ウイスキーと大麦畑

【記事】「テロワール」を求めて

ウイスキー作りにおいて、「テロワール」の価値観が見直されている。「テロワール」というのは簡単に言うと、その土地の「風土」みたいなもので、フランス語の「terre(土地)」から派生したと言葉。良く知られているのはワイン作りにおける「テロワール」で、ブドウが栽培される土地の場所、土壌、気候などの自然環境の違いに起因する味わいの違いで、隣同士の畑で同じブドウを育てても、「テロワール」の違いから全く異なる味わいのワインが出来上がることもあるそう。 お酒の原料となる材料(ワインの場合はブドウ)が比較的大きな役割を果たす醸造酒に対して、それをさらに蒸留してアルコール分を抽出したウイスキーなどの蒸留酒は、原料の役割というものはそれほど大きく取り上げられることは無かったように思う。ウイスキーの場合、原料は「大麦」「水」「酵母」の3つであるが、アルコールを作る元となる糖分を得る「大麦」について、その味わいが最終製品であるウイスキーにどのような影響を与えるか?というのは、あまり考えられてこなかった。それよりは、実際の味わいを決定づける要素は長期間熟成する際に使用する「樽」の特徴や組み合わせなどであり、加えて「発酵」や「蒸留」などの工程で得られるアルコールの性質の違いなどが、ウイスキーの味わいの根幹を作るものだというのが一般的な考え方のように思う。 また、もし「テロワール」という要素がウイスキー作りにあるとするならば、それは蒸留所の立地する場所の風土であり、特に、熟成する際の貯蔵庫がある「場所」が周囲の環境から与えられる影響の方かもしれない。例えば、海に面した貯蔵庫で保管されるウイスキーであれば、熟成期間中に潮気が中身に吸収される、というようなことである。 ところが、最近になって新しく出来たスコッチウイスキーの蒸留所の中で、ウイスキー作りのベースとなる「大麦」の役割を改めて見直そうという動きが出てきている。その動きがどのようなものかについて、次の3つのトピックを中心に少しご紹介したい。 ・FIELD TO BOTTLE (畑の味をボトルに) at Waterford スコットランド・アイラ島で閉鎖されていたブルックラディ蒸留所を見事に復活させたマーク・レイニア氏が、アイルランドで新たに立ち上げたスコッチウイスキーの蒸留所「ウォーターフォード」。レイニア氏が新たな挑戦の場としてアイルランドを選んだ理由として、ブルックラディ時代に同蒸留所で長年に製造現場で勤務したダンカン・マクギリブレイ氏から、彼の見た最高の大麦がアイルランド産であったことだと語っている。その彼がギネスのビール工場を改装して作り上げたウォーターフォードが追及するのが「農場」のテロワール。すなわち、ワイン作りにおいて隣同士の農園のブドウで味が違うのと同じように、ウイスキー作りにおいても「畑」の違いを表現するという「試み」だ。(もちろん、これを「試み」というのは、一般的にウイスキーの世界では、畑の違いを最終製品のボトルに落とし込むということは不可能だと考えられているからに他ならない) ・SINGLE MALT IN U.S.A. (シングルモルトを、アメリカで) at Westland バーボンのアメリカでシングルモルトウイスキーに挑戦する、西海岸のウエストランド蒸留所。シングルモルトの本場であるスコットランドから遠く離れたこの地で、「パシフィック・ノースウエスト」(PACIFIC NORTHWEST)のテロワールを前面に押し出したウイスキー作りを目指している。創業したマット・ホフマン氏の語るところでは、土地の風土や自然環境だけにとどまらず、起業家精神溢れる米西海岸の文化的な価値も織り交ぜることで、ウイスキー作りにも革新をもたらそうとしている。それは地元のワシントン州の「大麦」を使う事だけにとどまらない。地元産のピートや、ギャリアナオークという稀少なオーク材を活用した熟成樽の活用など、シングルモルトの作り方を忠実に再現しながらも地元の資源を最大限に活かすことで自分たちの個性を表現しようとしている。蒸留所の各工程で使う工程にも、地元で有名なクラフトビールの機器類を参考にしたものも取り入れており、スコットランドの蒸留所とは様相を異にする。蒸留所の立地と周辺環境で得られるものを取り入れて、その地に根差す「テロワール」を探求している。 ・ROOT IN COMMUNITUY (コミュニティに根差して)at Bruichladdich 「コミュニティ」の大切さを語るのはブルックラディの若き製造責任者アラン・ローガン氏。同蒸留所はウイスキーの本場スコットランドのアイラ島にあるクラフトディスティラリーだ。この小さな辺境の島は、独特なピートの香りとスモークな味わいで有名なウイスキーを作る老舗の蒸留所が数多くあることで知られる。2001年にブルックラディが復活した時に、ローガン氏は蒸溜所で見習いとして働き始め、ジム・マッキュアン氏やダンカン・マクギリブレイ氏という業界の大ベテランの薫陶を受けた。彼の父はラフロイグで働いており、祖父や叔父といった他の家族も皆が蒸留所に関係する仕事をする中で生まれ育った生粋のアイラっ子だ。彼が大切だと説くのは蒸留所の、そのコミュニティにおける存在意義である。ブルックラディも原料のテロワールを重視する蒸留所として知られるが、その意義は良いウイスキーを作るというだけにとどまらない。テロワール・ウイスキーを島で作ることで、蒸留所が雇用を生むだけでなく、原料を提供する農家はウイスキーを作るための大麦を作る仕事を得るし、ボトリングしたウイスキーを運ぶ必要もでてくるなど経済的な効果が立地するコミュニティに波及する。合理化を進めて利潤を目指す考え方もあるが、彼は否定的だ。あくまで立地するコミュニティとの共存共栄をベースに考え、その土地で将来にわたってビジネスが持続可能なように計画を練るのだという。 このように彼らは別々の場所においてそれぞれのアプローチで自らが運営に携わる蒸留所のテロワールを追及している。その意義は深い。それは単に美味しいウイスキーを作るということにはとどまらない。原料の大麦が育つ「畑」や、周辺環境、さらには蒸留所が立地するコミュニティとの共存など、その土地(や人)との対話や関係作りを構築することでウイスキー作りの新たな境地を開こうとしているのだ。このような取り組みは上に紹介した蒸留所だけにとどまらない。現在、スコットランドだけではなく世界的に広がりを見せているモルトウイスキーの現場では、各地でこうしたその地の「テロワール」探しが進化を遂げている。もしこうした蒸留所のウイスキーに出会える機会があるならば、グラスの中に注がれた液体の中に、そのテロワールを感じてほしい。 画像クリックでトップページに戻ります。

