モルトウイスキー年鑑(2022年版)

編集中ですm(__)m

モルトウイスキーイヤーブック2022

2022年明けましてよろしくお願いいたします。さて、早速ですがこちらの本「モルトウイスキーイヤーブック2022」を新年挨拶代わりに購入しました。スコッチのトレンドリサーチには必携。毎年出ていて、実は10月くらいには発刊されているみたいです。年が新しくなったのでアマゾンで調べてたらすでに入手できる状態になっていたのでオーダー。即ゲットできました。

スコッチウイスキーに興味があって、まだ読んだことが無ければ一度は目を通してみると良いと思います。英語で書かれていてちょっと難解ですけれども、そこまで複雑な内容でもないのでだいたいの単語とトレンドが頭に入っていれば要点は消化できると思います。そうでなくてもこちらのホームページを読んでらっしゃる方であれば、より分かりやすいと思います。(自分は編集者の誰も知りませんが)このページで紹介していることととかでシンクロしてるところもいくつかありました。そうしたことも含めて新年の感動を先ず報告していきたいと思います。

おおまかにですが、まずはこのイヤーブックのメインライターの特集記事から始まります。各方面のトレンド記事のようなもので、昨年(2021年度版)はスコッチの新興蒸留所の動向や、アメリカン・シングルモルトの潮流、ウイスキーのテイスティング(味わい)の哲学などのトピックが並びました。

2022年の最新版はざっと次のようなテーマです。(また詳細は別途じっくり読んだ後にでも紹介できればと思っています)。まずはIan Wisniewskiによる記事。注目したのは「チョコーレート・モルト」などと呼ばれる深煎りのモルト(チョコレートのような色味という意味合い)。スコッチのフレーバーは樽が決めるとよく言われますが、最近は樽以外の要素も注目されてきていると思います。その中で、ウイスキーの粗原料でもあるモルト(発芽大麦)を改めて見直そうという動きを追っています。深煎りのモルトを使うと何となく味わいも渋みとか増しそうなイメージがありますが、どうも逆なようですね。まだ一度も飲んだことがないので、まず一つ目の宿題になりそうです。

次はチャールズ・マクリーン氏とArthur Motleyによるスコッチウイスキーと租税に関する歴史的な話。こちらの話題は自分は疎いのでパッと読んだだけではさっぱり分かりませんでした。また読み直します。次はJoel Harrisonによるウイスキーの将来に関する話。ややマーケティング的な話かもしれません。現在ブームにもなりつつあるスコッチですが歴史的に見れば幾度かのアップダウンを経験してきました。そのたびに新たな蒸留所が出来て、衰退するとまた閉鎖して、の繰り返しをたどってきました。それが今後はどう推移していくのか、そのためにはどういうストックを準備しておかねばならないのか、こうした商品としてのウイスキーを考える最前線の様子を伝えているようです。私見になりますが、今日の蒸留所は量よりも質、もっといえば個性を純粋に追い求めているところが増えてきている気がします。というのは、やはり消費する側のレベルも上がってきてることを生産者側もよく理解している。きちんとしたモノづくりをすれば、かならずその商品を喜んでくれる人がいる、そういうウィンウィンの関係性(これはウイスキーに限ったことではないと思いますが)が形作られているように思います。m(__)m

特集ページ

さて、いよいよやってきました。ここからがこのホームページでカバーしている内容とシンクロしてくる部分です。Neil Ridleyによる「コミュニティ・スピリット ~ローカリズムを読み解く」(原題は”Community Spirit – where localism is the key”)。表紙を飾るのは「ナクニアン蒸留所」でも紹介したアナベル・トーマス女史です。いやあ、やっぱりこの方が来たかという感じです。純粋にうれしいですね。というのは本家のスコッチ業界からすれば、やっぱりあまり面白くはないとも思うんです。バックグランドが違う新参者、女性、そして樽いうよりかはフィールドに帰る作り方。老舗で男性、そして高級稀少樽の長期熟成がチャンピオンのような伝統的スコッチの牙城とは全く対照的。正直評価されるのはもうちょっと時間がかかるのではないかと思っていました。この度量!素晴らしいですね。

そしてこの評価を得た伏線にNeil Ridleyはコロナ禍による行動抑制と地元主義(”Localism”=自らが住む地域を見直そうと言う視点・動き)を挙げています。もっと自分の身の回りを知ろうということです。つまりウイスキーの生産家において、(売れる商品を作る視点という事ではなく)例えば蒸留所の周りで採取できる原料を活用したり、またそれを通じで地元の産業や雇用に直接的または間接的に支えてたり、あるいは地元のコミュニティの活性化に貢献したりという活動に蒸留所が関わっていくことを意味します。これはいわゆる土地の味を表現するという意味の「テロワール」とはまた次元が異なる思想なのかなと思います。

