スコッチウイスキーのティスティンググラスと言えば、グレンケアンで決まりです。

毎度お決まりのことなのですが、ネタに困ったらウイスキーキャストのログから探してきます。今回はスコッチウイスキーのテイスティンググラスとして今では定番となっているグレンケアン(GlenCairn)・グラスと、その創業者とのインタビューについてです。→"The Ultimate Whisky Glass (April 9, 2023)"グレンケアンのグラスは今日のウイスキーバーでよく見かけるティスティンググラスの一種です。価格もお手頃で、ウイスキーを楽しむための機能的にも優れています。スコッチウイスキーを提供するようなバーであれば標準的なグラスかなと思いますが、今のように世界中のバーに知れ渡り始めたのは2000年初頭くらいだそうです。ごく普通にあるイメージがありましたが、ウイスキーををより良く味わうのためのテイスティング専用のグラスが一般的に出来上がったのは実はスコッチウイスキーの歴史で言うと非常に最近であったことに驚きを感じました。 グレンケアンはこんな感じ。スタンダード向け。 プロフェショナル向けのグラス ウイスキー用のテイスティンググラスというのは、今まで撮影してきた写真とかを見返していても本当にバラエティに富んでいるなと思います。バーなどお店のオーナーのこだわりにもよる部分がとても大きいと感じています。アンティークやクラシカルなコレクションの中から厳選されたグラスに注がれて提供されることも珍しくないですし、モルトバーなどで棚の奥の方から出てくるような貴重なウイスキーを頼んだなら、やっぱりそのクオリティにしっかりとマッチしたグラスで出てくるかと思います。中身もさることながら、グラスも見た目以上に機能的な意味でも重要だからかと思います。味わいだけでなく、お酒の色合いや香りなど五感をフルに使って楽しむモノだからかもしれません。普通のロックグラスとかと違ってティスティンググラスはボディがずんぐりしていて淵が小さくなっているタイプが多いです。これは当然のことながらウイスキーのアロマを凝縮してノージングに適した形状になっており、また中の液体の色も良く観察できるようになっています。ブレンダーグラスとかプロフェッショナル向けのものになると、蓋までついているものもあります。このほかにショットグラスとかもありますが、モルトウイスキーを堪能するならやはりテイスティンググラス、中でもグレンケアンが一番広く使われているのかなと思います。値段も一つで1,500円くらいといったところでしょうか、家のみとかでも十分に使えますし、蒸留所やバーが記念用としてオリジナルのロゴが入ったグラスもよく見かけます。 テイスティンググラスあれこれ(1) テイスティンググラスあれこれ(2) ウイスキーキャストでの話に戻ります。グレンケアン創業者・レイモンド・デヴィッドソン(Raymond Davidson)氏がゲストで呼ばれていました。スコットランド地方特有の英語のアクセントが強くてあまり細かくは聞き取れませんでした。とりあえず話の中身で理解できたことに、ネットで見つけた関連記事の内容などを加えながらご紹介します。まずはこの方はもともとはアメリカのエンジニアリング会社・ハネウェル(Honeywell)に勤めていたエンジニアだったそうです。その後、「クリスタル関係」(crystall business)の仕事に転じた時、産業向け用途に将来性があることを感じとったそうです。元々スコッチウイスキーが好きで、バーでウイスキーを飲むときも、当時一般的であったタンブラーグラスではなくワイングラスで注文をしていたそうです。そうした自身の経験の中で、ウイスキーを楽しむために適した標準的なグラスがあるべきだと思い、自らのデザインで今日のグレンケアングラスのプロトタイプ(原型)が出来上がったようです。しかし、スコッチ業界に伝手が無く、この時はそのままお蔵入りしてしまいます。その後、リチャード・パターソン氏(こちらのブログでも紹介はしていますが、スコッチ業界で非常に有名なマスターブレンダで、スコッチウイスキーの名誉アンバサダーといっても過言ではない方です。→ブログ記事)に出会ったことで、この時のプロトグラスと彼の理念にっスポットライトが当ります。リチャードはノージングの天才と言われるほど、アロマと香りにこだわることで知られていますが、彼も理想のテイスティンググラスを追い求めていました。そのグラスの理想像が、まさしくそのプロトタイプと同じ特徴だったといいます。その後、リチャードらスコッチウイスキーのマスターブレンダーらと意見を交わしながら今日あるグレンケアンのグラスが完成するに至りました。(→こちらの記事を参照) https://greatdrams.com/the-creation-of-the-glencairn-whisky-glass-part-one/より 折よくスコッチウイスキーのブームとも重なり瞬く間に世界中への広がりを見せます。今では二人の息子さんらに経営を引き継いでいますが、顧客のニーズを大切にする経営哲学と家族経営のアットホームさを守りながら、スコッチウイスキーとともに更にグローバルな展開を進めようとしています。今後の活躍に益々期待していきたいところです。こうした町工場的な感覚といいましょうか。オーナー経営的な要素、職人気質、お客さんのニーズを何よりも大切にする姿勢というのは、日本の町工場ともよく似ているなあと感じます。スコットランドと日本は本当に遠く離れた地ではあるのですが、同じ島国という特徴からなのか、距離的に遠いようでも感情的には何か近いものを感じざるえません。自分もいつか機会があえば行ってみたいなあと改めて思う次第です。
LAMMAS(ランマス)世田谷本店で本場のチーズを知る。