【兵庫】バー・メインモルト(神戸)

ハイカラの街、神戸に立ち寄りました。本当はバー巡りをする予定も無かったのですが、小1時間ほど時間が空いたので、迷わずこちらのお店に直行しました。「バー・メインモルト」。やはり神戸でウイスキー・バーといえばココでは無いでしょうか。 さて、店の前まで来て少し立ち止まりました。昇り階段の上を指す看板が表に出ています。前回に初めて来たときは地下に下りた記憶があったので、GoogleMapで検索するときに店の名前を間違ったかな?とも思ったのですが、アレコレ思案している時間も無かったので思い切って階段を上り、店の扉を開けました。最初は少し暗くて分かりにくかったのですが、店内をグルっと見て、店の感じに少し懐かしい感じがよみがえりました。店の入り口の方のカウンターに座りちょこっと座って、マスターのお顔を拝見して、またその後ろの棚にずらっと並んでいるアイリッシュの山を見て、「あ、ココだ!」と確信に変わりました。 アイリッシュがズラリの図 経緯を伺ったところでは、数か月前くらいにこちらの店舗に移転をされたとのこと。出迎えてくれたアイリッシュは前回来たときはジェムソン軍団でしたが、今回はティーリングでした。アイリッシュがこれほどまでに揃っているウイスキーのバーは、自分は正直ここの他に知らないです。アイリッシュは銘柄もスコッチに比べるとかなり限られるので、棚に10本くらい見かけたら「多い方」ではないでしょうか?こちらでは、アイリッシュの一つの銘柄だけで優に10本以上はあります。マスターのアイリッシュ愛ゆえなんだろうと思います。 ところで、「アイリッシュは何ぞや?」という事について一応、簡単に話をしておきます。ウイスキーの生産地と言えば、今でこそ「スコットランド」のイメージが強いと思いますが、ずっと昔(18~19世紀ごろ)は「アイルランド」でした。「アイリッシュ」というのは、アイルランドで作られるウイスキーのことですが、製造方法などにも少しスコッチと違う特徴があります。例えば、原料にモルト(発芽乾燥させた大麦麦芽)だけでなく、未発芽のものを加えたり、乾燥にピートを焚かなかったり、蒸留を3回したり(スコッチは基本2回)等々。その結果どうなるか?という事なのですが、自分の感覚でいうと「まろやかで飲みごたえのあるウイスキー」になります。これはおおむね、アイリッシュであればどれも言えるのではないかなと思います。(*) *現在はピートを炊いたもの(⇒有名なもので「カネマラ」)や、製法はスコッチで原料をアイルランド産で作る蒸留所(⇒ウォーターフォード蒸留所)なども登場してきています。 お酒の質感も、なんとなくですが、スコッチを焼酎とすると、アイリッシュは日本酒(もしくは麦焼酎やコメ焼酎的なやさしい感じ)的な感じがします。とにかく、飲みやすい。ウイスキーなのにグビグビいけてしまいそうです。このマイルドで飲みやすさがとても魅力的なので、例えばウイスキー初めての方にはアイリッシュはとてもお勧めです。(ですがアルコール度数は40度以上であることを忘れてはいけません!(笑)) アイリッシュの銘柄についてですが、有名なもので二つ。「ジェムソン(JAMESON)」と「ブラックブッシュ(BLACKBUSH)」。両方ともブレンドウイスキーです。まろやなか口当たりが特徴で、この二つは割とどこのバーにも置いてある基本ラインアップの中になると思います。「ジェムソン」はアイルランド南部のコーク県にあるミドルトン(Midleton)蒸留所で作られておりポットスチル式とグレーンをブレンド。アイリッシュウイスキーで最も販売量の多い銘柄。「ブラックブッシュ」は北アイルランドのオールド・ブッシュミルズ蒸留所にて製造。特にアイルランドの伝統的な製法である「3回蒸留」で有名、「ブッシュミルズ10年」は3回蒸留で100%モルト使用のアイリッシュ・シングルモルトウイスキーとして有名です。その他、最近になって新しい蒸留所も次々と登場しています。ピートウイスキーのカネマラ(Connemara)等で知られるクーリー蒸留所(現在はビームサントリー社傘下)の他、キルべガン(Kilbeggan)蒸留所、ティーリング(Teeling)蒸留所などです。アイルランドの新興蒸留所の銘柄はなかなかお目にかかることが無い印象ですが、こちらのモルトバーでは有名どころでも蒸留年やウッドフィニッシュの違いなどによる様々なボトルや、新興蒸留所からリリースされた新たらしいウイスキーの多くが見事なほどに揃っています。 さて、アイリッシュについての教科書的な話はこれくらいにしておいて、バーに戻ります。時間も限られる中なのでパッと思いついたタラモアデューをソーダ割で頂いてから、棚やカウンターのボトルをじっくり観察。それにしても色々と置いてあります。最近出た国内のクラフト蒸留所、厚岸の「寒露」や、静岡ガイアフローの「プロローグK」なんかもさりげなくカウンターに置かれていると思えば、レッドブレストの21年やティーリングの29年なんていうボトルも!(いったいいくらするんだ!泣)せっかく神戸まで来たのにブレンドのハイボールで満足して帰る訳にはいかない、けど棚のボトルがいくらするのかも分からない、こういう時にどうするか?はい。こういう場合は、「素直にマスターに予算を伝えてアレンジしてもらう」が正解です。そんなワケで出てきたのが、ティーリングのシングルカスク。 今宵の一杯をストレートにて ティーリングは2015年にアイルランドの首都ダブリンに125年ぶりに開設した新興蒸留所のひとつ。1985年にクーリー蒸留所を立ち上げたジョン・ティーリングが、2012年に蒸留所を当時のビーム社(現ビーム・サントリー社)に売却、その時得た資金を元手に立ち上げたとそうです。ボトルには2015年蒸留の2020年瓶詰とありますから、本当に直近のリリース品という訳。熟成はバーボン樽だったかと思いますが、アイリッシュらしいまろやかな味わいの中に、熟成した果物や香辛料的なピリッとした感じもします。5年という熟成期間の割には味わいに奥行きがあります。余韻も優しく飲みごたえ最高です。さすがの一品に大満足。 こうした落ち着いて飲めるバーに来て毎度感じることですが、その場の雰囲気に浸っているだけでもワクワク感があります。隣の席では(ウイスキーの)業界関係者らしき方がお二人、マスターとなにやらボソボソ話をしています。奥の席に座った会社帰りと思しき背広組の3方は仲間内で棚のボトルを見ながら談義しています。ウイスキーのバーは本当に宇宙です。ココに来れば、ただのウイスキー好きのみならず、業界の関係者や本物のコレクターなど様々な方が集結してきます。ウイスキーは趣向品なので、やはり来る人もそれなりの構えの方が多い気がしますし、オーセンティク系のバーであればお店の方も来られる客に応じてきっちりとした品ぞろえと対応で迎えてくれます。こうした循環で、お店の雰囲気が醸成されていくような感じです。こちらのような古い名門バーであれば、お店に入った時に何かやはり独特のオーラのようなものも感じます。少しばかりのチャージ料を払えばそこに出入りできて、その素敵な空間を共に楽しむことが出来る。更には棚に置かれている貴重なウイスキーをいただけるという訳なので、よくよく考えてみると、こんな嬉しいことは無いのかなと思います。今回は時間も無くバタバタでしたが、次回はゆっくりと来たいですね。時間と心にも余裕があってこそ、十分に味わえるものでもあるのですから。 ACCESS:(神戸)三宮駅を山側に出て徒歩5分くらいです。

