【埼玉】バー亀(久喜)

今回は仕事帰りに埼玉県の久喜のバーにお邪魔しました。 少し前まで栃木と勘違いしていましたが、久喜は埼玉県に位置するのですね。 先日、知人の方に体験談を話していて注意されました。 「久喜の人に怒られるよ!」。 大変申し訳ありません! とは言っても、土地勘の無い人には分かりづらいかもしれないので、 一応「どこか」というのを言葉で説明しておきます。 久喜は東北本線で大宮から宇都宮方向に電車で20分くらいのところです。 また久喜は東武伊勢崎線とも連絡をしていて、東武線の久喜駅のエキナカにはスタバや本屋さんがあったりします。 こうした地方のバーに行くというのは、行きつくまでに多少の不安があります。 特に今こういった状況なので、ホームページや連絡先が無いと、果たして本当に営業されているのか、わざわざ途中下車して開いてなかったらどうしよう、なんてことを考えたりします。 しかし、こういったこともある種の「ご縁」だと思い地図を頼りに目的地を目指してみました。 ところで今回辿り着いたバーは実際の目的地の手前にあり、間違って入ってしまったことを先に断っておきます。汗 (またまた申し訳ありません。) 途中のお店にウイスキーの空き箱のようなものが表のショーウィンドウに積んであるのを目撃。シングルモルトのウイスキーのバーがこんなところにも!と思い勇気を振り絞って店の扉を開けてみたのでした。 「勇気」といったのは、ちょっと店の感じから、本当にウイスキーのバーなのか?という確信が持てなかったのです。ですが、幸運なことにとても良いバーでしたので、今から体験談を語っていきたいと思います。 入ってすぐに感じた店の感じは、ちょっとした「秘密基地」みたいな感じでした。 すでに常連さんと思わしき方が座っていらしたので、とりあえずマスターに席を確認し、L字型のカウンターバーの真ん中くらいに腰をかけました。 何を頼もうか迷いましたが、目の前にあったアードベッグを一杯目にロックで。 Ardbeg “Wee Beastie” 5yo アイラのスモーキさを堪能したければ、ラフロイグかアードベック。(別にオクトモアとう化け物もあるのですが、こちらはとりあえず別枠にしておきます。興味のある方はぜひ試してみてください。) 酒屋さんで見かける定番は10年かなと思います。次に最近ではこのWee Beastieでしょうか。他にはAn Oa(アン・オー)、Uigeadail(ウーガダール)、Corryvreckan(コリーヴレッカン)などがあります。それぞれ熟成樽の違いで、アン・オーはシェリー・バーボン、新樽のトリプルカスクでバランス系、ウーガダールはシェリーで甘さとスモーク、コリーヴレッカンはフレンチオークでスパイシーさが特徴。この辺は専門の酒屋さんとかでないと見かけないかもしれません。 今回頂いたのは5年のWee Beastieと言われる銘柄。若さのあるスモーキーさかなと。なんというか瞬発系というのでしょうか。そういうイメージがあります。最初からガツンと来るような。スコットランドの言葉で「リトル・モンスター」という意味だそうで、小さいながらも手を付けられない強烈なインパクトを表現したようです。後で確認したオフィシャルページにも「ストレート」がオススメと書いてありましたが、初めての一杯でついついロックにしてしまいました。それでも味はアードベッグらしさが十分に伝わってきました。アードベッグのラインアップは全体的に熟成年数が若い印象ですが、これは「5年」。たったの「5年」でこれだけの爆発力が出るとは驚きです。次回はぜひストレートでも試してみたいと思いました。 さて、次に気になったのが同じく手元に並べてあった「アラン」のピート。…

【栃木】bar as ever(小山)