LAMMAS(ランマス)世田谷本店で本場のチーズを知る。

LAMMASさん本店でアボンダンという珍しいチーズを買い付け 今回ふらっと訪れたのは前回のメスカル(→こちらのブログです)に続いて、玉川沿いを下って三軒茶屋の下馬に本店を構える本格派チーズ専門店LAMMAS(ランマス)さん。本場欧州さながらの鮮度と味を追求、量り売りのみでの販売でスーパーのような切り売りはしないポリシーです。ワイン専門の酒屋さんを訪れるとペアリング用のチーズとかもパックされて置いてあることが多いですが、ここまで本格的にカスタマイズしたショーケースやチーズセラーを準備した店は珍しいのではないでしょうか。店の奥ではワインも取り扱いされており、ウイスキーやジンなども少し取り揃えがありました。ワインを買ってチーズを買うのではなく、まずはチーズを買ってそれに合うワインは何かを考えるという、いつもと違う発想で今宵の楽しみを組み立てていくことになります。 こちらのお店の特徴といって良いのか分かりませんが、ヤギのチーズが豊富なのかなと思いました。「チーズ」というとハードとかソフトとか、カビの種類がどうとかあると思うのですが、多くは牛乳を原料としている点で共通しています。あまりヤギのチーズ(シェーブルチーズ(仏語)と呼ぶそうですが)っていうのは日本では馴染みがないのかなという印象です。こちらのお店では「やぎさんセット」とかもあったり初めての方でも楽しめそうな商品から単品モノまで、豊富な種類を取り揃えていました。サント・モール・ド・トゥレーヌ、セル・シュール・シェール、シャヴィニヨルなどが有名なようです(→詳しくはこちらのページなど)他にもチラシにあるロビオラトレラッティのように、ヤギ・羊・牛のミックスもあるようで、奥が深いです。本場のチーズというとオランダのゴーダチーズとかしかあまり印象に無いのですが、こちらで扱っているチーズはイタリアとかフランス産がメインのようでした。ワインとのペアリングをするにも奥のワインセラーからそのまま選べるので、プチヨーロッパ旅行した気分になれます。店舗もとってもオシャレな内装ではあるのですが、店内での飲食はできないようで、家に帰ってから楽しむということにはなりますが、本場さながらの味が国内に居ながら楽しめる贅沢が味わえます。世田谷界隈にはほかにも面白いお店があるので、また今後も紹介していければと思います。 追記:そういえば世田谷といえば、信濃屋本店もこちらのブログページで紹介していました。
余市のフィールドワイン、ピノタージュがとても美味しかった。

余市のフィールドワイン、ピノタージュがとても美味しかった。

ようやく桜の季節がやってきました。今年はどこも人出が多く、中目黒近辺の目黒川沿いもすごいヒトでした。駅の出口から人の波がドバドバと出ていて、目黒川にまで桜を見る気も無くなってしまいました。そんなわけで、山手通り沿いのザ・ワイン・ストアさんに寄ってきました。こちらのワインはナチュールワイン系がメインで、とにかくどれを飲んでも美味しい。値段もだいたい4,000円~6,000円くらいのボトルが中心なんですけども、どれを飲んでも大正解で、失敗しないワイン選びするならココと決めてます。今日は夜に魚料理という情報を得ていたので、何か軽やかな白ワインを1本買って帰ろうかと思いました。とりあえず箱のワインを見るんですけども、余市のワインが置いてありました。なんだろうと思って手に取ってみると「モンガク谷」というフィールドワインのようです。フィールドワインというのは正直初めて聞いたんですが、調べてみたら同じ畑で育てた異なるブドウをブレンドして作ったワインのことのようです。中身を見るとピノタージュがメインで、他にピノノワールとピノグリなどが入っているようです。ラベルもオシャレな感じであったので迷わずこちらに決めました。飲んでみての感想ですが、色合いがまず面白かったです。写真は無いんですけど、オレンジワインみたいな色目です。ピノタージュというのは南アフリカとかで主に栽培されている希少品種らしく、質感としてはスパイシーで芳醇な感じということでしたが、想像していたより軽やかで、でも確かに面白いニュアンス(あまりうまく説明できなくてスミマセンm(__)m)があり、とても美味しかったです。アッサリというワケでもなく、ドッシリした深みというワケでもなく、その中間くらいでしょうか。香りの立ち方がとても品があって個性的なんですけど、飲んでみると柔らかく飲みやすいので気づいたらほとんど無くなってた、という感じです(汗)。余市といえばウイスキーですけれども最近はワインでも注目されていますね。こちらのワイナリーは家族経営でフィールドワインに特化しているようです。ボトルデザインも下の写真の通りですがとてもおしゃれです。ラインアップはすべてブレンドタイプとなっており、ここにもこだわりがあるようです。詳しくは下のイメージクリックでモンガク谷さんのホームページに飛びますので、見ていただければと思います。 モンガク谷さんのワイン(ホームページより)クリックで飛びます 最後にですが今回ワインを購入した「ザ・ワイン・ストア」さんの場所は以下になります。不定期営業のイメージですが、週末の昼下がりは営業されてる確率が高い印象です。
池尻のタコスショップ2号店でメスカルを楽しむ。