【山梨】BAR LIBERTA(大月)

アメリカンクラシックな感じ 山梨県というのは都心から近くにありながらも、あまり訪問する機会がないんですよね。ところが、今回たまたま富士吉田に用事があったため、電車と車を使い久々にお邪魔しました。やっぱりこの季節なので、日が暮れると都心に比べて冬が近い感じ。今回、途中下車したのが中央線の大月駅。(この駅は何度も特急で通り過ぎてますが、下車するのは初)。来てみて改めて思ったのですが、特急だと早いんですね。八王子から30分、新宿から1時間ちょい。特急なら通勤圏でもいけそうですね。 とはいっても、大月市の人口は2万人弱。特急も半分は通過するので、そこまで人の往来がある感じでもありません。電車も特急含めて1時間に4・5本的な感じです。駅を降りると昔の街道らしき旧道が走っていています。居酒屋さんで「ほうとう」食べて腹ごしらえした後に、探索していると今宵のお店を発見しました。(まだ、開店準備中でマスターさんをバタバタさせてしまいました。すみません!) オシャレなグラス。スワリングに失敗しないw 席について棚のラインアップをざっと見た感じは普通のバーという感じでした。ところがここのバーは少しタダモノではないことが徐々に明らかになっていきます。バーは開店してから5、6年くらいだそうです。少し近辺を散策した感じから、やはり(街に)元気が無いんですかね~、というような話をしていたら、最近になっていくつかお酒に特化したお店ができているんですよ!とのこと。山梨は地元の甲州ワインが有名ではありますが、日本酒や焼酎に特化した居酒屋さんとかもあるそうです。やはり訪問した時間が早すぎたのかな?なんてことを思いながら、とりあえずピリッとするためにラフロイグ(セレクト)を注文。ドライなスモーキーさを味わいながら、ど真ん中に鎮座していたマッカラン(12年)へ。都内だとちょっと引け目が出て頼むことが億劫なのですが、ワンショット1000円でした。ありがたや。やはり味はさすがです。スペイサイドのメジャー所のラインアップでいくと、やはり一つ抜けてる感ありますね。 色々と話を伺いながら楽しんでましたが、どうもマスターさんはコレクターでもあるようです。都心にも買い付けに行かれたり、あと、すごいと思ったのはオールドボトルも収集されているようなのです。オールドボトルって通常は店とかで買えるものでは無いので、一般の人が簡単に手を出せるものではないと思います。やはり何らかのコネクションなりが無いと、入手するのは難しい。でも、お店に置いてあるものを「頼む」ことはできる!ってな訳で、この怪しげなタラモアをワンショット頼んでみました。(因みに価格も凄く良心的でした。もちろん、事前に確認しました。汗) 一口含んだ感想ですが、正直自分の知っているタラモアではすでにないです。強いて言うならカナディアンのライウイスキーを熟成しちゃった感じ。スコッチでこんな味は初めてです。(この瓶の残り分だけってこと考えると、また行きたい!って帰り道にずっと反芻しました) 最後のシメはボウモアのナンバーワン。この「ナンバーワン」というのは、ボウモア蒸留所の最古の貯蔵庫「第一貯蔵庫」(Vault No.1)が由来。建屋が海抜0m以下にあることでも有名ですが、アイラ3姉妹に比べてそこまで磯の香があるというワケでもなく、アイラモルトの中でボウモアはマイルドな位置づけ。その中で、ナンバーワンはしっかりと味がまとまっている印象です。マスターから、これをシメにするならタラモアのオールドにしておけばよかったですね!と言われたのですが、そこでハッとしました。そういえば(というのも失礼ですが!)山梨と言えばサントリー白州でした!お店にもちゃんとおいてありましたが、白州の地元でも入手困難だそうで、たまに白州工場の方がこられると「何とかしてくださいよ~」ってお願いしてるそうです。いや、これは本当に地元の貴重な「資源」だと思うし、ぜひとも地元の方にその魅力が広まると良いなと思います。笑

【新潟】Caf’e Bar K’s(直江津)