今回の訪問先は栃木県の小山市。仕事帰りに足を伸ばしてみました。先日訪れた足利のバーのマスター曰く、この小山が今は栃木県の中では「熱い」(実質的に経済的にも工場誘致などに成功し、人口も増加傾向なようです)とのことで、勢いのある街に繰り出してみました。 ところが最初に目をつけていたお店の灯りが無く、もう1度Googleで調べ直して辿り着いたのが今回のお店、東口から少し歩いたところの「Bar as ever」さんです。 お店はまだ開業2年の若いお店、当然ながらマスターもお若い感じの方でした。インテリアもいわゆる「今風」にシックな感じでとても良い印象を持ちました。 お店はカウンター席の他にテーブル席も。夜中の3時まで営業されているそうで、お一人でもグループでも利用できそうな雰囲気です。 こちらのバーですが、いわゆるモルトバー的な品揃えではありません。ですが、シングルモルトの基本的なラインアップを小さな棚にコンパクトにまとめています。 そこまでニッチなものや掘り出し物できなくて類いは期待できませんが、ベーシックはバッチリ揃えてあるので、ウイスキー好きの方でも十分に楽しめるかと思いました。 こちらの店の特徴ですが、これはなんといっても店内の演出ではないでしょうか。ウイスキーバーというと狭苦しい店内にウイスキーのボトルが所狭しと並んでたりするお店もあります。 もちろんそうした店も秘密基地的な味があって楽しいのですが、やっぱりもう少し違った「余裕のある」楽しみ方があっても良いと思うにです。それがズバリこちらのバーです。 目玉は何と言っても「円盤」、すなわちレコードのミュージックです。 ウイスキーの楽しみ方というのは、その味わいだけには限りません。それを賞味する、場の雰囲気も大切だと思うんです。これだけでも味は全く異なった印象になると思います。 確かに真剣に全神経を研ぎ澄まし、ウイスキーの香りを嗅ぎ、口の中に含んではそれを転がすようにして味を楽しむのも醍醐味ではあります。 でも、時にはただ流れる時間に身をまかせながら心を無にして、ただそこにあるものを「楽しむ」というも有りかなと。そんな空間をこのバーは提供してくれます。 エアコンには温度調整のリモコンがありますが、このバーには音楽を流しながら時間の流れを調整できるような、そんなリモコンがありような気さえしました。 さて、そんな調子でノンビリと寛いでしまったので本日の写真はこの1枚だけ。最後に今日頂いたボトルを、敢えてレコードの棚を背景に写させてもらいました。 バーカウンターから 1杯目は「C.C(シー・シー)」。これを先ずはハイボールで。(これをシーシー・ソーダともいうようです)。因みにシー・シーは、シーシーレモンではありませんよ。(笑)もちろんウイスキーです。カナディアン・ウイスキーの筆頭、「カナディアン・クラブ」の頭文字の略称です。 カナディアン・ウイスキーはスコッチから見るとかなり変わったウイスキーです。グレーンウイスキー(大麦以外の穀物を原料としたウイスキー)の一種であるアメリカの「バーボン」に近いですが、それとも少し違います。 簡単に言うと、バーボンベースのウイスキーにライ麦主体のフレーバリング・ウイスキーを合わせた「ブレンド」が一般的です。 このカナディアン・クラブはハイラム・ウォーカーにより1858年、当時の主流であったスコッチやバーボンと一線を画す新たな風味を探求したウイスキーとして誕生しました。 その特徴はライ麦由来の香味がスパイスとしてほんのり効いた甘みのあるバーボン、と言った感じでしょうか。これはやはりスコッチウイスキーとはかなり違います。飲み口も良く、ソーダ割りでも十分に楽しめるキャラを持っています。ロックで飲めばもっとライ麦に香味が楽しめたのかもしれません。融通が効くウイスキーということで、初めての方にもオススメです。 マスターの話ですと、ソーダ割りだとそこまで主張しないウイスキーが好まれているようです。スコッチだとバランタイン、アイリッシュのジェムソンなんかも人気のようですね。 さて、次は本名のスコッチを頼みました。ハイランドの「トマーティン」。この蒸溜所は「松竹梅」のお酒で知られる日本の「宝酒造」と繋がりがあります。 1980年代、同社は当時経営難に陥っていたトマーティン蒸溜所に出資。日本勢で初の蒸溜所のオーナーとなりました。その後は日本向けの輸出に力を入れるなど、国内でのスコッチウイスキーの知名度を上げることに寄与してきました。(現在、宝酒造さんは撤退され、食品大手の国分さんが輸入代理元となっているようです。) このトマーティンの味は如何なるものか?実はトマーティンを飲むのはこれが初めてではないのですが、ハイランド系はなんとも表現がしづらいのです。恐らくものすごくクリアでシャープな味がベースにあって、樽由来の風味とかもそこまでインパクトがないものが多く、強いていうなればウイスキー本来の「穀物=大麦」感が表現されているからでしょうか。 この12年については他の方のレビューも拝見してはみたのですが、自分が一言で言うなら「モルト」の感じですかね。麦芽が発酵したときの香りとでもいうのでしょうか。それをテイスティングしたときのボディに強く感じました。 一応、悩んだときはほかと比べてみるのが一番と言うことで、トマーティンを取り出した棚の後列にあった「アバフェルディ12年」と最後に飲み比べ。 アバフェルディはよく見かけますが、自分は今回が初めて。ブレンドスコッチの「デュワーズ」のキーモルトとして有名。こちらは他にレビューと同様に甘い感じ。「豊潤な蜂蜜」とまで形容しているものも。とても飲みやすいです。「甘い」と言っても、バーボンの甘さとスコッチの甘さはちょっと違います。これは本当に飲んで体感していただく他ないのですが、例えるならバーボンはチョコレートのように舌に残る感じ、スコッチはどちらかと言うと「通り過ぎる」スッキリした感じです。 こんな感じでノンビリとゆっくり杯を重ねていたら、早や帰りの時間が近づいてきました。日帰り出張だとどうしようもありません。最後にマスターにちょっと質問をしてみました。…

【東京】the TRAD(上野)

