外では、日本だけなのです。 イギリスでさえ特別な場所に行かないと買えないそうなので、町の酒屋さんでも(値段はともかく)普通に買えて、家で飲めますというのは、素晴らしいことです。 なぜ日本で飲めるのか?という話ですが、昭和天皇が皇太子時代にイギリスを訪問された際、英王室からこのブレンドを授かり、特別な許可を経て日本でも楽しめるようになったからだそうです。 今回ALBAさんを再訪したのは、このロイヤルハウスホールドのキーモルトである「ダルウィニー」を飲むためでした。キーモルトというのは、ブレンドウイスキーにおいて味の中核を為すウイスキー原酒のことです。 そんな訳で、開口一番「ダルウィニー(15年)」を注文しました。 香りは確かにロイヤルハウスホールドと同じような感じもするかなあ、と思いましたがテイスティングしてみてちょっとビックリです。 丸みのある味を想像していましたが、シャープですっきりした感じです。あまりフルーティとか、まろやかとか、そういう感じではありません。 そこで、蒸留所について考えてみました。ダルウィニーはスコットランド北部にあり、いわゆるハイランズという分類に分けられます。 蒸留所はスコットランドの蒸留所の中でも最も高い場所にあり(とは言っても300mそこそこですが)、年間を通じた気温がイギリス国内で最も低い所として知られています。 ということは?味にどのような影響があるのでしょうか。 通常ウイスキーは貯蔵庫で熟成する際に、温度の変化により樽が膨張と収縮を繰り返し、中のウイスキーも「呼吸」をします。 気温がずっと低いということは、呼吸が静かでゆっくりと熟成することを意味します。 比較的温度の高い条件で熟成をしたりすると樽感が良く出る反面、味わいが結構丸みを帯びることがありますが、低温熟成というような感じのため蒸留した後のスピリッツの感じが生きているような気がしました。生半可な知識の中でただの想像に過ぎませんが、こうしたいろんなことを考えながら飲むのも楽しみの一つです。 ロイヤルハウスホールドには、モルトとグレーンの原酒が45種類も使用されています。 キーモルトのダルウィニーの静かな佇まいを下地として、様々なウイスキーの調和により独特な柔らかさが作り出されているのだと思います。 以上が、ロイヤルハウスホールドと、そのキーモルトであるダルウィニーをテイスティングした上での感想です。 お次は何を頼もうかということで、棚をチラチラ見ていると隅の方に面白そうな銘柄を発見。「ウルフバーン」とあります。モノクロのラベルに動物の絵が。ウルフ(狼)なのでしょうか。 ウルフバーン蒸留所が出来たのは今世紀。2012年12月に誕生しました。 場所はスコットランドの最北端、ケイスネス州にあります。 2013年から稼働を始めたこの蒸留所が、スコッチの規則である「熟成3年」の時を経て、出荷を始めたのが2016年。 従って、まだまだ熟成年度が若いボトルしか登場していません。 今回トライしたボトルもいわゆるノンエイジ、熟成年数の表記が無いものです。 テイスティングして、こちらも驚きです。 とても透き通るような感覚です。なんというか、本当に何も無い皿のような感じです。 先のダルウィニーもそうですが、いわゆるスコットランドの北部地域はハイランズと言われます。 スペイサイド地区がフルーティさ、芳醇さを特徴とするのに対して、ハイランズ系はウイスキーの純朴な味を極めているような感じがあります。 さて、この新設のウルフバーン蒸留所ですが、設立に至る経緯についても述べておきたいと思います。 先ず「ウルフバーン」という名前は、1821年~1877年の間、この地で約50年間創業した蒸留所の名前からとっています。 設立者はアンドリュー・トンプソン氏で、ウルフバーンのあるケイスネス州の出身。 これだけだと、どこか別の蒸留所で経験を積んだ後に故郷で操業したのだろう、と推測してしまいそうですが、前職はかなり異色の経歴の持ち主です。 なんと元軍人。英海軍に7年間勤務し、アフガニスタンやイラクなどにも派遣された経験があるようです。 その後は南アフリカに移住し、通信関係のビジネスを起業しバリバリのビジネスマンとして活動。 まるで、スーパーマンのような人です。 そんな彼ですが、休みも十分に取れず人間らしい生活ができない事に疑問を感じたとのこと。 また、さびれゆく故郷を目の当たりにしながら、考え始めました。 「この土地で事業を始めることで雇用を生み、地域の活性化に役立ちたい」。 そんな訳で、図書館でウイスキーの事を勉強しながら、事業で稼いだ資金を投じて、まるっきり一から作られたのがこの蒸留所です。 この蒸留所の製法的なこだわりも面白いです。 これだけビジネスをした彼なら、最新鋭の設備を導入した現代的な作り方をするかと思いきや、こだわったのはあくまで「昔のやり方」。 そうです、かつて19世紀に操業し、廃業してしまったあの当時の製法。 「デジタル時代だからこそ、徹底してアナログでいることが強みを持つ」という考え方です。 しかも、雇うのは円熟したベテランではなく、あくまでまだ成長過程の現役組。 若い蒸留所の活力を生かすためには、若い力が必要だと考えているようです。 ここまで蒸留所の設立の経緯を振り帰ってみました。他にもネットで探せばいろんな記事がありますが、詳しく知りたい方は など参考ください。 改めて、このウイスキーの透き通るような味を考えたときに、これは新たな始まりの味なのだと思いました。 ウイスキーが熟成を得て本来の旨さを持ち始めるには10年以上の歳月が必要です。 まだまだ若い蒸留所と、若い年数のボトルしかありませんが、今後蒸留所がどのような進化を遂げていくのか、ウイスキーの味がどのような深みを持っていくのか、非常に楽しみです。 […]

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