新潟県直江津市の駅近くにあるCafe Bar K's(ケーズ)を訪問しました。カジュアル系のスタイルですが、カウンターでモルトウイスキーを一人で楽しむこともできるし、テーブル席もあるのでカップルやグループでも大丈夫です。店内は割と広く、肩ひじ張らない雰囲気。でも、モルトウイスキーのセレクションもオフィシャルを中心にきっちりとありました。 駅近のカジュアル系バー 「直江津」と聞いてパッと来る人は、たぶん地元の人か旅好きの人では無いでしょうか?今は北陸新幹線という大動脈が出来たためかつてのような面影はありませんが、この直江津というのは北陸本線と信越本線が交差する鉄道交通の要所でした。現在は、北陸本線は第三セクターに移管され、(群馬県高崎と新潟を結んだ)信越本線も新潟側はこの直江津が終着駅となり、長野方面は同様に第三セクターの運営となっています。 着いたときはどっぷり更けてた汗 今回この駅にフラッと立ち寄って街を探索してみましたが、とても重厚感のある歴史を感じある街の趣がありました。何と言っても名所は「五智国分寺」ではないでしょうか。「国分寺」というのは、いつしか学校の歴史の授業で習ったはずです。「奈良時代に聖武天皇が仏教による国家鎮護のために各地に建立した寺院」。その越後(新潟県)の国の国分寺がこの五智国分寺というワケです。 さて、こういった街の中ですが、駅から少し歩いた神社(八坂神社)の近くに歓楽街があり(なんと境内の敷地内にスナックが!)、その裏に今日お目当てのバーがありました。ちょうどお店が開くところでマスターが玄関で準備をされてました。ということで、連れられて建物の2階のお店に案内頂きました。 入ってすぐのカウンターの端っこに陣取り、ざっと棚に陳列してあるボトルを眺めます。そこで、ふと目が留まったのがコレ。JURAの基本ラインアップの中で、ライトピートが特徴のSUPERSTITION(迷信)だけがまだ飲んだことがありませんでした。少し口に含んでの印象は、心地よいピート感と甘さ、そしてジュラらしい穏やかな味わい。割と控えめにまとまっている感じですが、とても個性的な味です。 JURA SUPERSTITION PORT ASKAIG 次に頼んだのがこちら。アイラの新生「ポートアスケイグ」。こちらは少し由来を説明します。イギリスにELIXIR DISTILLERSという有名なウイスキー専門業者があります。経営するのはスキンダー&ラジ・シン兄弟というインド系英国人で、ロンドンなどにあるWHISKY EXCHANGEというウイスキー専門のリカーショップが良く知られています。(この屋号は元々兄弟の両親が経営していた酒屋さんの名前に由来)ウイスキーのネット商売で成功し、また希少性の高いウイスキーのコレクションにも定評があります。そしてELIXIR DISTILLERSがオリジナルでリリースしているボトルがこの「ポートアスケイグ」シリーズ、こちらはその16年です。中身は公開されてませんが、パッと飲んですごく分かりやすいアイラピートが!ネットみるとカリラかライフロイグのようですが、自分はライフロイグに1票でしょうか。 最後にグレンモーレンジ。アイラとアイランズのピートを続けたので、最後に口直しと想い選びました。グレンモーレンジは、「ハイランズ」ですが、味わい的には中性的な印象があります。頂いたのは「ネクタドール」、フランスの超甘口の貴腐ワイン「ソーテルヌワイン」樽で後熟したのが特徴。ですが、味わいはそこまで甘口というほどでもなく、程よくマイルドな味わい。グレンモーレンジは樽にこだわりがあることでも知られ、ボディの「滑らかさ」が特徴と言われます。ネクタドールも基本のベースは、マイルドで滑らかにまとまっている感じがしました。 開店直後で、こういった時節柄ということもあり、1時間強滞在しましたが、お客さんは自分一人だけでした。お話を伺っていると常連の方には「公務員」の方も多いらしく、そうした方がめっきり来られなくなったとのこと。改めてサラリーマンというのは気楽な身分だと痛感。地方のバーの良いところは、やっぱりラインアップがベーシック中心で、あとはオーナーの個性で趣向や「変わり種」が少し置いてあること。沢山ずらりとボトルが並んでいるのを見るのも壮観ではありますが、こじんまりとしたところで落ち着いてじっくりと何かテーマを決めて飲む、というのも十分に楽しめます。 最後にこちらのバーの所在をご紹介しておきます。JRの直江津駅を北口に出て歩いてすぐです。夜の8時から開いてました。マスターも気さくな方。他に従業員の方もいるようですが、自分が訪問したときは生憎不在でマスターお一人でした。店内も広めで、落ち着いた雰囲気で楽しめます。

【特派員投稿】蒸溜所ってどんなとこ?

ウイスキーを初めて飲んだのはじつはいろんな事がキッカケだったりするけれど ウイスキーの世界に完全に惹きこまれたのはあの時、白州の蒸溜所を訪れたからだとはっきり言える。 ちょうど今頃の秋晴れの日に穏やかな木漏れ日と鳥のさえずりがやけに印象的だった。あれから4年も経っていて自然と忘れている出来事も多いのに、どうしてかその日のことは忘れない。   本当に美味しいウイスキーだった。 だから、そんな私にとってウイスキーの蒸溜所を訪れることは凄く特別なことだけれどこれを読む皆さんにとっては、どうなのだろう。 酒造りは基本的に風土を重視するなどから蒸溜所の多くは自然の奥地にあり、わざわざそこへ足を運ぶほどではないかもしれない。その労力と移動のお金をかけるくらいなら近場のBarや宅飲みで….そう考える方もきっといると思う。 でも あなたがもし、今まで飲んだウイスキーやその他お酒の中で感動!と言わずとも「あれ?もしやこのお酒…」「何か美味しいかも」という覚えが少しでもあるのなら 蒸溜所に行くことは必ずその人生を豊かにする。 決して難しい知識なんて必要ない。"蒸溜所を訪れること"が馴染みあるお酒の味を何倍も美味しくさせる。 今回はこれについて話をしていこうと思う。 蒸溜所の魅力について・五感で楽しめる・貯蔵庫で眠る熟成樽・お酒で繋がる人との出会い・蒸溜所限定ウイスキー ・五感で楽しめる 今回この記事を書くにあたって、自身のTwitterでも"蒸溜所を訪れる醍醐味"について伺ったところその土地の「風土」だと言う意見も多かった。 蒸溜所に着いた瞬間の麦の香り。モルト(麦芽)は実際、一粒かじってみると口いっぱいに広がる香ばしさと少し甘い味。発酵槽で酵母がブクブク発酵する様子や蒸溜しているスチルによる室内の熱気。 お酒の知識だけならバーテンダーさんから話を聞くこともできるが、馴染みのお酒がどう生まれるのか、その過程をこの目で見るか否かではやはり全然違う。 できるだけ蒸溜所の様子を写真を通してお伝えしたいが、写真からでは絶対伝えきれない世界観がそこにはある。 ・貯蔵庫で眠る熟成樽 蒸溜所ツアーの終盤で最後の製造工程として案内されるのが貯蔵庫。ここは、本当に圧巻だ。静寂で仄暗い、湿った木や苔の香りがする空間で熟成の樽が何年、何十年と時を刻んでいる。 ただ目の目にするだけでも圧倒されるが貯蔵庫については、中でも強く印象に残っている出来事がある。 それは以前、スコットランドにあるグレンファークラスの蒸溜所を訪れた時にツアー中、貯蔵庫でウイスキーをサンプリングしている現場に偶然、立ち合ったことがあり その時にスタッフが、サンプリングしていた1974年のウイスキーを贅沢にも、私の掌に注いでくれたのだ。こんな風にウイスキーを直接、掌で掬うように飲むのは後にも先にも、この時だけだと思うが私にとってこの出来事は本当に特別だった。 また蒸溜所によっては貯蔵庫の樽からウイスキーを自ら瓶詰めし持ち帰りができたり、樽出しのウイスキーをそのままテイスティングをするツアーなどが開催されているのでおすすめ。 ・お酒で繋がる人との出会い 蒸溜所のスタッフや製造に携わる職人さんから直接、話を伺えるのも蒸溜所を訪れる魅力の1つである。 先ほど話したグレンファークラス蒸溜所での出来事は、スタッフさんにとってはちょっとした"ノリ"だったかもしれない。だがこんな突然のサプライズも、スタッフさんとのふれあいも正直言って本当に嬉しい。 以前、英語が全く自信のなかった私はスコットランドの蒸溜所スタッフの方に予め用意したスケッチブックを持って行き筆談でこんな質問したことがある。 "もし(あなたが作る)ウイスキーがあなたの特別なベストフレンドだったとしたらあなたは、知人にその親友を何と紹介するか?" 今でも、おかしな質問だったとは思う。…