本日は久々に東京の北の玄関口とも言われる上野に来ました。 ところで、「上野」というのは、皆さんはどういう印象を持たれているでしょうか? 浅草の玄関口であったり、動物園であったり、アメ横であったりと色々な顔のある町かなと思います。自分にとっての上野というのは鉄道(JR)の「ターミナル駅」(終着駅)という印象が未だに強いです。 とは言っても鉄道好きか、ある年齢層より上の方でないと、もうピンと来ないかもしれませんので簡単に説明します。 昔、(こんな表現をすること自体、時の流れを感じてしまいますが)、上野駅というのは東北方面に発着する、恐らくすべての列車の起点(=終点)となる駅でした。 現在はといと、新幹線は東京が始発になり上野は途中駅、在来線も東海道線との直通運転。このため、「上野行き」という列車は非常に稀になりました。 でも一昔前は、東北・上越の新幹線は上野が始発駅でしたし、在来線の普通電車も上野が始発でした。 また、今はもう無くなってしまいしてしまいましたが、昭和の時代は、上野発の夜行寝台列車「ブルートレイン」が全盛期で。夜になると多い時には数分置きに東北方面へ長距離列車が旅立っていきました。 なので、今でいうところの「飛行場」のような感じで、上野駅というのは大きな荷物を抱えた人たちが集まる、旅情感満載の「駅」というイメージが自分の中にはまだあります。 もちろん、今でも時々地下ホームに降り立つと、往時の雰囲気を感じることがありますが、在来線が直通運転になり、ブルートレインも廃止されてからは、「旅情」を感じることは少なくなってしまいました。 でも上野の街から活気が失われた訳ではありません。駅の周辺の名所は、今まで通り活況があります。特に駅の西側にある上野公園は博物館や美術館がたくさんあり、緑も多く、駅前の雑踏から解放されます。 近くを散策してみましたが、古い様式の独特な建物が多いことに改めて気づかされました。さながら、建築博物館のようでもあります。近くには東京学芸大学や、東大もあります。国立の大学は敷地が大きくキャンパスの中を散策するのも楽しいのですが、残念ながら今は「関係者以外入門禁止」の貼り紙が。 さて用事を済ませたところで、帰り際にどうしても一杯飲みたいものがありました。上野・湯島にあるオーセンチック・バーTRADさんのアイリッシュ・コーヒーです。 先日読んだ村上春樹の『もしも僕らのことばがウイスキーで会ったなら』という本。 スコットランド・アイラモルトのことについては前回述べましたが、隣のアイルランドにも訪問されています。アイルランドといえば、アイリッシュ・ウイスキー。 これは世界5大ウイスキーのひとつに数えられるばかりではなく、ウイスキー発祥の地としても知られています。かつては世界最大のウイスキー生産国でもありました。 それではアイリッシュ・ウイスキーとは何か? スコッチと何が違うのか? 原料が大麦であったり、単式蒸留器を使ったりと、基本はスコットランドのシングルモルト・ウイスキーとほぼ同じですが、一部の工程が違います。 簡単に言うと、スコッチは蒸留工程、つまり発酵してできたお酒(醪)を加熱してスピリッツにする作業、が2回ですが、アイリッシュは3回行います。(細かく言うとスコッチでも3回行っているところもあります。) また、通常のモルトウイスキーとは別に、「シングルポットスチル」という未発芽の麦芽を使ったアイルランド独自のウイスキーもあります。 このような違いによって生み出されるウイスキーの特徴は、どんなものか?ということですが、自分は当初は少し飲みにくいウイスキーなのかなという感じがありました。昔からの伝統にこだわる少し古臭いイメージしかなかったのです。 今回こちらのバーでそのアイリッシュ・ウイスキーの銘柄をいくつか飲ませて頂きました。飲んで驚いたことですが、「まろやか」であるということです。正直びっくりしました。 この驚きを例えて言うなら、お昼のランチにお店を探していて、なんとなく外見から頑固おやじが切り盛りをしている定食屋に仕方なく入ってみたら、意外にフレンドリーな対応に好感を持ってしまったときの感じ、とでも申しましょうか。(笑) 隣で同じようにアイリッシュを飲まれていた方がうまいことをおっしゃいました。 「日本酒みたい」。 いや、全くその通りだ!と思いました。これは日本酒です! (でも日本酒は有りません、アイリッシュ・ウイスキーです。度数も40度超えています。) でも日本酒のようなまろやかさが確かにあります。それはあの「獺祭」の様な、透き通る感じではなく、「灘の酒」のような辛口というものでもなく、例えるなら、地方の田舎の町を訪問したときに偶然出会うようなまったりとした「地酒」のような感じです。 香りの芳醇さ、フルーティさでいえば、スコッチのスペイサイド系の感じも確かにあります。…

