復活する「ローランドの女王」ブラッドノック。

メルボルン育ちの実業家デービッド・プライア氏が2015年、当時閉鎖していたブラッドノック蒸留所を購入。プライア氏はオーストラリアでfive:amというオーガニック・ヨーグルトのブランドを立ち上げに成功。2014年に会社を売却してスコッチの蒸留所運営に乗り出しました。

Ian MacMillan

ブラッドノック蒸留所はグラスゴーから南西に140㎞ほど離れたところに立地します。スコットランドでも最も古い蒸留所の一つで、オーストラリア人がスコッチ蒸留所のオーナーとなるのは初めてのことです。プライア氏は購入と同時に500万ポンドを投じて、蒸留器などを新しく導入して大規模改装しました。蒸留所の責任者としてはマスターディスティラーにイアン・マックミラン氏を招へい。同氏は長くBurn Stewart社のマスターブレンダーを務め、ディーンストンやトバモリー蒸留所の改装にも携わった経歴の持ち主です。

蒸溜所を購入した際に貯蔵庫に眠る数千もの樽も同時に入手した訳ですが、マックミラン氏は劣化した樽のウイスキーを良質な樽に詰め替えを行いました。2016年にその詰め替えた樽のウイスキーをリリース。主力はノンエイジで主にバーボン熟成(若干カルフォルニアワイン樽も含む)のSamsara、オロロソ熟成の15年Adela、そして25年のTaila。Tailaの新しいニュアンスとして、25年のポートフィニッシュと、27年のバーボンフィニッシュもその後にリリースしています。

ブラッドノック蒸留所の歴史について少し触れます。元々はJohn&Thomas McClelland氏らにより1817年に創設。以後、100年近くはMcClleland家により運営され、ローランドにある同蒸留所は”Queen of the Lowlands”とも呼ばれその名を轟かせました。20世紀に入り、何度かオーナーが変りながらも蒸留所は稼働を続けていきます。1980年代にはArthur Bell & Sonsにより運営され生産能力の増強やビジターセンターの開設が行わるなどしていました。

現在、マスターディスティラーはマッカランから移籍したニック・サヴェッジ博士。同氏は博士課程をオーストラリアに学んだ。Diageo社、William Grant & Sons社、そしてマッカランにおいては新設の蒸留所立ち上げや数々のヴィンテッジ品プロデュースを指揮しました。当初、ローランドの小さな蒸留所への移籍は業界内でも驚きをもって迎えられましたが、ウイスキーの品質への追及へのこだわりという観点から、自らの新たな出発点を見つけたようです。