SUSTAINABILITYを求めて

創業者のアナベル・トーマスさん

ナクニアン蒸留所はスコットランド西部のドリムニンDrimninという小さな村にある。マル島の対岸にあり、本土に位置するが蒸留所に行くにはグレンコー(Glencoe)の町からの船を利用し、更に田舎の一本道を30分かけてようやくたどり着くという、最も辺鄙な場所。「ナクニアン」という名前は地元の人が崇めた森の守護をつかさどる女神のことで、環境との完全な共存を目指す蒸留所のアイデンティティでもある。蒸留所はアナベル・トーマスさんが、この土地からインスピレーションを受けて2013年から計画を立ち上げ、資金集めなどに奔走しながらも、2017年から蒸留所は稼働を開始。2020年にようやく初めてのスコッチウイスキーがリリースされた。

蒸留所はマル島を望む辺境の村に位置する

蒸留所の特徴は、環境との共存を徹底的に目指していること。原料の大麦は、スコットランド産の無農薬栽培を100%使用。蒸留所の電源は周辺の森から得られる木材を活用したバイオマス発電を主とし、不足分を電力市場から再生エネルギーを調達して補っている。冷却に使う「水」もこだわり。近くに水源となる川が無い場合は、貯水等などを建てることが一般的であるが、電源や薬剤の使用が避けられない。そこで、専用の池を作り、そこに貯めた水を循環して利用している。もちろん、夏と冬では温度が違うが、池の水温に合わせて蒸留工程を調整しているのだとか。

蒸留器は新興のLHステンレス製を使用

廃棄物も徹底した管理を行っている。糖化槽に溜まった穀物の搾りカスである「ドラフ」は家畜の餌とし、蒸留の際にできる廃液は畑の肥料の足しとしてリサイクルをしている。リサイクルはパッケージにおいても同じ考えを踏襲、新しい瓶を使わず、リサイクル材で作られた瓶を使い瓶詰めをしている。このような努力により、いわゆる製造工程での「カーボンゼロ」を目指しているのだ。アナベルさんは、かつて蒸留所を立ち上げるにあたり、スコットランドの蒸留所を見て回った。このとき、美味しいウイスキーができる背後で、その生産過程で環境への配慮が疎かにされていることにも気づいた。これをきっかけにして、オーガニックで周辺環境とも共存できる「サステナビリティ」をモットーにしたウイスキー造りに目覚めることに。

イースト(酵母)にもこだわり、ワインやラム用などを試験中という

出来たばかりの蒸留所ではあるが、まだまだ色々なプロジェクトが進行中のようだ。環境への取り組みとしては、蒸留器の洗浄に使う「洗浄剤」も化学物質を使わず酵素を活用したオーガニックなものにする取り組みが行われている。また、ウイスキーの味わいにも当然こだわりが。この蒸留所では「酵母」を活用した味わいの違いを探求しており、ワインやラムなどに使われる酵母を使ったお酒造りが行われているとのこと。こうしたバリエーションの変化の楽しみも今後楽しみである。とはいえ、まずはファーストリリースのシングルモルトウイスキーを楽しんでみたいところだ。

貯蔵庫に眠るウイスキー

ナクニアンのテイスティングなら、先日もご紹介した目黒通りのバー・カーディフさんにボトルがもうじき入荷されるようなウワサが。

クリックでカーディフさんHPへ。