村上春樹さんの『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』を読んで、

村上春樹さんの『もし僕らのことばがウイスキーであったなら』という本があります。『ノルウェイの森』や『海辺のカフカ』など(古くてスミマセン)大作が色々とありますあ、こちらの紀行文はあまり知られていないのかなと思います。平易な言葉の連続で、本当に種も仕掛けも無いのに、読み進めていくうちに完全に虜になっている。不思議な本です。 この小さな旅行記もまさにその氏の魔法的な性質を十分に宿したものだと思いました。答えは本当に単純なのです。氏は冒頭でこう宣言しています。「ささやかな本ではあるけれど、読んだ後で(もし仮にあなたが一滴もアルコールが飲めなかったとしても)、ああ、そうだな、一人でどこか遠くに行って、その土地のおいしいウイスキーを飲んでみたいな、という気持ちになって頂けたとしたら、筆者としてはすごく嬉しい」 はい、当にそういう気持ちになりました。読み終わった後に、居ても立ってもいられないような、すぐにでも飛行機で旅立ちたいような。それぐらいに、自分の心をズバン、ズバン、と打ち抜くものが、この文章には詰まっていました。 この本ではスコットランドとアイルランドが紹介されていますが、こちらのホームページはスコッチウイスキーを一応メインに据えているので、スコットランドの部分だけを切り出して少し紹介できればと思います。 スコットランドの部分に関してですが、内容は全てアイラ島での話です。アイラ島というのは、スコットランドの西側にある島々の中のひとつの島で、ウイスキーの生産地として古くから有名です。 この島のウイスキーはモルトを乾燥するときに使う泥炭(ピート)の香りが特徴的で、スコッチファンの間でも、好みが分かれるところかと思います。個人的にはクセのある味わいというのが好きなのタイプなので、自分は最初から抵抗がありませんでした。むしろ、その特徴に惹かれて好きになったくらいです。 まずは次の箇所。これはアイラ島の最初の紹介の場面です。アイラ島は辺鄙な場所にあり、天候も厳しく、観光名所と呼ばれるものはほとんどない。それにも関わらず、この島を訪れる人がいる、とした上で次のように続けます。 「暖炉によい香りのする泥炭(ピート)をくべ、小さな音でヴィヴァルディのテープをかける。上等なウイスキーとグラスをひとつテーブルの上に載せ、電話の線を抜いてしまう。文字を追うのに疲れると、ときおり本を閉じで膝に置き、顔を上げて、暗い窓の外の、波や雨や風の音に耳を澄ませる。」(pp. 22-23) まさに「英国人的な」余暇の過ごし方なのかと思うとともに、このようにしてウイスキーを楽しむものなのかと強く胸打たれました。 アイラ島のシングルモルトは、それぞれが個性の塊。アイラのシングルモルトといえば、「有難い教祖様のご託宣のようなもの」との表現には、思わず微笑みがこぼれました。もともとはブレンドウイスキーを作るときの隠し味的な要素ととして使われており、原酒そのものを楽しむというのは島の中だけのことであったようです。それが昨今のウイスキーブームなどによりその個性的な味わいが評価され一躍有名に。今では世界中からウイスキーファンが「巡礼」に訪れるようになっています。 小さな島の中で、各蒸留所がそれぞれの個性を維持し続けるとはどういうことなのか?そのことを次のように説明しています。 「それぞれが自分の依って立つべき場所を選びとり、死守している。それぞれの蒸留所には、それぞれのレシピがある。レシピとは要するに生き方である。何を取り、何を捨てるかという価値基準のようなものである。何かを捨てないものには、何も取れない」(pp. 38-39) 後半では、ボウモア蒸留所を訪れた際のことが書かれています。当時の蒸留所のマネージャーであったジム・マッキュアンとの対話が印象的です。ジムは樽職人の仕事から始めたそうですが、樽熟成の様子を次のように語ります。 「アイラでは樽が呼吸をするんだ。倉庫は海辺にあるから、雨期には樽はどんどん潮風を吸い込んでいく。そして乾期(6~8月)になると、今度はウイスキーがそいつを内側からぐいぐいと押し返す。その繰り返しの中で、アイラ独特の自然なアロマが生まれていく。」(p.42) アイラウイスキーの特徴ともいえるのが「磯の香」。 この島は一年を通して風が強いため、島の至る所にその匂いがしみ込んでいるそうです。それを「海藻香」と島の人は呼ぶそうです。泥炭(ピート)も、その土地の特徴によって香りが異なりますが、アイラモルトはこの磯の香りがのったピート感が特徴的(※)。この独特な香りは初めて飲まれる方には、少し驚かれるものかもしれません。 ※厳密にはアイラ島の蒸留所すべてがピートっぽいわけでなく、ピートを焚かない蒸留所もあります。 しかし、あなたがアイラ党(アイラが好きになるか)かどうか、このようにユーモアある表現で説明されています。 「一くち飲んだらあなたは、これはいったいなんだ?、とあるいは驚かれるかもしれない。でも二くち目には、うん、ちょっと変わってるけど、悪くないじゃないかと思われるかもしれない。もしそうだとしたら、あなたは、かなりの確率で断言できることだけれど、三くち目にはきっと、アイラ・シングルモルトのファンになってしまうだろう。僕もまさにそのとおりの手順を踏んだ」(p.46) アイラのウイスキーの特徴は、「土地の香り」を明確に感じることができるシングル・モルトだという点です。具体的にそれは、磯の香をたっぷり含んだ泥炭(ピート)の香りであると、言い換えることもしれません。しかし、アイラの中にある蒸留所は、その同一条件でも、さらにそれぞれに個性があります。それは恐らく各蒸留所の微妙なレシピの違いであり、その伝統を純朴に今に至るまで守ってきた結果であると思います。 アイラウイスキーの特別な味の正体は何なのか?。最後にもう一度ボウモアのジムに問いかけます。ジムはその味を決める上で、島の水やピート、上質な大麦などの要因が間違いなくあるとしたうえで、次のように答えます。 「いちばん大事なのはね、ムラカミさん、いちばん最後にくるのは、人間なんだ。ここに住んで、ここに暮らしている俺たちが、このウイスキーの味を造っているんだよ。(中略)それがいちばん大事なことなんだ。だからどうか、日本に帰ってそう書いてくれ。俺たちはこの小さな島でとてもいいウイスキーを造ってるって」(p.65) 新潮文庫(1999)

【栃木】BAR×BAR×BAR WATARASE(足利)

