左はクラガンモア12年のボトルの写真です。クラガンモア(CRAGGANMORE)のCの左下をよく見ると、蒸気機関車が走っているのが見えるかと思います。なぜウイスキーのボトルに機関車が描かれているのでしょうか?クラガンモア蒸留所の位置するスコットランドのスぺイサイド地区ここはロンドンやグラスゴーなどイギリス南部の都会と離れた辺境の地でした。ウイスキー作りには、原料となる大麦や、熟成に使う樽などを蒸留所に運び、製品として樽詰めされたウイスキーを南部の消費者の元に届ける必要がありました。
樽は「ホッグスヘッド」(豚の頭)と呼ばれ、200リットル以上の容量があるものです。1869年にジョン・スミスによって設立されたクラガンモア蒸留所。この地が選ばれた理由の一つが、鉄道とのアクセスでした。蒸留所が設立された6年前の1863年、ストラススペイ鉄道が蒸留所近くに開通しました。熱狂的な鉄道好きでも知られたジョン・スミスは、鉄道をウイスキー造りに結びつけました。ストラススペイ鉄道から引き込み線を自身の蒸留所敷地に引き込み、原材料や製品の運搬に鉄道貨物を利用したのです。1887年、ウイスキーの樽を満載した特別列車「ウイスキー号」が出発します。残念ながら彼はその前年にこの世を去りましたが、この後鉄道貨物はウイスキーの運搬に欠かせないものとなっていきます。ボトルに描かれている蒸気機関車は、往時の活躍を伝えるものなのです。
クラガンモアは日本でも有名なブレンドスコッチOLD PAR(オールド・パー)のキーモルトとしても知られています。主力は12年とポートパイプ(ポートワインの空き樽)フィニッシュのDistiller’s Editionです。