蒸留所はハイランド・インヴァネス近郊のディングウォール(Dingwall)に位置します。2015年地元農家のジョン・マッケンジー(John McKenzie)氏が蒸留所建設の計画を発案。翌年に地元議会に計画書を提出します。約3億円の資金を3,000人以上の地元住民からの出資を調達。2017年から建設を開始し、2018年に稼働を始めたコミュニティ・クラウドファンディングによる初めての蒸留所です。製造に当たってはウイスキー界のエキスパートで、DIAGEO社で複数の蒸留所運営に携わったダンカン・テイト(Duncan Tait)氏を招聘しました。蒸留所の名前はかつてこの地に存在した同名の蒸留所(1879年開業、1926年閉鎖)を受け継いだものです。初のシングルモルトウイスキーのリリースは2021年末を予定。蒸留所のエネルギー源は風力やソーラーなどの再生エネルギーで100%自給する未来志向のエコロジータイプ蒸留所。蒸留に使うスチームボイラーもウッドチップを使ったバイオマスを使うなど環境への配慮を徹底しています。

元空軍のヘリコプターパイロットでもあった
モートラックなど多数の蒸留所で勤務
空飛ぶ百姓(THE FLYING FARMER)???
INSPIRED EDINBURGHでのインタビューにて/youtube

蒸留所計画のいきさつはかなりユニークなものだったとインタビューで語っています。マッケンジー氏はもともとヘリコプターのパイロットで、軍と民間で20年以上、トータル8,000時間の飛行経験を持つほどの超ベテラン。2007年に生まれ故郷のディングウォールで農場を購入した後は、農家とパイロットの兼業で「空飛ぶ百姓」と言われていたそうです。その彼は、パイロットとしてスコットランド各地を飛び回っていました。彼の操縦するヘリコプターに乗るクライアントは会社の重役などが多く、その中にはスコットランドの蒸留所を経営する方もいました。そしした出会いを通じて蒸留所ビジネスの魅力を少しづつ感じてていったと言います。そんなある時、ロシアからの富豪をアテンドする機会がありました。その時、自分の故郷(ディングウォール)にも蒸留所が栄えていた古い歴史などを語りながら、もしかしたら自分も蒸留所の運営ができるのでないかという考えが初めて芽生えたそうです。

「それは一つのタイミングだった」と彼は語ります。ちょうどそのときクラウドファンディングによって自身の農場の近くに風力発電を建てる事業計画の立ち上げに成功していた彼は、次に何をしようかと考えていたからです。にわかに芽生えていた蒸留所の計画がもしかしたら実現できるチャンスではないかと思い、協力者を募り動き始めました。結果的にはコミュニティが所有する世界でも初めての蒸留所としてグレンウィヴィス蒸留所の計画は見事に成功します。彼が目標としていたLEGACYが作り上げられ、更にこれからは支えてくれたコミュニティに恩返しをしていく段階にあると説きます。

グレンウィヴィスのボトル
グレンウィヴィスのヴィンテージボトル@てんてこまいさん

2021年のファーストリリースは主に地元の出資者などに向けて出荷され、待望のセカンドリリースボトルがこちら。2018年蒸留の3年物で、熟成カスクなどみるとファーストリリースと同じかと思います。主にテネシーバーボンを使っているようですが、そこまでバーボン的なニュアンスは感じられずこれぞスコッチという感じのモルト感たっぷりな一杯でした。セカンドリリースも8000本で、いわゆるファームディスティラリーな感じなので今後も国内ではそこまで出回ることは無いような気がしています。貴重な一杯でした。てんてこまいさんのセンスに乾杯!