今日の訪問先を語るにあたってまずお見せしたいのはコレです。 夕陽がまた素敵だった! ものすごく素敵な景色ですよね?! でも北海道とかじゃありません、完全に関東圏内です。場所は栃木県の足利市です。 雑居ビルの5階だったかと思います。店の看板すらありませんでした。オーナーのこだわりのようで、敢えて出してないとのこと。意外性という意味では憎らしいほどの演出です。 ビルを上がるエレベーターも昔の旧式のもので、ゆっくり、ゆっくりと上がっていきます。 因みに上昇中にも外が窓を通して見えるようになってました。恐らくこのビルとエレベーターができた時は、最新式だったのだと思います。 この感じ。もうこのブログをいくつか読んでらっしゃる方にはお分かりかもしれませんが、私の大好きなノスタルジック昭和です。 そもそも、この足利という街自体が少し昭和ノスタルジーの遺跡のような感じです。このバーの開店まで少し時間があったので街中を散策していた時に撮ったのがこちらの写真。 時が止まったままの劇場(映画館) ただの廃虚じゃないかって?いや、私にはこのくらいが丁度良い感じです。笑 廃墟マニアという訳では無いのですが、その毛は多少あるものと自覚はしています。時間の中に溶け込みながら往時を少し偲ばせるような佇まいがとても惹かれます。 なんですかね。ものすごく安心してしまうんです。こうして時の流れるままに身を委ねられる建物が存在する、そのような街はある程度の「器の持ち主」であると思います。 それもそのはず、この足利というのは平安時代から存続したと言われる学府「足利学校」を擁した地。当時は関東の最高学府であったそうです。もちろん江戸とか東京とかのずっと前の話です。 明治以後も一時は栃木県の中で、県都のある宇都宮に次ぐ2番目の人口を誇りましたが、時代の流れとともに周辺地域の開発(郊外型ショッピングモールなど)により繁華街が廃れてしまい、現在は閑散ととした状況。デパートも複数あったようですが、今では見る影も有りません。しかし、街の各所に点在する寺社仏閣の多さは目を見張るものがあり、その価値は全く色褪せていないように感じました。 さて街の観光案内はこれくらいにしておきますそろそろお店の扉を開けましょうか。 因みに玄関にも看板はありませんでした。一瞬本当に営業してないのかと思いましたが、消毒用のスプレーが置いてあり、なんとなくコレは店の方針だろうと解釈してインターホンを鳴らしました。 少し間を置いてから扉が開かれました。店に通されたら第一印象。え、ここは何処?! インテリアが凄すきます。さっきの街の感じと全く噛み合ってません。笑 都心の繁華街にある隠れバーに、どこでもドアで通された感じです。 そう考えて今までのことを逆戻しして、もう一度再生してみました。普通の街、どちかというと寂れた繁華街、そしてたどり着いた雑居ビルの一階、看板もない、とりあえずオンボロにエレベーターで上に、またもや何の挨拶もないただのドア、その横にアルコールひとつが暇そうに置かれている。 全ての期待を裏切り、不安感がクライマックスに到達したところで開けられた魔法の世界。洗練された内装、垢抜けたバーカウンター、綺麗に並べられたボトル、そして窓から見える優雅な景色!渡良瀬川が静かに流れ、視界を遮るものは何もありません。 いやいや、これは反則でしょう!こんなところで!あ、失礼しました。地方都市を、そして足利市を見下している訳では無いのです。お許しください。全く心の準備ができていなかったもので!汗 正直申し上げてこのようなバーに出会えたことは全くの「想定外」であったことは告白します。潔く。 さて、想定外ばかりが続きます。こちらのバーマスターがまさにその張本人です。なんとバーテンダーの大会で優秀な成績を収めただけでなく、コーヒーのバリスタの大会でも好成績を収められたとのこと。 因みにバーテンダーとは、バーでカクテルなどのお酒を作る人のこと。よく金属の水筒のようなものをシェイクして、シャカシャカ音を立てている格好良い感じの人がいますよね。 バリスタとはお酒ではなく、こちらはコーヒーのスペシャリストになります。エスプレッソマシンの使い手のような感じです。 片方だけでも難しいと思うのですが、両方とは凄すぎます。しかも店の内装とかも全て自己流アレンジだとのこと。何でもできるスーパーマン・タイプですね。恐れ入りました! さて、恐れ入ってばかりでも始まらないので、飲み物を頼みます。ここはどうやらジンをベースにしたカクテルが看板商品の様子。 とりあえず一杯目はマスターお任せのカスタムアレンジのカクテルを注文。こちらの味の好みなどを伝えれば、それに合ったカクテルをオリジナルに即興アレンジしてくれると言うもの。…