【東京】バー恵(II)(中野)

中野駅から歩いてすぐのバーBAR恵さん、こじんまりとした店内の落ち着いた雰囲気の中で、美味しいウイスキーが楽しめる隠れ家的な場所。個人的には「ゴールデン街の飛び地」の位置づけです。笑 また、お邪魔してしまいました。何か惹かれるものがあるんだと思います。バー巡りのブログで同じ店の2度目のレポートをするのは、近所の行きつけのお店を除いてはた初めてです。それくらい個人的に好きなお店。店内はとカウンター席のみだけで、決して広くはありません。小さな箱の中に入った様な感じですが、雰囲気がとても良いです。新宿のゴールデン街とかによくあるような隠れ家的な雰囲気、加えてちょっぴりエレガントです。ここは、「大人の」ゴールデン街なのです。お店に入ってまず目を惹くのがこの灯り。手前と奥に二つあるんですけどオシャレで良いと思います。(いつもこの由来をお伺いしようと思っているのですが、毎回行く度に忘れてしまいます。)レトロチックというか、昭和の純喫茶のナイト版とでも申しましょうか。小さなお店の中で、煌々と光る行灯でございます。そして、なんといってもカウンターの中にいる方も素敵な方で、とても奥行のある方です。なので、本当に小さな空間ではあるのだけれども、場全体が和やかになって、心地よい空間を醸し出しているのだと思います。ところで、ここは「BAR」とある通りなんですが、どちからというと店内は居酒屋風ながらも、棚にあるウイスキーも凄いです。それもそのはずでなんとこの店はソサエティの会員であります。ですから、とっても良いお酒(ウイスキー)も飲めるのであります。 ウイスキーのモルトバーに行くと、棚に所狭しとずらりと並んだウイスキーのボトルの数に圧倒される事が多々あるかと思います。ここは、そういう点で心配ご無用。セレクションはミニマムです。最初にお伺いした時もそうでしたが、おススメのものがちょこっと並んでいる感じ。そして、お手元に並ぶのは非常にお手頃な感じです。これまたドンピシャですね、自分がいまハマっているキルホーマン(マキヤベイ)がど真ん中、そして隣にアラヒーと、ティスプーンのモルト?がありました。残念ながら、どれも今回は飲んでないのですが、とりあえず何を頼んで分からないときにはおススメから行くのが良いかもしれません。アラヒーは自分も気になりました。今回頂いたのは、ソサエティのこの2本。ベンリアック(だったかなあ、すみません、もしかしたら違ったかも)とリベット。ところで、「ソサエティ」について、一応補足しておきます。ソサエティは「ザ・スコッチモルトウイスキー・ソサエティ」(SMWS)のことで、スコットランドに本部があるウイスキー愛好家クラブのことです。(詳しくは同会HP→The Scotch Malt Whisky Society)ここの特別なボトルは会員でないと購入できない仕組みになっていいます。なので、バーでこのボトルを見かけたらとてもラッキーです。恵さんのウイスキーラインアップは初心者向けと、愛好家向けの両方に割とはっきりと対応しています。 ソサエティのウイスキーというのは、蒸留所本来の味を最も引き出したものと言えるかもしれません。ソサエティのエキスパートが蒸留所で厳選した樽を、加水せずにそのまま熟成させボトリングさせたものです。また、パッと見て、どこの蒸留所なのかも記載されていません。番号があるそうですが、先入観無く楽しんで欲しいという願いからだそうです。うちらは飲む前から「答え」を教えてもらっていたんですが、自分はグレンリベットに驚きました。グレンリベットは、グレンフィディックと並び最も良く販売されているスペイサイドのメジャーな蒸留所。自分も何度か飲んだことはあるんですが、全然印象が違いました。軽やかなフルーティーさが特徴とされるんですが、すごく味に深みを感じました。蒸留所の名前を教えてもらっていなかったら、たぶんどこのものかサッパリ分からなかったと思います。 さて、このウイスキーに合う突き出しは何かないかなあ、なんて思って訪ねてみたところ、「缶詰ありますよー」ってことで、オイスターを頼みました。これがまた非常にマッチングします。盛り付けも良いですね。たぶん、男同士とかで飲んでると、缶詰開けて割りばしでつつく感じになると思うんですがクラッカーとレモンがついて、雰囲気を盛り立てるお皿に乗っかってやってきました。ただの缶詰が、立派な缶詰に変身しました。(笑)というわけで、ソサエティのウイスキーと集合写真!とても良い眺めです。 オイスターの缶詰とクラッカー まったりとした時間を過ごしながらつくづく思いました。やはり、色々なアイテムが沢山揃っているのも楽しいのですが、実際のところ一回で楽しめる量っていうのは限りがあると思うんです。そういう意味で、ミニマリズム的な楽しみ方というか、選択肢が限られているからこそ、ひとつひとつを吟味する機会にもなるのかと思います。また、こちらは座席数もカウンターに8席ほど。色んな意味で「密な」空間を提供してくれます。(残念ながら今のご時世はあまり歓迎されないワードになってますけど、いつかまた復活するはずと信じてます!)こちらのバーの場所ですが、中央線の中野駅北口を出て5分ほど歩いたところにあります。詳しくはgoogle mapを確認してみてください。パッっと見、隠れスナック的な雰囲気でたぶん自分も一人だと扉開ける勇気はなかったかもしれません。以前にブログでも書いたんですが、こちらは別のお店の子の紹介で初めて門をくぐりました。中身はとても大人の空間で、自分も何度か来店させてもらいましたが、いつも落ち着いた空気が流れています。早めの時間帯にしか来たことが無いのですが、夜中とかになるとまた雰囲気が違うのかもしれません。いつか機会があれば、そういう時間帯にふらっと立ち寄ってみたいです。また、最後になりましたが、恵さんを紹介した子が一押ししていた「わさび漬け」のお酒も頂くことができました。わさびのピリッとした感じが、お酒と非常に相性良くマッチングしてました。ハイボールと抜群のコンビです。常に置いている訳では無いと思うんですが、おススメです。 ポタージュスープ ウイスキーとマリアージュのレベルが更に進化してました!(2021年12月再訪)