池尻のタコスショップ2号店でメスカルを楽しむ。

池尻大橋から玉川通り沿いに歩いていると、面白そうなバーが結構並んでいることに気づきます。上は首都高が、下は東急田園都市線が走っていて、交通量も多いので、あまり歩くのに快適というワケではなく殺風景な気もするのですが、発見の多い場所です。玉川通は渋谷から二子玉川までの区間のことを指しますが、通りに沿って池尻大橋や三宿、三軒茶屋、駒川大学、更に二子玉川と世田谷区の東部を突き抜けて多摩川に出る感じです。渋谷へのアクセスも良いので、夜の〆とかに近隣にお住いの方らが立ち寄っていくスタイルなのでしょうか。華やかな渋谷とか二子玉の感じとは違って、高速道路の高架下のどんよりした雰囲気であるんですが、さすがにそこは垢抜けた世田谷の感じがあります。今回立ち寄ったのは、その中のオシャレな1軒、「TACOS SHOP」池尻大橋店です。店内はカウンターとこじんまりとした空間、スタンドバーちっくで若者向きかなという感じ。ミニマリスティックな店内ですが、フードは本格的なモノが提供されていました。ちょっと立ち寄って軽く飲んでいくサッパリとした感じ。渋谷とか目黒とかに比べて、客層も若い印象です。 タコスやトルティーヤなどのフードが本格派であったことや、お店の名前がタコスショップであることは後で知りました。スタンドバーかなあ、と思ったのですがその根拠がこちらに並んでいたボトル。ウイスキーとかワインではないことはパッと見て分かったのですが、銘柄がよく見えなかったので凸撃入店した次第です。中に入って商品のラベルをもう一度よく観察したのですが、聞いたことない名前ばかりで良く分かりませんでした。ただ、どうもテキーラらしいのかなあと思ってメニューを見たら「メスカル」の文字が。なるほどです、メスカルはほとんど分かりません。昔、蒲田の若林さんというところでちょっと嗜んだことありましたが、その時以来の挑戦になります。テキーラ、ジン、ラム、こういうのは最近になってようやく理解してきましたけど、それまでは全くといってよいほど知識がありませんでした。メスカルは簡単にいうとテキーラの仲間のようなものです、同じ原料(アガヴェ)を使っていますが、産地によって名称が異なり、テキーラとメスカルは産地の違いと考えれば良いかと思います。ここからはほとんど後付けの知識ですが、写真の左端にあるカラフルなボトルは「コスナル」というクラフトメスカルのようです。伝統的な製法と素焼き粘土器などを使って手作りに近い手法で作られているようで、国内流通のボトル価格も調べたところでは2万円くらいするようです。メスカルというとちょっとテキーラに比べて何となくですが大衆酒のイメージがありましたが、他のお酒もそうですがクラフトスピリッツのごとく高価なブランド価値をもつ銘柄も出てきているようです。右隣りのグルグルしたラベルですが、こちらも貴重なボトルなようで、ライシージャというテキーラやメスカルとは少し違うタイプの原料を使っているお酒のようです。野生のアガベを使うことが特徴らしく、生産量も限られていることからかなり希少でもるとのこと。こんなわけで、実はすごいボトルが並んでいたのですが、訪問した時にはそういう知識が全くなく、とりあえず一般的なモノをお願いします、ということで頂いたのがこちらです! 「アビタンテ」というメスカル。家族経営の老舗ブランドのようです。ストレートにチェイサーを頼んでいただきました。無色透明ですが、しっかりとした味わいで、率直にはボタニカルな印象でした。これも帰ってから後で説明書きをみたら「甘い香りとスモーキーさのバランスが良く余韻が心地よく続きます」ということで書いてあったんですが、まあ感じ方は人それぞれということでm(__)m。いずれにせよ、割って飲むにはもったいない質感がありました、ロックかストレートがおススメかと思います。隣では若いカップルがタコスにトッピングを色々のせながら楽しんでいましたが、まさにこれが醍醐味なんでしょう。ちょうど軽く食事をしたばかりであまりお腹が空いていなかったのと、外にはすでに列を為して待っていらっしゃるお客さんもチラッと見えたので、この一杯でサッと飲んで帰りました。また機会を設けて来たいと思いました。今度はタコスと一緒に楽しみたいですね。〆の一軒としてこんな素敵なお店があると最高でしょうね、さすがにここから帰宅するとなるとかなり大変なので、ちょっとご縁は無さそうですけど、近くに住んでる方はうらやましいです。まだ開店はしていませんでしたが、他にも面白そうな雰囲気のバーがいくつかあって、池尻エリアは大人の印象があったのですが意外に若さのあるところだなあと感じた次第。こういうところを歩いていると、高齢化とかそういう話がまったく別世界のように聞こえてしまいます。外国人観光客とかにはまだまだノーマークの穴場的なエリアかと思うので、そういう意味でもゆっくりと落ち着いた雰囲気で楽しむことができそうです。
カナディアンウイスキーの彗星、サンズ・オブ・バンクーバー

