本来ならバー巡りの記事に投稿すべきところを、表の特集記事に持ってきたのには訳があります。一般的に、向こう(スコットランド)のウイスキーボトルをこちらで飲む場合、正規ルートの販売品や商社経由での並行品などの違いはあれども、基本的に同じラベルが貼って有れば、当然のことながら、同じものを飲んでいるはずだと、少なくとも私はこのバーを訪れるまで信じていました。もちろん、蒸留酒であるウイスキーはきちんと保管されてさえすれば基本的に劣化はしません。それどころかボトルの中でさらに味が熟成されるという事もあるようですし、また同じラベルのウイスキーでも昔の方が美味しかったというような話もよく聞きます。更に細かく言えば、同じラベルものでも毎年瓶詰めされるものの「出来栄え」が、その年その年で微妙に異なるということもあります。これは、ウイスキーというものが自然の恵みと時の経過によって成り立つ以上、完全に同じものを複製することはできない、ということを改めて認識させられる事実でもあります。

そうは言っても、同じラベルが貼られたものであるなら、中身に多少の「誤差」があったとしても、基本は同じなのではないか?というこの主張は全くもっともなものだと思っていました。ところが、然(さ)に有らず、というのが本稿で言わんとすることなのです!

どういうことなのか、じれったく話を引き延ばしても仕方が無いので、まずは以下の写真をご覧ください。一見どこにでもあるようなボトルに見えますが、裏側に「UK」の文字が。これは要するにイギリスで購入したものであるという証です。「それが、何か?」という事なのですが、今回訪問した「バー・アイラ島」さんにて、いつも頂いている「日本流通品」と、「現地品」の飲み比べをさせて頂きました。飲んでビックリ。味が違います。何でしょう、香りや味の質感は確かに同じ系統ではあるのですが、その重みや余韻の強弱が全く異なる、といった感じです。とても不思議な感覚です。

表向きは一見どこにでもあるようなボトルに見えるが、、、
裏面にUK(イギリス)の文字(現地で購入のボトルの証)

毎年アイラ島を訪問しているというオーナーに話を伺ってみると、日本向けのウイスキーボトルは船便のため、輸送中の保管環境が品質に多少の影響を与えているのではないかとのこと。船便の場合は、ヨーロッパから喜望峰周りだと、赤道を二回渡ることになります。赤道直下の過酷な環境で、ウイスキーの質感が変わっている可能性もあるのか、それとも何か他の理由があるのか、はっきりとは分かりませんが、確かに味わいが違います。オーナーはこのことを発見して以来、毎年アイラ島を訪問して、現地でアイラウイスキーのボトルを調達されているそうです。(大変に恐れ入る話です。ウイスキー愛、というかアイラ愛の塊ですね!)日本からアイラ島に行くには、ロンドン経由し、グラスゴーに行き、そこからさらにプロペラ機でアイラ島に飛んでいくという大遠征。そこまでのことを考えるなら、銀座の街角にあるこの「アイラ島」はとても身近に本場の味を味わえる貴重な場所ですね!そして、なんとお店のボトルはほとんど全てが現地調達品です。店内は基本カウンター、ひとつだけシックなテーブル席がありました。コーヒーの焙煎もされていて、お昼はコーヒーの営業もされています。(こちらも格別です!)

唯一あるテーブル席はシックな空間