【香川】BAR タビ(弐)(高松)

先ずは香川県民の皆様に深くお詫び申し上げます。正直、甘く見ていました。 1件目に訪ねてみたシャムロックさんが開いてなかったので、google mapで再検索してふらっと寄ってみただけだったのですが、激しく期待を裏切られてしまった次第。その顛末を謹んでご報告申し上げます。 最近キルホーマンに魅せられていたので、とりあえずマキヤベイくらいが置いて有れば良いかな、むしろ置いてなくてもまあ仕方無いかな、なんて思いながら聞いて見だけなのですが、これはどういうことですか?!店の方が「ちょっとお待ちください!並べてみますので。」と言われてカウンターの前がこんな感じになりました。 キルホーマンがズラリ! 確か四国に行く飛行機に乗ったかと思ったのですが、もしかしてアイラ島に来ちゃいました?その割には1時間くらいしか乗ってなかったような気がするのですが、気のせいでしょうか?? 少し目も慣れてきたのでが、ちょっと待ってください!このバーはかなり「半端無いです」。 先ず、よく見たら目の前に石垣らしきものがあります。お聞きしたら、本物の石垣のようです!そして、江戸時代頃の棚を活用した改造シェルフ!前にも横にもリアレンジした骨董品、そしてその中にはリキュールやジンのボトルがお宝のようにズラリ。さらに、さらに!グラスやコーヒーメーカなどの備品や器具にもかなりこだわりがあるのが見て取れます。スゴイ!地方のバーで内装に凝った歴史を感じさせるオーセンティク・バーは結構あると思うのですが、ここは自分が今まで行った中でも一番「今風に」オシャレな感じ。 カウンター内 客層も面白いです。老若男女がいる感じです。カウンター側も女性が二人。実はこの日、カウンターは満員御礼でした。一人で来ている方は少なくて、自分ともう一人の男性の方以外はペアかカップルでした。あと、話を聞いている感じでは、そこまでウイスキー好きが集まるというよりかは、リキュール的なものを楽しみにくる方が多いように見受けました。お酒の楽しみ方は色々なので、自分も逆にジンやラム、メスカルといった他のお酒も少し勉強させてもらいました。 また、フードも充実しているようです。自分は頼んでいないのですが、「突き出し」(関西では「お通し」をこう言います)ででてきたのはミニクロワッサンに生ハムを載せたかわいらしいもの。ウイスキー専門バーだと、だいたいナッツとかの乾きモノくらいしか出て来ないので、これは新鮮です。地方のオーセンティックバーは、内装やフードなど初めての方にも楽しめる演出に凝っているところが多い気がします。都内とかは、専門で細分化され過ぎてしまっていて、分かっている方には天国でも、初めての方とかには少し難しいと思われる店も少なくありません。(もちろん地方にもそういった超マニアックのモルトバーもあります。実はこの香川県内にも「聖地」と呼ばれているところがあって、自分も一度だけ立ち寄らせて頂いたのですが、また自分が投稿するには恐れ多いのでまたの機会にします!) さて、バーに戻りましょう。先ずはキルホーマンとは何ぞや?というところを一応説明します。詳しくはホームページの蒸留所ページ(→キルホーマン蒸留所)を参照頂ければと思いますが、ここでは簡単に。キルホーマン蒸留所はアイラ島にある家族経営の小規模なクラフトディスティラリーです。その特色を一言でいうなら「モルト感(大麦)」。大地の蒸留所とでも良いでしょうか。アイラ島の他の蒸留所が海沿いに立地するのに対し、このキルホーマン蒸留所は内陸にあります。その意図するところはFARM DISTILLERY。要するにウイスキーの原料である大麦を自家栽培し、その大麦畑の中に蒸留所があるのです。この蒸留所を開設したのは、アンソニー・ウィルス氏。2005年の事で、アイラ島で新しく蒸留所が開設されたのは、なんと124年ぶりのことでした。 という訳で、このキルホーマンの特色は、なんといっても「モルト」だと個人的には思っています。もちろんアイラ独特のピート感もあるのですが、ラフロイグやアードベッグのような磯風のピートとは少し違うような気がします。やはりこれは内陸にあるので、潮風などの影響が少ないからなのかもしれません。因みにこのキルホーマンは大麦栽培からボトリングまでの全ての工程をワンストップで行っています。現在、ほとんどの蒸留所はモルトやボトリングなどの工程を外注に出して、発酵~貯蔵のメイン工程に特化している中でかなり珍しいと思います。要は100%テロワールといったところでしょうか。 という訳で、キルホーマンを飲むなら、自分が一番オススメするのは、100%自家栽培の大麦を使用した、「100%アイラ」(現状は、蒸留所で作る全ての大麦を賄うだけで生産できていない。将来的には全量を自家栽培にしたいようです)。ただし、今日は目の間にボトルを並べて頂いたので、そこから選んでみることにしました。先ずは、「LOCH GORM」(ロッホ・ゴルム)。キルホーマンのベーシックなラインアップの中で、最もシェリー感にあふれます。それもそのはず、熟成は100%オロロソ・シェリーです。バーボンが基調のキルホーマンにしてはかなり珍しいと言えるでしょう。 LOCH GORM 飲んでみての感想ですが、ボディのモルトにシェリー感が覆いかぶさっているような感じ。これまで飲んできたのでは確かに一番甘い。でも、個人的にはこの「覆いかぶさる」感が、要はうまくマリッジしてないように感じました。要は強烈なモルト感とシェリーがうまくマッチしてないのかなと。この辺は、個人の好みの範疇ですが、自分の正直な感想です。 という訳で、やっぱりバーボン熟成のものを頼みました。ヴィンテージ品のシングルカスクです。 Bourbon matured single cask (2011) 2011年蒸留の2018年ボトリング、なので7年熟成。50ppm。はい、案の定というか、めちゃストライクです!やっぱり、バーボン熟成がマッチしている気がしますね。次は、セカンドフィルのバーボンで10年以上熟成させたものとかを飲んでみたいなと思いました。アイラモルトは、アードベックやラフロイグだととにかく薬品のようなピートとスモーキーさがぶぁっとと口の中に広がるのですが、その代わりというか、あまりモルト感を感じにくいのかなと思います。キルホーマンは、ピートとモルトの両方のダブルパンチがさく裂します。これが爽快です。 さて、最後にちょっと口直し的に「ボウモア12年」を頼んでみました。近頃はコンビニとかでも小さな瓶に入ったのを見かけます。口に含んで思ったのですが、やはりかなりマイルドです。アイラ初心者向きですね。正直、どこでも目にするので頼んだ記憶が無かったのですが、実際にこうして飲んでみてコンビニやスーパーでも並んでいる理由が分かる気がします。アイラに抵抗感のある方や、ウイスキー初めての方でもトライできますね。逆にキルホーマンは、そういう意味ですと初心者の方にはパンチが強すぎるかもしれません。一発KOも有り得ます。(笑) Bowmore 12yo 蒸留所は、それぞれのこだわりで自らの味を作り出しています。伝統の味を守り続けるところもあるし、消費者目線で作るところもあるし、はたまた作り手のこだわりを前面に押し出すところもある。そういう意味では、キルホーマンは、キルホーマンですね。わが道を突き進む感じです。まだ若い蒸留所ですが、すでに様々なボトルをリリースしてきているようなので、これからもっと発見がありそうです。…