カナディアンウイスキーの彗星、サンズ・オブ・バンクーバー

今回はカナディアンウイスキーの話題をお伝えします。Whisky Cast(Episode988号)を聴いていたら、毎年1月にカナダの西海岸、ビクトリアで開催されているウイスキーフェスティバルの模様が紹介されていました(ビクトリアの位置は以下の地図を参考ください)。その目玉は最優秀賞であるウイスキー・オブ・ザ・イヤーに「サンズ・オブ・バンクーバー」というまったく無名の蒸留所が選ばれたことにあります。今回はその話題について紹介していこうかと思いますが、とりあえずその前にサラリとカナディアンウイスキーについて復習をしておこうかと思います。カナディアンウイスキーとは何か?という問いなんですが、「カナダで作られたウイスキー?」。まあ、たぶん正解には違いないのですが、もう少しだけ教科書的な定義の確認をしておきたいと思います。 https://www.travel-zentech.jp/world/map/Canada/Victoria.htmlより 「カナディアン・ウィスキーは、カナダの法律によって縛りがかけられている。それによれば、カナディアン・ウィスキーは、穀類のみを原料とし、これを麦芽の持つデンプン分解酵素によって糖化し、酵母によって醗酵させ、カナダ国内で蒸留し、容量700リットル以下の樽を用いて熟成を行い、最低でも3年以上の熟成期間を経たものである。」 wikipedia 簡単に特徴を要約すると、スコッチと違い原料はモルトというよりライ麦とかコーンが使われます。Barrel365さんのページからの引用ですが、「ライ麦主体のフレーバリングウイスキーと、トウモロコシ主体のベースウイスキーの2つをブレンドするという、一般的なカナディアンウイスキーの製法でつくられています。」とのことです。バーボンはメインがコーンなので、バーボンともちょっと違う感じで、ドライでさっぱりした感じが特徴なのかと思います。有名ブランドとして、カナディアンクラブとクラウンローヤルの2強でしょう。どちらも発祥は東部オンタリオ州で、五大湖の対岸のあたりになります。カナディアンウイスキーはもともとは米東部の影響を受けて誕生し、アメリカの禁酒法(1920~33年)の時代に、その代替需要として発展したというのがざっくりとした経緯になります。 主に東部で発展してきたカナディアンウイスキーの歴史から見て、西海岸のバンクーバーにある新しいクラフト蒸留所が、カナディアンウイスキーの最優秀賞を獲得したというのは、地理的なことを考えると非常に面白いのでないかと思います。カナディアンクラブやクラウンローヤルに期待するような、ライ麦をベースとしたスパイシーさのあるオーソドックスなウイスキーが定番のイメージですが、西海岸の遊び心にあふれるクラフトウイスキーによって多面的な、新しい展開を迎えようとしているのでないかということです。アメリカの西海岸にはすでにいくつかのチャレンジ精神に溢れるクラフト蒸留所が誕生し、成功を収めています。ウエストランド蒸留所やウエストワード蒸留所(→リカマンさんの紹介記事)などです。特に興味深い流れとして、「アメリカン・シングルモルト」という独自のブランドを確立しようとしている動きは特筆に値します。(→詳しくはこちらの記事など参照)今回、最優秀賞を受賞した「パームツリー&トロピカルブリーズ」はその名前から想像できるようにラムカスクのウッドフィニッシュで味わいの深いカスクストレングスの仕上がりになっているとのことです。1樽分のみの販売のため、受賞時にはすでに完売していたということです。これ以前に商品化されたボトルもピートウイスキー樽や自社で製造しているアマレット樽などを使用し独自のフレーバーを追求している、職人(アルチザン)気質が特徴。ジェンナ・デュバルド(Jenna Diubaldo)さんという女性の方がいわゆるマスターディスティラーのようです。他にジェームズ・ラスター氏(James Lester)と、マックス・スミス氏(Max Smith)を含めた若い3名が経営陣として運営をしているようです。ホームページを確認すると以下の写真があったので、おそらくその3名かと思います。ウイスキー造りのほかに、アマレットやウォッカ、ジンなども製造をしているようです。 https://sonsofvancouver.ca/aboutより 同社ホームページの商品販売のページを確認してみましたが、半分くらいはすでに売り切れとなっていました。クラフト蒸留所なので、生産量が多くない事情もあるとは思いますが、注目を受けて受注が殺到しているものと思われます。ウイスキーもすべて売り切れ。すでに新しいバッヂ「SUMMER ROAD TRIP ACROSS THE MIDWEST」のボトルが紹介されていましたが、今月(2023年3月)発売予定となりながら、すでに「SOLD OUT」の文字が。187本の限定販売なので、これもシングルカスク品でしょうか。もはや、プレミアムウイスキーのような感じですね。レシピを見ると基本はブレンドで、熟成も3~5年くらいとのことなので、まだまだ若いウイスキーなのかとは思います。蓋を開けてみないと分からない段階にもかかわらず、これだけの注目を受けるというのは、期待値の高さを証明しています。カナディアンウイスキーは他にも注目を受けているクラフト蒸留所が出来てきていますので、今後も話題が出てきたら着目をしていきたいと思います。今までの定番品と違うという意味では老舗ブランドではありますがサントリーさんが扱っている「アルバータライ」とか(→サントリーさん紹介記事)が手ごろな価格でかつ面白いのかなと思います。「スムースで軽快な飲み口に、リッチで複雑な味わいとバニラのような甘みの中にほのかなスパイシーさを感じられ」るとのことです。作り手がどのような経緯で酒造りを学び、どのようなウイスキーを目指して行くのかというのも非常に面白いかなと思っています。ウイスキー造りの中心では無いけれど、辺境でもない、ある意味適度な距離感にあることでユニークな発想が今後も出てくることに引き続き期待していきたいと思います。! もうちょっと他の記事も読んでみたい方へ、 >>クリックでウエストランド蒸留所の記事へ
モルトウイスキーイヤーブック2023年版をしっかり読んでみる(1)

モルトウイスキーイヤーブック2023年版をしっかり読んでみる(1)

