スペイサイドに6代続く、家族経営で有名な老舗蒸溜所です。1836年にロバート・ヘイが創業し、現在の経営者であるグラント家の初代ジョン・グラントが1865年に「蒸留所を含む土地」を購入しました。先代は元々牧場を営んでおり、市場との中間に位置するこの土地を「中継地」として利用したかったようです。その後、1870年にジョン&ジョージ・グラント社を立ち上げ、本格的にウイスキー造りに乗り出し今日に至ります。

グレンファークラスの特徴は家族経営により今日まで生き延びてきた数少ない蒸留所であるということです。1950年代の不況時、4代目ジョージ・S・グラントは大きな決断をしました。当時主流であったブレンダー向けの販売を少なくし、代わりに蒸留所の原酒を自社ブランドの「シングルモルト」として販売することにしたのです。また不況で需要が落ち込んだにも関わらず、敢えてウイスキーを作り続けました。周囲の人たちは、彼の試みに懐疑的でした。しかし、彼の読みは当たり成功を収めます。「ブレンド」に加えて、「シングルモルト」という飲み方も、今では既に定着しました。

グラント家のウイスキー造りの思想は「次の世代に繋ぐ」意識にあります。今作っているウイスキーは自分が飲むためでは無く、自分の子供、孫のために作っているのだ、ということです。現在、5代目ジョン、6代目ジョージが経営に携わっています。6代目ジョージにはお子さんが二人いらっしゃるそうですが、両方とも女の子とのこと。7代目当主は女性になるのか?会社の名前も変わるのか?興味が尽きないですね。

シェリー熟成が特徴

最近ではこの蒸溜所を買収したいというオファーも多く寄せられているようですが、今のところ丁重にお断りしているようです。ぜひともファミリー経営の伝統を次世代にも引き継いで欲しいと個人的には願っています。さて、テイスティングですが、グレンファークラスの特徴は何と言ってもシェリー樽熟成。これに尽きます。そして数多くのヴィンテージ樽の存在。家族経営で安定的に生産してきたが故だと思います。主力は8年、10年、12年、15年、21年、25年。日本では17年も。他に限定販売で30年、40年、果ては50年というのもあるようです。カストストレングスの105はサッチャー英首相が愛したことでも知られます。また1954年~2004年までのヴィンテージ樽をヴァッティングさせたFamily Casksシリーズも有名です。ウイスキーの熟成期間によると味の変化をじっくり楽しみたいなら、グレンファークラスが一押しです。