【埼玉】バー亀(久喜)

今回は仕事帰りに埼玉県の久喜のバーにお邪魔しました。 少し前まで栃木と勘違いしていましたが、久喜は埼玉県に位置するのですね。 先日、知人の方に体験談を話していて注意されました。 「久喜の人に怒られるよ!」。 大変申し訳ありません! とは言っても、土地勘の無い人には分かりづらいかもしれないので、 一応「どこか」というのを言葉で説明しておきます。 久喜は東北本線で大宮から宇都宮方向に電車で20分くらいのところです。 また久喜は東武伊勢崎線とも連絡をしていて、東武線の久喜駅のエキナカにはスタバや本屋さんがあったりします。 こうした地方のバーに行くというのは、行きつくまでに多少の不安があります。 特に今こういった状況なので、ホームページや連絡先が無いと、果たして本当に営業されているのか、わざわざ途中下車して開いてなかったらどうしよう、なんてことを考えたりします。 しかし、こういったこともある種の「ご縁」だと思い地図を頼りに目的地を目指してみました。 ところで今回辿り着いたバーは実際の目的地の手前にあり、間違って入ってしまったことを先に断っておきます。汗 (またまた申し訳ありません。) 途中のお店にウイスキーの空き箱のようなものが表のショーウィンドウに積んであるのを目撃。シングルモルトのウイスキーのバーがこんなところにも!と思い勇気を振り絞って店の扉を開けてみたのでした。 「勇気」といったのは、ちょっと店の感じから、本当にウイスキーのバーなのか?という確信が持てなかったのです。ですが、幸運なことにとても良いバーでしたので、今から体験談を語っていきたいと思います。 入ってすぐに感じた店の感じは、ちょっとした「秘密基地」みたいな感じでした。 すでに常連さんと思わしき方が座っていらしたので、とりあえずマスターに席を確認し、L字型のカウンターバーの真ん中くらいに腰をかけました。 何を頼もうか迷いましたが、目の前にあったアードベッグを一杯目にロックで。 Ardbeg “Wee Beastie” 5yo アイラのスモーキさを堪能したければ、ラフロイグかアードベック。(別にオクトモアとう化け物もあるのですが、こちらはとりあえず別枠にしておきます。興味のある方はぜひ試してみてください。) 酒屋さんで見かける定番は10年かなと思います。次に最近ではこのWee Beastieでしょうか。他にはAn Oa(アン・オー)、Uigeadail(ウーガダール)、Corryvreckan(コリーヴレッカン)などがあります。それぞれ熟成樽の違いで、アン・オーはシェリー・バーボン、新樽のトリプルカスクでバランス系、ウーガダールはシェリーで甘さとスモーク、コリーヴレッカンはフレンチオークでスパイシーさが特徴。この辺は専門の酒屋さんとかでないと見かけないかもしれません。 今回頂いたのは5年のWee Beastieと言われる銘柄。若さのあるスモーキーさかなと。なんというか瞬発系というのでしょうか。そういうイメージがあります。最初からガツンと来るような。スコットランドの言葉で「リトル・モンスター」という意味だそうで、小さいながらも手を付けられない強烈なインパクトを表現したようです。後で確認したオフィシャルページにも「ストレート」がオススメと書いてありましたが、初めての一杯でついついロックにしてしまいました。それでも味はアードベッグらしさが十分に伝わってきました。アードベッグのラインアップは全体的に熟成年数が若い印象ですが、これは「5年」。たったの「5年」でこれだけの爆発力が出るとは驚きです。次回はぜひストレートでも試してみたいと思いました。 さて、次に気になったのが同じく手元に並べてあった「アラン」のピート。…