モルトウイスキーのイヤーブック、その名も「Whisky Yearbook」。毎年、スコッチウイスキーに関する新たな情報がまとめてアップデートされており、最近の動向や注目の人、最新ニュースや背後のストーリーなどが細かく紹介されています。スコッチウイスキーの蒸留所はほぼ網羅して紹介されていて、スコットランドの主要な蒸留所は1ページを使って丁寧にその特徴や歴史、ブランドが写真付きで紹介されています。またその他の蒸留所についても新興蒸留所から世界各国のモルトウイスキーの蒸留所について幅広く紹介されています。そのほか、スコッチウイスキー業界の動向であったり、作り手の話であったりマーケットの情報などが簡潔にまとめてられていて、今年の趨勢を見極めるには最高の本だといえます。このスコッチウイスキーの楽しみ方ブログでは、昨年に初めてこの本をアマゾンで購入して記事を書いたのですが、1回限りの紹介で終わってしまいました。今年はもう少し掘り下げていきたいと思いますので、よろしくお願いします。(因みにページヒット数が最高記録をしたことでもうれしい記憶となっています。ありがとうございます。)このホームページで扱っている蒸留所の紹介記事についてはこちらのアップデート情報をもとにグーグルで検索をして調べています。このイヤーブックから受けている影響はかなり大きいです、感謝しかありません。日本語版とかもでれば良いと思うのですが、いまのところ自分が知る限りはこの英語版のみです。アマゾンでも頼めば普通に購入できるので、興味があれば一度手に取ってみてほしいです。値段も3,000円くらいなので、内容を考慮するならかなりお買い得かと思います。とにかく情報量が半端無いです。https://www.amazon.co.jp/Malt-Whisky-Yearbook-Ingvar-Ronde/dp/0957655398まずウイスキー業界の英仏二強を紹介します。あまり表立ってこれらの会社の名前が出てくることはないですが、イギリスの「ディアジオ(DIAGEO)」社とフランスの「ペルノリカール(PERNOD RICARD」社です。どちらもウイスキー以外に様々なアルコールブランドをグローバルに展開しており、ディアジオ社傘下のブランドとしてはスコッチならジョニーウォーカー、バーボンのハーパー、他にビールのギネス、ウォッカのスミノフ、ジンのタンカレーなどを保有しています。ペルノリカー社はフランスの老舗スピリッツメーカ2社が合併して誕生したのですが、それ以後各地のブランドを取り入れて成長してきました。アイリッシュのジェムソン、ラムのハバナクラブ、スコッチではシーバスブラザーズ社を傘下にして多数のブランドを保有しています。この2社が保有する銘柄をまずは以下に列挙していきます。(個人的な主観で、スーパーのリカーコーナーでも比較的良く見かけるかなというブランドは特に太文字にしています。特に理由も根拠もありませんm(__)m) DAIGEO- オフロイスクベンリネスブレアアソールブローラカリラカーデュークライヌリシュクラガンモアダルユーインダルウィニーダフタウングレンデュラングレンエルギングレンキンチーグレンロッシーグレンオルドグレンスペイインチガワーノッカンドゥーラガブーリンリンクウッドマノックモアモートラックオーバンローズアイルロイヤルロッホナガーストラスミルタリスカーティーニニック PERNOD RICARD- アベラワーアルタベーンブレイヴァルダルムナックグレンバーギーグレンキースグレンリベットグレントファースロングモーンミルトンダフスキャパストラスアイラこれだけのブランドを保有していることの特徴として、一つ挙げるとするならより良いスコッチを作るための戦略といえるかもしれません。シングルモルトに特化するだけであれば、これだけのブランドを傘下に持つ必要もありませんが、安定した品質のブレンドスコッチを世界規模のマーケットに大量に作ることを考えるなら、そのレシピの元となるブランドと供給キャパを確保することは至上命題になることは容易に想像がつきます。下の写真はとあるスーパーのリカーコーナーですが、下段にスコッチブレンドが並んでいます。ブレンドの方が、モルトよりもお手頃な価格で購入できるので、数量的には圧倒的にブレンドウイスキーを身近に見かけることが多いかと思うのですが、高級スーパー、酒屋さん、スピリッツなどの専門店とグレードが上がっていくにつれてその重心は大衆向けブレンドから、シングルモルト、更にはボトラーズなど高価なものになっていくイメージです。さて、その中でブレンドスコッチの有名銘柄として「ジョニーウォーカー」や「ホワイトホース」はディアジオ社、「シーバスリーガル」はペルノリカール社のブランドです。他にも、「ティーチャーズ」はビーム・サントリー社、「デュワーズ」はジョン・デュワー&サンズ社のブレンドウイスキーになります。 スーパープレッセのリカーコーナーに並ぶスコッチウイスキー さて、ここからは先に紹介した二大巨頭ほどのブランドを保有していないもの、複数のブランドを傘下に収めている企業となります。まずはブレンドウイスキーで名前の挙がった、ビーム・サントリー社と、ジョン・デュワー&サンズ社を手掛かりに紹介していきたいと思います。まずはビーム・サントリー社です。ビームはジムビームで知られるアメリカのバーボンメーカですが、サントリーが2014年にこれを買収したことでサントリーの子会社となりました。この傘下のブランドでもっとも有名なのはなんといってもアイラモルトのラフロイグでしょう。もとを遡ればラフロイグが今は亡きアライドドメク社(英)がフランスのペルノリカール社に買収され(2005年)、その結果傘下にあったブランドがアメリカのフォーチュンブランドや、先のディアジオ社などに分散してしまったことに端を発します。ララフロイグはジムビームなどを擁する米フォーチュンブランドの傘下になったのですが、それがサントリー社に買収されたことで、現在に至ります。他にもアードモア、ローランドのオーヘントシャン、ボウモア、グレンギリーがあります。次にジョン・デュワー&サンズ社です。調べてみたのですが、実はラムなどで知られるバカルディ社の傘下のようです。バカルディは他にもスコッチブレンドのデュワーズや日本ではほとんど出回っていないですが同じくブレンドのウィリアム・ローソンや、アイリッシュのティーリング、イタリアのスパークリングワイン、マティーニなどのブランドを有しています。スコッチの蒸留所としては、アバフェルディ、アルトモア、クレイゲラヒ、グレンデベロン(マクダフ)、ロイヤルブラックラが傘下にあります。さて、先のペルノリカール社や、ビームサントリー社、バカルディ社のように本場スコットランドではない資本が実はたくさんあるスコッチ業界。ディアジオも元はグランドメトロポリタンとギネスが合併したもので、スコットランドというようりはイングランドとアイルランドの連合のようなもの。こうして考えると酒造りとしてのスコッチはスコットランドの領土内で今も盛んにおこなわれているものの、その運営資本は外部から集めているという構造です。ある意味、伝統的な産業でありながらすごく国際化が進んでいるというか、日本の日本酒とかとは表向き似たような様相であっても実はすごくグローバルな国際的商品としての顔をもっているとも言えそうです。外資系企業の傘下になったブランドを挙げていきましょう。まずはタイビバレッジ傘下になったインバーハウス社のブランド群です。ハイランドのプルトニーを筆頭に、バルブレア、バルメナック、ノックドゥー、スぺイバーンがあります。ダルモアなどで知られるホワイト・マッカイはフィリピンのエンペラドール社の傘下になっています。ダルモアの他に、フェッターケイン、ジュラ、タムナブーリンがあります。南アフリカの飲料大手ディスティル社は、ブナハーブン、ディーンストン、トバモリーを保有。バーボンの国アメリカでオールドフォレスターやジャックダニエル、ウッドフォードリザーブなどで知られる巨大資本ブラウンフォーマン社の傘下にあるスコッチとして、ベンリアック社の傘下にあるベンリアック、グレンドロナック、グレングラッソーがあります。更にはロッホローモンドやグレンスコシアを有するロッホローモンドグループは中華系の投資会社ヒルハウス・キャピタル・マネジメント社によって2019年に買収され、その傘下にあります。他にもルイヴィトンで知られる世界的コングロマリットであるLVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)社は傘下に多数のアルコールブランドを抱えており、その中にグレンモーレンジ社のスコッチブランド、グレンモーレンジとアードベッグがあります。さて外資の傘下にあるスコッチモルトウイスキーのブランド名を続々と書き連ねてきましたが、ここからはようやくスコッチ資本によるスコッチウイスキーになります。まずはエドリントングループ。スコッチのロールスロイスとも呼ばれるマッカランを擁します。他に、グレンロセスやハイランドパーク、ブレンドのフェイマスグラウスなどがあります。家族経営の伝統を有する蒸留所は非常に少なくなりましたが、今でも生き残っているところがあります。もっとも有名なものとしてはウィリアムグラント&サンズでしょう。スコッチのシングルモルトで販売量のトップをグレンリベットと争うグレンフィディクが有名です。他に、アイルサベイ、バルベニー、キニンヴィーを有します。今では昔の勢いを失いましたが、キャンベルタウンのJ&Aミッチェルとスプリングバンクもあまりにも有名です。スプリングバンクの他に、キルケランのブランドで知られるグレンガイル蒸留所があります。家族経営で言えば、グラント家のグレンファークラスも有名です。他にもボトラーズの傘下にある蒸留所としては、エドラダワー(シグナトリー社)、ベンロマック(ゴードン・マックファイル社)、アードナホー(ハンターレイン社)、ストラスアーン(ダグラスレーン社)といったところでしょうか。他にクラフトディスティラリーとして、いくつかこのホームページで個別に紹介している蒸留所があります。メニューのDistillery(ディスティラリー)からプルダウンで見ることができますので、そちらで確認して頂ければと思います。
川越発のクラフトジンを目指して、中福本店の「棘玉(とげだま)」。

