「文豪の涙」を飲みながらの一筆

writer's tears

今回はちょっとウイスキーをちびりちびりとやりながら、考えていることについて少し語りたいと思います。まさかの語りコーナーの第一回目です。たまにはこういうのも良いのではないかと思いますよね。自分にとってはウイスキー含めてお酒というのモノが最終目的地ではないからです。それはあくまでカタリストみたいなものです。本当に目指すべき興味はその周辺というか、別のところにあるような気がしています。このあたりのことはまだよくはっきりとしていません。でもこうして書きながら分かってくることもあるのではないかなと。そうしたことを少しづつ語っていけるスペースもあってよいのでは無いかと思って筆をとりました、ポチポチ。

バー巡りをしていて感じることから書きたいと思います。あちらこちらの店を訪れながら思いを巡らすことは、なにゆえにそのお店が存続しているのかということ。そして、なにゆえに存続できているのか、ということ。いわば、存在理由、存在価値です。いきなり重いですけど、一期一会だと思っているんで、ここは実は結構真剣に考えています。扉を開ける前にとりあえずは深呼吸してから、今日はどんなことが起こるんだろうかとか、どのようなお酒が置いてあるんだろうかとか、雰囲気はどうだろうとか、かわいい女の子が奥の席に座っていて思わせぶりな態度で誘ってこないとかとか(笑)。いや、そこまではさすがにイメージトレーニングはできてないかもしれませんが、やっぱり毎朝行くスタバや定食屋とはちょっとわけが違うので、気持ちの準備というかマインドセットはしているつもりです。(それでもぬ~っとした感じかとは思いますが、演技下手ですみませんm(__)m)

とにかくです。どの分野でもそうだとは思うんですが、「観察する」というのは面白くて、不思議です。まず、表面的に見えることがあります。例えば貴重なお酒が置いてあるだとか、バーテンさんがとてもカッコいいとか、お店の雰囲気がとてもおしゃれだとか。いろいろとあるかと思います。でももっとも興味深いのは実は案外そうったことではないのかなと思っています。つまり、表面には出てこない要素。これは、内面的な要素とでも言っても良いかもしれません。オーナーの方のバーに対する想いや考え方、お酒に対する愛情やこだわり、そしてお店を訪れてくるお客さんとの絆みたいなもの。こうした目に見えないコトの要素が実はかなり大きいのではないかと思います。これはやっぱり単純にモノを求めてきている訳ではないということなので。要するに、ただそのお酒を飲みたいだけなら、恐らく酒屋さんで買って飲んだほうが安くすむはずです。でも家で飲むお酒とバーで飲む酒というのはやっぱり違う。どちらが良いとか悪いとかではんなくて、でもやっぱりバーできちんとした空間の中で、それを楽しむことに全神経を集中できる環境で飲むことができるというのは、やっぱり格別の味わいがするような気がします。そして、やはりお酒の側もそれを求めているような気がします。間違っても、ただ酔うだけにお酒って造られているわけではないですからね。それだったら消毒液と大差ありません。

他の国の事情をくまなくみたわけではないですが、日本は世界で見てもかなり高いレベルのウイスキーバー大国ではないかと思います。世界的な大都会でもある東京や大阪、名古屋などの都心には数多くのバーがあります。スコッチ専門のモルトバーだけでなく、アイリッシュやバーボンを揃えたバーもあります。更にはそこそこの大きさの地方都市であれば、飲み屋街には必ず1軒くらいはモルトバーがあって、きちんとした品揃えとサービスを提供してくれています。裏を返せばそれだけのファンが日本にはいるということなのだろうと思います。もちろんスコッチ業界からしてもサントリーやニッカなどを擁するジャパンというマーケットはそれなりの位置付けで考えられているのかなと思いますし、蒸留所の要人たちもマーケットリサーチやプレゼンで来日しているようです。良いモノを作ることも一つですが、それを理解してくれる消費者がいることも重大な要素。そういう意味で考えると、国内のウイスキーバーというのは長年に成熟された市場の中で育まれたものと感じますし、やはりそれを作り上げてきた文化に近いようなものも出来上がっている気がします。ウイスキー界隈でいうと、人の横の繋がりとかも本当にすごいなと思います。

さて改めて国内事情に話を移しますが、いわゆるジャパニーズウイスキーというカテゴリーの話で言うと、今新たな新興蒸留所が多く誕生をしており、本格派のスコッチの代名詞ともいえる「シングルモルト」(簡単に言うと3年熟成済みのモルトウイスキー)のリリースも相次いでいます。北海道の厚岸、静岡のガイアフロー、アマハガンの長濱、本坊酒造の津貫、若鶴酒造の三郎丸、等々。もちろん、こうした動きは国内に限ったことではなく、このホームページでもたびたび紹介はしておりますが、海外でも非常にたくさんの蒸留所が誕生しています。スコットランドなどの古くから知られている国に限らず、第三世界ともいわれる五大ウイスキー産出国以外からの動きも活発です。このような環境の中で、ウイスキーのバーというのはその情報提供というかお披露目の場でもあったりするわけです。そんな中ではあるのですが、なかなか面白いウイスキーにたまたま遭遇しました。「ライターズ・ティアーズ(文豪の涙)」という名のアイリッシュ・ウイスキーです。

writer's tears
伝統的アイリッシュのライターズティアーズ

こちらはいわゆる伝統的なアイリッシュウイスキーのポットスチルウイスキーとモルトウイスキーをブレンドしたものです。ポットスチルのウイスキーというのは、その昔モルトに酒税を掛けられたことで知恵を働かせた蒸留所が、発芽する前の、要するに「モルト」していないただの大麦と混ぜてお酒を造ったのが由来。それ以降にこのポットスチルというのは、スコッチのモルトに対してアイリッシュのアイデンティティを表すような位置づけになっています。製造元はウォルシュ蒸留所という1998年設立の比較的新しいアイルランドの蒸留所。看板商品の一つで、ほかにもいくつかのバリュエーションがあり、その中にはミズナラ熟成の「ジャパニーズカスク」もあります。さて、この名前の由来なのですが、アイルランドを代表するものは数多くありますが、なんといっても文豪の国!(とはいっても一作も最後まで読んだことがないです。

画像クリックでウォルシュ蒸留所のページへ飛びます。
Literary giants, including writers such as George Bernard Shaw, Oscar Wilde, W.B. Yeats, Lady Gregory, James Joyce, Samuel Beckett and Bram Stoker, to name but a few.

そのような文豪が筆を執る際にインスピレーションを与えたのが、アイリッシュウイスキー。彼らはその味に唸り、涙を流した。その涙はウイスキーなのだ、というわけで「文豪の涙」。いやはや。なんとも詩的な表現です。ところが、19世紀に謳歌をしたアイリッシュウイスキーは20世紀に入り衰退。その座をスコッチに奪われます。しかし今日、アイリッシュがかつての輝きを取り戻しつつある中において、再び文豪を泣かせた味を再現しようとして生まれたのがこちらのお酒。このようなワケで自分も涙を流しながらこのブログをかいているという状況なのです(´;ω;`)。さて、なんの話だがよく分からなくなりましたが、とりあえずこのあたりで一旦区切ります。単にバー巡りをしている風でも、実はいろんなことを考えながら巡り歩いている舞台裏が少しでも伝われたらなありがたいです。ではでは。

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