【栃木】bar as ever(小山)

今回の訪問先は栃木県の小山市。仕事帰りに足を伸ばしてみました。先日訪れた足利のバーのマスター曰く、この小山が今は栃木県の中では「熱い」(実質的に経済的にも工場誘致などに成功し、人口も増加傾向なようです)とのことで、勢いのある街に繰り出してみました。 ところが最初に目をつけていたお店の灯りが無く、もう1度Googleで調べ直して辿り着いたのが今回のお店、東口から少し歩いたところの「Bar as ever」さんです。 お店はまだ開業2年の若いお店、当然ながらマスターもお若い感じの方でした。インテリアもいわゆる「今風」にシックな感じでとても良い印象を持ちました。 お店はカウンター席の他にテーブル席も。夜中の3時まで営業されているそうで、お一人でもグループでも利用できそうな雰囲気です。 こちらのバーですが、いわゆるモルトバー的な品揃えではありません。ですが、シングルモルトの基本的なラインアップを小さな棚にコンパクトにまとめています。 そこまでニッチなものや掘り出し物できなくて類いは期待できませんが、ベーシックはバッチリ揃えてあるので、ウイスキー好きの方でも十分に楽しめるかと思いました。 こちらの店の特徴ですが、これはなんといっても店内の演出ではないでしょうか。ウイスキーバーというと狭苦しい店内にウイスキーのボトルが所狭しと並んでたりするお店もあります。 もちろんそうした店も秘密基地的な味があって楽しいのですが、やっぱりもう少し違った「余裕のある」楽しみ方があっても良いと思うにです。それがズバリこちらのバーです。 目玉は何と言っても「円盤」、すなわちレコードのミュージックです。 ウイスキーの楽しみ方というのは、その味わいだけには限りません。それを賞味する、場の雰囲気も大切だと思うんです。これだけでも味は全く異なった印象になると思います。 確かに真剣に全神経を研ぎ澄まし、ウイスキーの香りを嗅ぎ、口の中に含んではそれを転がすようにして味を楽しむのも醍醐味ではあります。 でも、時にはただ流れる時間に身をまかせながら心を無にして、ただそこにあるものを「楽しむ」というも有りかなと。そんな空間をこのバーは提供してくれます。 エアコンには温度調整のリモコンがありますが、このバーには音楽を流しながら時間の流れを調整できるような、そんなリモコンがありような気さえしました。 さて、そんな調子でノンビリと寛いでしまったので本日の写真はこの1枚だけ。最後に今日頂いたボトルを、敢えてレコードの棚を背景に写させてもらいました。 バーカウンターから 1杯目は「C.C(シー・シー)」。これを先ずはハイボールで。(これをシーシー・ソーダともいうようです)。因みにシー・シーは、シーシーレモンではありませんよ。(笑)もちろんウイスキーです。カナディアン・ウイスキーの筆頭、「カナディアン・クラブ」の頭文字の略称です。 カナディアン・ウイスキーはスコッチから見るとかなり変わったウイスキーです。グレーンウイスキー(大麦以外の穀物を原料としたウイスキー)の一種であるアメリカの「バーボン」に近いですが、それとも少し違います。 簡単に言うと、バーボンベースのウイスキーにライ麦主体のフレーバリング・ウイスキーを合わせた「ブレンド」が一般的です。 このカナディアン・クラブはハイラム・ウォーカーにより1858年、当時の主流であったスコッチやバーボンと一線を画す新たな風味を探求したウイスキーとして誕生しました。 その特徴はライ麦由来の香味がスパイスとしてほんのり効いた甘みのあるバーボン、と言った感じでしょうか。これはやはりスコッチウイスキーとはかなり違います。飲み口も良く、ソーダ割りでも十分に楽しめるキャラを持っています。ロックで飲めばもっとライ麦に香味が楽しめたのかもしれません。融通が効くウイスキーということで、初めての方にもオススメです。 マスターの話ですと、ソーダ割りだとそこまで主張しないウイスキーが好まれているようです。スコッチだとバランタイン、アイリッシュのジェムソンなんかも人気のようですね。 さて、次は本名のスコッチを頼みました。ハイランドの「トマーティン」。この蒸溜所は「松竹梅」のお酒で知られる日本の「宝酒造」と繋がりがあります。 1980年代、同社は当時経営難に陥っていたトマーティン蒸溜所に出資。日本勢で初の蒸溜所のオーナーとなりました。その後は日本向けの輸出に力を入れるなど、国内でのスコッチウイスキーの知名度を上げることに寄与してきました。(現在、宝酒造さんは撤退され、食品大手の国分さんが輸入代理元となっているようです。) このトマーティンの味は如何なるものか?実はトマーティンを飲むのはこれが初めてではないのですが、ハイランド系はなんとも表現がしづらいのです。恐らくものすごくクリアでシャープな味がベースにあって、樽由来の風味とかもそこまでインパクトがないものが多く、強いていうなればウイスキー本来の「穀物=大麦」感が表現されているからでしょうか。 この12年については他の方のレビューも拝見してはみたのですが、自分が一言で言うなら「モルト」の感じですかね。麦芽が発酵したときの香りとでもいうのでしょうか。それをテイスティングしたときのボディに強く感じました。 一応、悩んだときはほかと比べてみるのが一番と言うことで、トマーティンを取り出した棚の後列にあった「アバフェルディ12年」と最後に飲み比べ。 アバフェルディはよく見かけますが、自分は今回が初めて。ブレンドスコッチの「デュワーズ」のキーモルトとして有名。こちらは他にレビューと同様に甘い感じ。「豊潤な蜂蜜」とまで形容しているものも。とても飲みやすいです。「甘い」と言っても、バーボンの甘さとスコッチの甘さはちょっと違います。これは本当に飲んで体感していただく他ないのですが、例えるならバーボンはチョコレートのように舌に残る感じ、スコッチはどちらかと言うと「通り過ぎる」スッキリした感じです。 こんな感じでノンビリとゆっくり杯を重ねていたら、早や帰りの時間が近づいてきました。日帰り出張だとどうしようもありません。最後にマスターにちょっと質問をしてみました。…