川越発のクラフトジンを目指して、中福本店の「棘玉(とげだま)」。

埼玉県で蒸留所といえば、もちろん、イチローズモルトの秩父蒸留所が真っ先に想像できるのですが、埼玉の小江戸として有名な川越近郊にクラフトジンを作る蒸留所があると聞いて立ち寄ってみました。どうしてこの蒸留所を知ったかというと、埼玉アリーナで開催された物産イベントでこちらの会社さん(㈱マツザキ)が出店をしていたからです。直接お仕事の上では関係が無いのですが(m(__)m)、興味本位でブースに立ち寄り、その場に居た方と話をしてみた次第。そしたら、なんと川越でクラフトジンを作られているということを(おそらく社長さんから)紹介されまして、初めて「棘玉」というクラフトジンのことを知ったという経緯です。すでにIWSCなどの国際コンペでも賞を獲得すrほどの評価があるのですが、クラフトジンを作り始めたのは最近のようです。本業は酒屋さんで1887年(明治20年)創業の老舗。クラフトジンを作る蒸留所があるのはその酒屋の敷地の中にあります。「武蔵野蒸留所」と呼びます。地域環境保全の観点から武蔵野の森を守る活動もされているということ。クラフトジンの原料となるジュニパーベリーの植林にも挑戦されているという話もお伺いしました。 中福本店と棘玉の看板 そんな話を展示会のブースでお聞きした後です。川越に用事があって出かけた際、足を延ばして蒸留所のある場所に立ち寄ってみました。「中福本店」という酒屋さんがあり、その裏手が林になっていて、その中に小さな蒸留所を見つけました。一般向け非公開ということで、中の様子を見ることはできなかったのですが、いかにもクラフトな感じの趣がありました。社長さんが直接酒造りをしているのかと思いきや、キーマンはこちらの記事を見て知ったのですが、社長の息子さんのようです。特徴としては、地元産のボタニカルを活用した川越産のジン造りを目指しているとのことです。ご存じの方もおられるかと思いますが、川越近郊といえば「狭山茶」(実は狭山茶とうのは川越茶から派生したものだそうですが)。他にも、山椒(さんしょう)だとか、越生(おごせ)のゆずだとか、近隣のボタニカルを使って独自のテロワールを表現しようとしているようです。そして、その目玉となるのが、敷地内に植えられたジュニパーベリーの木。日本でジュニパーベリーが育つなんて知りませんでしたが敷地裏の林に生育している若木を見つけました。もしかしたら何年か後に川越産のジュニパーベリーで造られた、川越オリジナルのクラフトジンができる日が来るのかもしません。 中福本店裏の敷地にある武蔵の蒸留所 裏手の林は散策道にもなっていていました。休憩ができるベンチも用意されていて地元の方々にも開放されているようです。こちらの酒屋さんは昔からこうした環境保全活動をされているようです。日本ではまだまだ「環境」をテーマとした酒造りは目立った動きにはなっていないような気もするので貴重な取り組みだと思いました。同時に、こうした動きがさらに広がっていってほしいなとも思います。お酒とはいっても穀物などの食物がベースになっているわけで、自然のオーガニックが母体。野菜や果物は有機栽培などがとてももてはやされますけれども、どうしたわけかお酒はあまりそこのところがクローズアップされず、「フレーバー」のみが注目されてしまっているような気がします。熟成した蒸留酒などはもちろん穀物感というのが埋没してしまうことも多いのですけど、スコッチの本場やアイルランドなどでは(実は原料の大麦を農業大国のフランスから大量に輸入している現状の問題意識もあるのかもしれませんが)テロワールにこだわる動きや地場で育った大麦を使っていることをクローズアップしているケースが最近増えているような印象を受けます。イチローズモルトの秩父蒸留所も地元産の大麦使用に力を入れているようですし、国産オークのミズナラ樽を自社で作るなど、そのフレーバーだけでなく地元のテロワールや環境を意識した酒造りをされていと聞いたことがあります。マツザキさんも同じ県内ということで、イチローズさんとも交流があるとの話。環境に配慮した酒造りが埼玉県から育まれていくというのはとても面白いです。立地的には都内からも非常に近く、西武新宿線の特急であれば1時間程度です。マツザキさんは新宿にも店舗を構えられているので、今後さらに人気が出てくるのではないかと思います。最近は焼酎などでもライチ香りが特徴な「DAIYAME」など国際コンペで受賞して認知度が上がったりと、ウイスキーや日本酒、ワインに限らず、世界的に注目される地元に根差したローカルな醸造所や蒸留所に元気があります。もしかしたらお住いの地域にも人知れずその界隈で注目されているようなところがあるかもしれませんね。 若いジュニパーベリーの木 https://www.1887.co.jp/

