2016年にイングランド中部のダービーシャーに地元出身のマックス&クレア・ボーガン夫妻により設立。ジンとラムの生産に始まり、2021年10月には待望のシングルモルトウイスキーのリリースを予定。更なる蒸留所の拡張計画と国内外での認知度向上のためクラウドファンディングを通じて1億円以上の資金集めに成功。今後の更なる成長が期待される。蒸留所責任者のショーン・スミス氏はコッツウォルズ蒸留所から移籍。
蒸留所はマンチェスターやシェフィールドに近い、ピーク地方(Peak District)というイギリス初の国立公園に指定された風光明媚な場所に位置する。
蒸留所設立の経緯についてマックス氏が語るところでは、特に業界での経験などがあった訳では無く、ただの一人のウイスキーファンに過ぎなかったという。一つのインスピレーションとしては、2011年にロンドンでクラフト蒸留所を立ち上げたダレン・ルーク氏のザ・ロンドン・ディスティラリー・カンパニー(TLDC)があったそうだ。(同社はロンドンで約100年ぶりのウイスキー蒸留所を立ち上げ、2019年にイングリッシュ・シングルモルト「109」をリリースした)
その話を知ったときに、自分も同じ様にウイスキー造りをやってみたいと思ったという。ちょうど自分の生まれ育った故郷であるダービーシャーに戻ったマックス氏は、同地にウイスキー蒸留所がかつて存在したことが無かったらしいことを知る。そこから4年か5年をかけてその想いが深まり、「夢」は「ビジネスプラン」へと発展していった。業界への知見が無かったため不安はあったものの、後に後悔したくないと気持ちが勝り、2016年に一念発起し立ち上げたのが、このホワイトピーク蒸留所だという。
蒸留所の責任者(Head Distiller)となった創業メンバーのショーン氏もまた蒸留所のあるピーク地方の出身。当時コッツウォルズ蒸留所で勤務していたが、マックス氏の計画を母校のヘリオット&ワット大学の恩師であるアニー・ヒル(Anne Hill)女史から紹介されて興味を持ち、ホワイトピークで働くことを決めたそうだ。
原材料のモルトは、イングリッシュウイスキーでは珍しく、ライトピートな仕様でクリスプ社から調達。スチルは独自デザインでエジンバラ近郊のマクミラン社製。蒸留所のレイアウトは将来の成長も考えゆとりのもった設計に。これはアメリカでクラフトウイスキーのパイオニアとしても知られたチップ・テート氏の助言によるものだという。(チップ・テート氏は2008年にテキサスでバルコネス(Balcones)社を立ち上げ、ブルーコーンを使ったユニークなウイスキーをリリースするなどして数多くの賞を獲得した。)
2018年12月には蒸留所のファウンダーズ・クラブ(創業者クラブ)として、「テンペランス・クラブ」を創立。地元の人を中心に関心を集める。その特徴としてマックス氏が大切にしているのが、クラブを通じて支援してくれている人(クラブメンバー)との繋がり。毎年開催されるウイスキーのイベントには、クラブメンバーは同伴者を呼ぶことができるか、一般向けには広く開放はしていない。大勢の人が集まれば入場制限などをせざる得なくなるが、そのことで大切なクラブメンバーが参加の機会を奪わてしまうことも考えられる。なので、敢えて小さな規模に抑えながら、ホワイトピーク蒸留所の歩みを共にしてくれる仲間との密接な関りを大切にしているのだと言う。