BAR GOSSEにてIII

早速ですが、今日は珍しい来客がありました。 基本このブログはバーとウイスキーに焦点を当てることを目的としていますが、 あまりにもの珍事に、今回はゲストにもフォーカスをさせてもらいます。 なんと20代の女性、しかも美人さん。本ブログではこれを「三拍子揃う」といいます。笑 実のところ、こうしたウイスキー・バーに女性が来られること自体は珍しくはありません。 全員が美人じゃない?いえいえ、そういうことではないのです、皆さまお美しいです! 今回珍しいと大騒ぎしたのは、「ウイスキーが好きで、且、知識量も豊富で、しかも実際に行動されている」ところ。 行動している、というのは自分で蒸溜所を訪問したり、酒屋さんに行ったり、バー巡りしたりという意味です。 しかも、フレンドリーに取材許可までいただきました。もう感謝しかありません! お名前は、「さくら」さんということです。さくら様、とお呼びしたいところですが、変なバーと混同するといけないので、とりあえず「さくらさん」で本ブログは通します。 さて、まずは一杯いきましょう。 とりあえず、取材に入る前にコレをハイボールで。そう、ホワイトホースです。キーモルトはラガブーリン。 ホワイトホース(左側) 個人的に好きな銘柄なので、先ずはテンションを上げていきたいところでしたが、いきなりシングルモルトをストレートというのも飛ばし過ぎ。 そういう訳で、まずはやさしめに軽く一杯ということでホワイトホースを、ハイボールで頼見ました。気持ちを落ち着かせます。 さて「ホワイトホース」について、少し補足しておきましょう。名前の通りボトルの中央に白馬が描かれています。 このブランドは1881年、ピーター・マッキーにより立ち上げられました。 ホワイトホースの名前は、マッキー氏の近所にあった酒場兼宿場 「白馬亭(The White Horse Cellar)」に由来します。 ラベルの白馬は、白馬亭の看板を描いたもので、1742年というのは白馬亭の創業年になります。 この「白馬亭」ですが、普通の宿ではなく、18世紀にスコットランドの独立を図った「ジャコバイトの反乱」の際の拠点。 単純に良さげな宿があるから、という理由ではなく、スコットランド人の誇りの源に肖(あやか)ったというところでしょうか。 また、キーモルトがラガヴーリンというのもちゃんと理由があります。 マッキー氏の叔父ローガン・マッキーは同蒸留所のオーナー!若かりし頃にウイスキー造りを学んだのがラガヴーリンだったというワケ。 (なんと贅沢な!)ローガン氏が亡くなってからは蒸溜所の経路も引き継ぎます。 さて、もう一度バーに戻ります。さくらさんのストーリーです。あれだけ騒いでホワイトホースに脱線しかかりました。 さて、私が興味があったのは、どうしてそんなに若くしてウイスキーに興味を持ってしまったの?ということです。…

【東京】バー恵(中野)

そういう訳でやってきました「バー恵(めぐみ)」さん。 先ほどの「美術館」から歩いて5分くらいでした。 先ほどの彼によると仕事が終わって店長さんとこちらのバーで飲まれることもあるようです。 店に入っての印象は昭和のノスタルジックな秘密基地という感じでしょうか。細長い店内にカウンター席が8席くらい。 店内の様子 うちらが入った時には先客の方が3名おられて、うちらが入店した時点で結構がっつりという感じでした。 店の中の移動もカウンターに座ってる人の協力なしには後ろの壁とのスペースがカツカツで通れない感じ。 そんなわけで、なんとなく居合わせた者同士親近感を感じてしまうお店です。 語り合いバーみたいな感じでしょうか。 気さくな女性のマスターさんが店を切り盛りされてます。 この辺に住まれてる方には憩いの場みたいな感じかと思います。現にお一人で来られてた方は常連さんのようでした。 さて、席についてから「初めてですか?」と先ほどの女性マスター。 先ほどの経緯をお伝えすると「ワサビは終わったんですよねー」とのこと。 「あの子(件の美術館の彼)まだ宣伝してるのね」と笑っておっしゃってました。 どうやら彼は宣伝部長のようですね。我々の前にもこうしてワサビ杯を求めて来たものがいるようです。(笑) 何を飲もうかなぁと思い棚をキョロキョロ。 オススメで頂いたのがコチラ。 小学館さんのデビルマンシリーズ。 中身はアードモアの10年。ラフロイグカスクとのことです。 飲んでみたんですが、第一印象は思いっ切りラフロイグですね。笑 アードモアは飲んだことがないんですが、10年熟成なのにラフロイグに染まってる感じがします。 もちろんオフィシャルのラフロイグの様にブアッと煙が出る感じではありません。カスク越しなんで、上品に香るラフロイグという感じ。 このくらいだとアイラ系苦手なヒトとかでもイケそうな感じですね。 さて、これは後付けの知識なのですが、アードモアを調べてみました。アードモアはブレンドのティチャーズのキーモルトとして知られているようですが、ズバリその特徴はピート。 しかし、いわゆるアイラのピートでは無くハイランドのピートです。このピートの特長はアイランズのような磯の香りではなく、炭っぽい香りだとのこと。 ということは、先ほどのアードモアはアイラモルトとハイランドモルトの競演だったという訳ですね。知識が無くて追いつきませんでしたが、次はアードモアもぜひ試してみたいと思いました。 さて、次に試したのがコレ。 サウスパークさんのオリジナルボトル この中野には実はとても有名なバーがありました。 現在は残念ながら閉店されていますが、駅南に方に「サウスパーク」と言われるウイスキー好きの聖地がありました。…

【東京】お酒の美術館(中野)