ピートウイスキーが無くなる?

whiksycastの2月19日付の放送は「The Barrel Problem」というテーマでした。もうタイトルを聴いただけで内容はおおよそ想像できるのですが、昨今のバーボンブームとクラフトブームでアメリカンオークの新樽需要に樽の供給が追い付かないという話。ご存じの通り、バーボンはアメリカンオークの新樽をチャーしたものを使用することが法律で決められています。しかし、その原材料となる森林資源は限られており、需要が増えたからといって簡単に増やせるものでもありません。また、樽職人だけでなくオークの木を伐りだす職人も家族経営の小さな業者が多く、危険を伴う仕事であることから若い世代に人気が無く後継者問題にも悩まされている状態とのこと。自前のクーパレッジ(樽を作る工場)を持ち樽を管理しているブラウンフォーマン社(※)でさえ不足分を外部から買い足しているような状況で、小さなクラフトディスティラリーはお酒を作ってもそれを熟成させる樽が調達できないということで悲鳴を上げているのだとか。ホワイトオークの森林資源に関する危機的な状況は以前にこちらのブログでも取り上げたので同記事を一読いただければと思いますが、今回はスコットランドのピート問題の気になる話題についてです。こちらも以前にチラッと取り上げた記憶があるのですが、当時は半信半疑でした。しかし、それがいよいよ本格的な流れになってきているようなのです。※"Brown–Forman Corporation はアメリカに拠点を置く会社で、蒸留酒とワインのビジネスでは最大手の 1 つです。" wikipediaより 泥炭としてのピートを考える。 スコットランド政府は「ピートの採掘禁止」について民意調査を開始したというのです。ご存じのとおりですが現在のスコットランド政府は、スコットランド独立を目指すスコットランド国民党が率いており、スコットランド政府の長は同党の党首二コラ・スタージョンです(注:2023年2月に電撃辞任を発表)。ウイスキーのピートというと、もうこれは説明をする必要もありませんが、ラガブーリンやラフロイグなど独特のピート臭で知られるアイラモルトに代表される通り、スコッチウイスキーに欠かせないオリジナリティのある大切な要素です。スモーキーな香りとフレーバーは、モルト加工をする際にピートを焚くことで生じるもので、愛飲家の間でも好き嫌いは分かれるかもしれませんが、スコッチウイスキーの聖地とされるアイラ島のモルトウイスキーとそのピートは切っても切り離せないものと言えるのでないでしょうか。(→このあたりのことは村上春樹さんの短編モノ記事などで)そのピートが採掘できなくなるということは、当然のことながらピートウイスキーの生産は困難になります。これはピートウイスキーという一つのジャンルがスコッチウイスキーの中から消滅することを意味します。このためすでに著名なウイスキー評論家からは懸念の声が出ているようです。そもそもピートはウイスキーのモルティングのためだけにわざわざ採掘されているワケではなく、その主な用途は「堆肥」として園芸やガーデンニング向けに使われています。ピートのモルティングとしての使用は1%程度ともいわれており、全体に占める影響は微々たるものであるというのが実態です。TheNational(スコットランド)の2月18日のネット記事によれば、現在の政府の計画によると、まずはガーデニング向けの使用を禁止して、その後に他の産業向け使用についても同様の措置を拡張していくというのものだそうです。この意図はスコットランドの湿地帯の環境保全であり、ピートランドは同じ面積で比べても森林の倍以上の炭素を蓄える能力があるといわれているからです。ピートを採掘するということは、蓄えられている炭素を排出することになり、気候変動の問題にも大きな影響を与えることになります。スコットランド政府として、ピートの採掘禁止は環境保全の政策を進める上で不可欠であり、2.5億ポンドを投じて2030年までに25万ヘクタールのピートランド復元を目標とするなど熱意をもって取り組んでいます。環境大臣のマイリ・マカランは「ピートランドはスコットランドの面積の3分の一を占め、文化的にも自然的にも重要な財産であり、良い状態で保つことで気候変動を抑止し、地域の環境保全の仕事を支えることができる」としており、スコットランド政府と国民党の環境問題に関する取り組みは真剣そのものです。こうした動きを受けて真っ先に影響を受けるのは園芸業界になりますが、環境保全からすでに理解を示しているようで、ピートを使わない代替材の利用を進めてきています。ピート採掘廃止の政策についても、自然環境の保全の観点からむしろ賛同してくるでしょう。そうなると、たとえ1%とはいえピートを利用しているスコッチウイスキー業界がこの動きにどう対応していくのかというのは今後注目されます。経済的な観点からすれば、スコットウイスキーの業界はスコットランドに大きな貢献をしてきていることは事実です。その貢献は、ただ単にウイスキーを製造して販売することだけにとどまりません。ウイスキーを生産する蒸留所とそれに関連して働く人々の雇用を生むだけではなく、世界中からウイスキーファンが辺境の地にある蒸留所に足を運び、観光客向けの需要も創出しています。イギリス全体で見てもスコッチウイスキーは重要な「輸出品目」であり、スコッチウイスキー協会(SWA)の調べによると、昨年(2022年)のスコッチウイスキーの輸出総額は60億ポンドを超え、数量ベースで21%増、金額ベースでは37%増であった報じています。(→"Scotch Whisky Exports Over £6bn for First Time")スコットランド政府の関係閣僚もこの快挙について祝福し、食料品加工の産業がスコットランド経済にとって重要であり、その中でもスコッチウイスキー業界が多大な貢献をしていることを認めています。このように、環境保全問題が取り上げられる中で、スコッチウイスキー産業の経済的な価値も当然のことながら認識をしているわけで、今後スコットランド政府とスコッチウイスキー業界団体で、ピート採掘やその使用についてどのような展開になっていくのか、引き続き注目をしてきたいと思います。(→スコッチウイスキー業界における環境問題を前面に出したウイスキー造りといえば、ナクニアン蒸留所などが有名。今後もこうした環境保全の意識をもった酒造りは大切になってくるのではないでしょうか。)
ラウンジ&バー グラン・ブルー 伊丹空港店にて搭乗前の至福の時を過ごす

