https://www.thewhiskyexchange.com/
「メソッド・アンド・マドネス」シリーズの最新版で、2019年9月にリリースしたワイルドチェリーフィニッシュの限定ボトル。(このボトルとペアで「アカシア」フィニッシュもあり。)仏ペルノリカール傘下のアイリッシュディスティラーズ社ミドルトン蒸留所にて造られたエクスペリメントシリーズで、オフビート(普通と異なる)なアイリッシュウイスキーを提供する。

Q:「メソッド・アンド・マドネス」???

スコッチウイスキーのページにいきなりアイリッシュが登場というわけで、少し解説しておきます。「メソッド・アンド・マドネス」(METHOD AND MADNESS)というのは、アイルランドにあるミドルトン蒸留所で造らている、アイリッシュディスティラーズ社のブランドシリーズで、2017年からリリースされています。その目的は、「アイリッシュウイスキー」の限界を超えるコト。”メソッド・アンド・マドネス”という名前はシェイクスピアの『ハムレット』の中の一節「狂っていいるものの筋は通っている」に由来するそうです。
”Though this be madness, yet there is method in't.”
要はアイリッシュの伝統的な作り方(METHOD)を守りながらも、新しい世界を切り開く狂気さ(MADNESS)を持ち合わせる、ということがブランディングテーマとなっているようです。なんか、すごく知的でおしゃれな発想ですね~。
開発責任者(Master of Maturation)のケヴィン・オゴーマンは(Kevin O'Gorman)はワイルドチェリーボトルが2014年から着手されていたことを明かした上で次のように述べます。
Kevin O'Gorman
"ワイルドチェリーは、これまでに扱ってきた他の木と違い、非常に稀有でポーラス(多孔質)な性質でした。ですので、完璧なフレーバーバランスを持つウイスキーを造ることが出来たのは、非常に大きな成果で、アイリッシュ・ウイスキーで史上初であると考えています。そのフレーバーは、ココナッツファイバーとジンジャーの香りに始まり、フレッシュなグリーンハーブティーもしくは紅茶、そして(アイリッシュの)ポットスチル特有なはっきりとしたスパイシーさ。最後はピリッとしたスパイシーさとヘーゼルナッツ感の新鮮な余韻を残します。”
*「ポットスチル」…大麦麦芽と未発芽の大麦の両方を原料に用いるアイリッシュ特有の製造方法
バーボンとシェリー樽で熟成したウイスキーをワイルドチェリー樽で後熟。孔質なワイルドチェリー樽で寝かすことにより、木とウイスキーは熟成期間中に密度の高い反応をします。その結果、上記のような複雑なフレーバーが生まれるのだとか。因みに、もう片方のアカシア(フィニッシュ)は、チェリーとは全く逆に締まった材質であったため、熟成による反応がとてもゆっくりしたもので忍耐を要するものであったと言います。
目黒のカーディフさんにて

ペルノリカール社は英DIAGEO社と並ぶ世界最大手のスピリッツメーカー。1975年統合の後、シーグラム、アライドドメク、ヴィンスピリトなとを次々に合併。ブランドポトフォーリオにはアブソルート(ウォッカ)やハバナクラブ(ラム)、ビーフィーター(ジン)の他に、ウイスキーではバランタイン、シバス、グレンリベット、そしてアイリッシュのジェムソンなどを保有。

アイリッシュディスティラーズ社は1966年にパワーズ、ジェムソン、コーク蒸留所の3社合併で誕生。1988年に買収によりペルノリカール社の傘下に。アイルランド国内でのワイン&スピリッツメーカーとしては最大手で、ジェムソンなどの世界的なブランドを保有している。

ミドルトン蒸留所はアイルランド第二の都市コーク近郊に位置する巨大蒸留所で、ジェムソンが造られているのもココで、その他にもパワーズやパディ、タラモアデューなどグレーンやブレンド含めた複数のブランドが一か所で同時に生産されている。