本日は中野にお邪魔しました。 自分は都内に住んでいますが、あまり中央線沿線とは縁がなく、中野もたまに通ることはありますが、途中下車はしたことがありません。 そんなところに今回来たのは訳がありまして、、行きつけのバーのボーイ君が誕生日を迎えるということで、 どこかでささやかなお祝いでもしようかという話になり、先方の希望で中野が選ばれたいという経緯。 中野のほかには、上野も候補だったのですが、普段行くことが無いところという点で、中野をチョイス。 さて、その当の本人が、なかなか来ません!思ったより、恥ずかしがり屋さんのようです。とりあえず時間を潰します。しかし、この中野は面白いですね!まるで昭和にタイムスリップしたような感じです。 先日、広島を絶賛しましたが、この中野も結構いけます。どうしてなのでしょうか?コジンマリした店が、商店街の周辺にも密集しています。 待ち合わせの時間は15時くらいだったのですが、日曜ということもあってか結構の数の店が開けていて、またかなり混んでいます。 恐らく地元の方だとは思うのですが、老若男女が良いバランスで混ざっている感じ。とくに若い子が多い印象でしょうか。 さて、アレコレしていると到着したとの連絡を受け、駅前で再び合流して、どこか良さそうなバーの探索を開始。 そこで見つけたのが「お酒の美術館 中野店」。 15時オープンということで、ちょうど店を開けたばかり。我々が一番の先着だったようです。 席はどこかなと思って探していましたが、どうやら立ち飲み。店の棚を拝見する限り、ウイスキーとか蒸留酒系が中心の様。 すごいですね。飲み方にもよりますが、ウイスキーの立ち飲みは初めてです。 さてもうひとつの発見。店員さんがまた若い!聞くとまだ大学生(もちろん二十歳超えていますよ)。 良いですね。また、どうして?とお伺いしたところ、この店のオープニングに面接を受けたら、採用されたとの話。 いやはや、オーナーさんも度量のある方のようです。爽やかな青年でした。(ご本人の許可も得ての掲載。イケメンはマスク無しが映えますネ(笑)) 山崎と記念撮影 本人曰く、お酒も好きだけど、「人とのコミュニケーションが好き」だとのこと。可能性は無限ですので頑張ってください! さてさて、飲み物の話に移りたいと思います。 とその前にですが、このバーは「オールド」が売りのバーのようです。「オールド」というのは、廃番品のことで、現在は市販されていないものです。 では、なぜそのようなボトルがあるのか?理由は主に二つあると思います。そのボトルが市販された当時に買って、未開封のままでたまたま残っている。もしくは、コレクターの方がきちんとキープされていた。普通は買うと開けちゃうと思うのですが、開けずにちゃんとキープされるのがコレクター。というのは、将来性のあるボトルは、希少性が増して価値が上がります。 特にウイスキーはアルコール度数が高いため、腐敗しづらく、また保存熟成による味わいや香りの変化を逆に楽しめたりします。もちろん、保管状況によっては劣化もしてしまいます。 「オールド」の中でも昔の酒税法区分による「特級」などのラベルがついているものはかなり貴重です。1962年の酒税法改正(1989年に廃止)では、それまで「雑種類」であったウイスキーが、「ウイスキー類」として扱われるようになり、さらに原酒混和率により特級・一級・二級などの区分けができました。これにより「ウイスキー特級」には高額な税が課される反面、「高嶺の花」としてのブランド価値を確立しました。 当時の日本が行動経済成長期であったことと相まって、サラリーマンにとっての憧れとヤル気の源であったようです。 さて、今回こちらのお店で試したのは、スコッチブレンドのシリーズ。ラベルをよく見て頂けると分かると思いますが、下の方に「特級」とあります。なので、おそらく30年以上前に誰かが購入されたものと、こうして巡り合えたという事になります。 特級表記のボトル ボトルを簡単に紹介。左のBELL’S(ベル)はイギリスで最もポピュラーなブレンドスコッチです。ボトルの上の所に「afore ye go(船出の前に!)」とありますが、門出を祝う縁起の良いウイスキーとして、昔は出征する兵士に贈られたそうです。また、weddling…

【愛知】共栄窯(常滑)