ラウンジ&バー グラン・ブルー 伊丹空港店にて搭乗前の至福の時を過ごす

先日久しぶりに伊丹空港を利用しました。大阪の表玄関ともいえる伊丹空港。発着する便がおおむね羽田向けということもあり、第二の経済都市の玄関として見るならばちょっと物足りない感じも否めない、またの名が「大阪国際空港」であることはとりあえず置いておきましょう。さて、以前の個人的な楽しみはというと、羽田行きの9番カウンター手前のカウンターバーでカレーライスを食べることくらいだったのですが、とにかく一度保安検査を通ると見事に何もすることがないのが残念なところでした(スミマセンm(__)m)。ところが、今回利用して改めて気づきました。ここ最近続いている改修工事により利用できる施設が増えて、新たにオープンしてカフェやレストラン、お土産屋さんなどが登場。何やら今までとは違うオシャレな感じが芽生えてきているではないですか。Come on !!。??(汗)そんなわけで新生伊丹の保安検査を通って、さあ何をするべし!と思いながらフラフラしていたら、目に飛び込んできたのがこちらです!国際空港らしい?!回遊式の導線の先に忽然と現れました。ちょっと調べてみたら神戸の高級ホテルが運営するバーとのことで、その雰囲気はなるほど、ちょっと大阪らしからぬ?!m(__)m、スタイリッシュな雰囲気でございます。ピカソちっくな絵が飾ってあったり、昔の伊丹空港とは打って変わってというか垢抜けています。(ところでちょっと地理的な話ですが、伊丹空港の敷地は兵庫県と大阪府にまたがっていて、「伊丹市」は兵庫県になります。閑話休題。)店内はカウンター席とテーブル席があり、カウンター席からは滑走路から離陸する飛行機が見物できます!と言いたかったのですがすでにドップリ夜が更けていてそれはかなわずm(__)m。故にか分かりませんが、カウンター席には人気(ひとけ)がありませんでした。というわけで、堂々と真ん中くらいの席に陣取り、ハイボールとミックスナッツを勢いよく注文。ブレンド銘柄指定のハイボールが1,000円くらいで、ナッツが300円くらいな感じだったと記憶。テーブルチャージとかは無かったので、想像していたよりかはリーズナブルな価格でした。もちろん、なんといってもサントリー山崎のお膝元とだけあって、このようにバーカウンター後ろの棚は山崎ショールームになっていました。こちらの値段設定も、まあ突っ込みどころありますけど、こんなもんかなという感じ、モルトバーというよりかはカジュアルダイニングバーというところでしょう。ここは大人しく山崎のボトルを眺めながら、スコッチハイボールを楽しむのが最高のコスパなのかもしれません。 バーカウンターから眺める山崎の旅 写真を撮るのを忘れたのですが兵庫県の丹波地方という大納言小豆とかで有名な山間部にある西山酒造場が造りしている「プラムワイン」のボトルがカウンターに鎮座。面白そうだなと思って試しに一杯頼んでみました。プラムワインとは言っても、原料は「梅・グラニュー糖・醸造アルコール・清酒・ブランデー」となっているので、実際に梅を発酵させたものではなく、プラム(梅)付けのお酒ということなのでしょう。アルコール度数が20度弱だったので、どんなものかストーレートで頼んでみましたが、砂糖が入っているだけあって甘いです、当たり前か。これはお湯割りとか(このときは冬でした)の方が良かったかなとも思いましたが、スパークリングワインなんかに使われるフルート型のスリムなグラスに入れられて出てきました。あまりこういったリキュール類をバーで飲むことは少ないのですが、離陸前のソワソワした時間に気持ちを落ち着かせるための束の間の至福の一時を堪能することができました。 お財布の中に余裕のある方にはファーストクラスも用意されています メニューをパラパラめくっていたら、フードやデザートメニューもかなり充実しているようでした。最後ら辺のページには山崎の貴重なウイスキー特集もあり、値段はこんな感じです。判断はお任せといったところですが、カウンター内に飾っていたいボトルは21年ものまででした。国内旅行の旅の記念にはちょっとアレですが、海外からはるばる海を渡って来た方とかは違った見方をするのでしょうか。訪日客の平均出費金額は一人当たり15万円(2019年調べ)とかいうらしいので、高い安いは一概には言えないものです。何はともあれ世界のYAMAZAKIを提供するにふさわしいバーが大阪国際空港にできたことは非常に喜ばしいことではありませんか!これを祝して、スランジバー!! GLANDBLEU>>