人生を悔いなく生きるにはどうするか?その日その日を精一杯に生きる、とかありきたりの言い方がありますけれど、自分流に言わせてもらえればこういう事です。 「気になったことは、その場でやる」、これだけです。 でも、モヤモヤしたりウジウジしたりで先延ばしにしてしまうことが未だに多い。 若いうちはそれでも可愛らしいですが、歳を取るにつれて「次」っていうのが、日に日に重たくなって来ます。その「次」はいつくるのか?ホントにくるのか? 一回一回がすべてチャンスと思えば姿勢も変わってきます。もちろんすべてに気を張っていたのでは息苦しいんで、ある程度のメリハリも必要なのですが。。 さて、そういった意味で、自分はやっぱり出張とかで出かけた時に、何をするかというのは、とても重要です。仕事の次にです!もちろん。笑 さて前置きが長くなりました。 今回の訪問先は、自分にとって5年ぶりくらいの「再チャレンジ」になります。 再チャレンジとはどういう意味かというと、以前中部空港を利用するのに前泊でここ(愛知県常滑)に泊まったことがあるのです。その時はただ空港に近いというだけで選択しただけで、焼き物で有名だとか、このバーに存在とかは全く知りませんでした。 ただ、その時はこのお店の扉を開けることができなかったのです。当時はそこまでお酒にも詳しく無かったですし、外観が非常に特徴的で面白そうだとは思ったんですが、中が全く窺い知れず勇気が出ませんでした。 初めて来た土地で、夜遅くに、バーを訪問する。しかも独りで。冷静に考えれば結構ハードル高いのかなとも思います。 今では大分こういうのにも慣れてきて、緊張で扉を開く勇気が無いということは無くなりました。それでも、やっぱり扉を開ける一瞬は緊張します。注射に慣れても、チクッと刺すときは意識してしまう、そんな感じです。 さてこのバーの特色は何と言っても外観もさることながら、その中の空間にあります。 ここ愛知の常滑は焼き物の町で有名です。街の中を歩いてても感じは伝わって来ます。このバーも実は焼き物(しかも土管!です)を以前焼いてた窯だったのこと。内部の空間はカマボコ型をしていて、土管を焼いてただけありかなりデカイ。 カウンター席の他に、テーブル席もありますが、それでも広々しています。器とかを焼く「登り窯(のぼりがま)」とかは見たことあるのですが、とても人が中に入って寛げるような感じでは無かったですね。 窯の中 それにしても誰のアイデアなんですかね?焼き物の窯をバーにしちゃおうなんて。本来の用途とは全く違いますが、再活用として初めてナイス・アイデア! さて、釜の中で何を飲もうか考えました。 とりあえずメニューから興奮を覚ますべくローランドのウイスキー・グレンキンチーをロックでまずは一杯。  Glenkinchie 12yo ローランドはあまり飲む機会がありません。スコットランドの中心都市であるエジンバラを含む南部地域がローランドと呼ばれますが、この地域に現存する蒸溜所は非常に少ないです。 グレンキンチーと、オーヘントシャンがよく知られている蒸溜所ですが、他はほとんど見ることが無いかと思います。 さて、今回トライしたグレンキンチー12年。 ノージングはフローラルで軽く、味わいはハイランドとはまた違う柔らかな感じで、まろやかさがあります。都会的なタッチとでもいうのでしょうか。 マスターにお話を伺ったところでは、このバーはまだ始めてから7年ぐらいとのこと。窯自体は昭和前半くらいの作りなので、建物は古いですが店は非常にまだ若い。 土管を焼いてたというこの窯が現役で使用されていたのが、昭和46年迄ということなので、使われなくなってから半世紀近くの経つ計算。 しかし、店の中の感じはつい最近まで火を炊いていたのでは無いかと思うほど内壁が黒光りしています。 恐らく何かしらの復元なりメンテ工事をしたのだろ思われますが、平日夜の遅い時間にも関わらず店の中は終始バタバタの状態。 今回は経緯などをゆっくりお伺いすることが残念ながらできませんでした。…

【広島】バー・リトルハピネスさん(広島)

広島が好きです。 理由、要りますかね?笑 敢えて言うなら、昭和の香りです。それも品の良い香りです。 路面電車の走る風景 自分は昭和の生まれですが、平成、令和となって、街に昭和の雰囲気がめっきり無くなった気がします。建物や街全体が新しくなることは良いことだとは思います。便利で快適になりますから。 でも少し寂しい気もします。ヨーロッパの都市の旧市街を散策してたりすると、やっぱり羨ましく感じてしまいます。 古くても良いものは輝きがあります。年を経ることで良さがでるものは確かに存在します。 日本で昭和っぽい街並みと聞いて連想するのは、時代遅れで古臭い感じでは無いでしょうか。 古びた建物に、シャッターの下りた商店街、廃墟と化したような街並み… そういう場所も沢山あると思います。地方に行くと街の中心にある商店街は閑古鳥が鳴いていることは少なくありません。 その中で広島は、その街並みが昭和っぽさの上に築かれながらも、「美しく」繁栄している、そんな気がします。 市内の川に架かる橋。結構沢山あります。どれも結構年季が入ってますけど、ヨーロッパの橋の様に品があります。 街中では新旧両スタイルの路面電車が仲よく走るのを見かけます。市民や観光客の交通手段として現役で活躍してます。 繁華街も昔の感じそのままに賑わいがありノスタルジックな感じがして素敵です。中には怪しげな店もチラホラありますけど、全体的に肩肘張った緊張感が無い。お寺の縁日の祭りの様な懐かしい感じがします。 日本の街は古いものを壊して新しく作り替える式が多い。その中で広島は、うまく昔のものを引き継ぎ活かしている、そんな気がします。贔屓しすぎですかね?!笑 結局長々と語ってしまいました。 そろそろ本題のウイスキーバーに話を移しましょうか。 今回お邪魔したのはリトルハピネスさん。 ウイスキーバーにしては可愛らしい名前、建物の一階にあったのでふらっと寄ってみました。 店内はスタイリッシュな感じで、結構きれいにボトルが並べられてます。 オフィシャルを中心にボトラーズも。 パッとみた感じ左がスペイサイド、真ん中がアイラで、右はジャパニーズやバーボン系 今日はスペイサイドが飲みたかったので左側に席をとりました。 さて一杯目は広島ということで、コレを頂きました。 広島・廿日市の中国醸造さんのウイスキー。戸河内TOGOUCHI。 ウッドフィニッシュで酒樽とビール樽が置いてあり、ビール(IPA)樽フィニッシュのものをロックでいただきました。 ビールのホップ感までは正直分かりませんでしたが、スッキリした味わいです。ソーダ割りとかでも美味しいかもしれません。 中国醸造さんは「桜尾」という国産のジンを作っており、こちらの方がよく知られているかとは思います。 2021年にはスコッチウイスキーの慣習に習い3年の熟成を経た待望のシングルモルトが発売されるようです。 桜尾蒸溜所…