そしてこれは本来は小さな家内工業の延長であったスコッチウイスキーの蒸留所がグローバル資本の傘下に次々と編入され(上位二社でグローバルシェアの半分くらいを占める)即行でグローバルブランドが展開される現状との対比でもあります。つまりファーストフードに対する、スローフードの哲学とでもいいましょうか。自然の流れに合わせてやりましょうよ、ということかなと思います。そのままの引用になりますが、「Grain to Glass」を標榜するイングランド・ケントのコッパーリベット蒸留所の創業者ステファン・ラッセル氏がうまくその想いを要約しています。まだ紹介できていなので、こちらも今年の目標にしたいと思います。

“In a globalized world, with global brands and multinationals, conglomerate brand owners have the ability to create instant international “success”. Often those products fade quickly and are repackaged or replaced by the next big thing. Maybe this is because they have leapfrogged one or two jumps in what should be a natural development in the growth of a brand – who knows?”

“By necessity, we have always had what we call our “3P”: Pride, Provenance, Place”

” In contrast to mage brands, we felt that we needed to build slowly anchoring our products in the local community building a local following, formed not just from their pride in a local business doing something special, but because they love what we produce – as well as what the drinks represent.”

Stephen Russel at Copper Rivet Distillery

p.32 

 

https://twitter.com/rivetdistillery

そして、話はまたアナベル女史の戻ります。アナベルの「ローカリズム」はもう少し寛容的というか、広義なものです。つまり地元主義と言うのは、必ずしも地産地消にこだわるものでないと言います。コロナ禍の行動制限において我々は他の国や地域で作られたものを取り寄せることで、あたかもその地を旅行したような気分に浸るというヴァーチャル旅行の楽しみを覚えました。また、それは逆に今まで見過ごされていた身の回りの発見、つまり自らの地域が作り出しているものに改めて興味を持とうというキッカケを与えるものであったといいます。つまり世界中からウイスキーファンが訪れるかつてのような動きはなくなりましたが、その代わりに近隣地域から蒸留所を訪れる人が増えていると言います。

この系譜で紹介されている蒸留所としては、デンマーク発のテロワール原理主義的なクラフトディスティラリー「スタウニング蒸留所」、アイラ初のテロワール「ブルックラディ蒸留所」、アメリカ西海岸でスコッチを作る「ウエストランド蒸留所」、そして欧米間の関税戦争の影響もあり双方のマーケットで知名度を上げたニューワールドウイスキーの新鋭、オーストラリアの「スターワード蒸留所」等が紹介されていました。ナクニアン蒸留所と合わせて本ホームページで紹介してきた蒸留所ですが、今後の発展にも目が離せそうにありません。

さて、特集記事の後に続くのはこの本のメインパートでもスコッチ蒸留所の紹介です。もちろん主には定番銘柄を主体とするキープレーヤーたち。すごいのは蒸留所の紹介文が毎年違う切り口なんですよね。設備とか歴史に関する記事はさすがにほぼ変わりありませんが。とにかくレギュラーメンバーは毎年同じですが、何度でも読み直しができます。そして、このページの合間にスコッチウイスキー業界での注目人物が紹介されます。ここも誰が挙がってくるのか毎年興味あります。だいたい7~8人くらいです。2022年版は次の方たちでした。ご存じでしょうか。また機を見て掘り下げていければと思っています。各国・地域でスコッチのシングルモルトを立ち上げたパイオニア特集のようです。

蒸留所紹介ページ
  • Neelakanta Jagdale(印アムルット蒸留所)あまり知られてはいませんがウイスキー(ただし広い意味で)の生産量だけであれば実はイギリスの植民地であったインドがトップ。イギリスからの解放後すぐに誕生したのがこのアムルート蒸留所でインドにおけるシングルモルトスコッチのパイオニア。
  • 李玉鼎 Yu-Ting Lee(台湾カヴァラン蒸留所)カヴァランのオーナー会社である金車グループの二代目社長。日本の明治大学に学んだそうで、中野に住んでたみたいというのはどうでも良い情報です。
  • Gilles Leizour(仏アルモリック蒸留所)ブルターニュ発のフレンチウイスキーのパイオニアアルモリック蒸留所で同国初のシングルモルトの立ち上げに尽力。アルマニャック、カルヴァドス、コニャックなどを生んだフランスであるが実はそれら三つを足し合わせたより飲まれているのがスコッチウイスキーなのだとか。
  • Magnus Dandanell(スウェーデン・マックミラ蒸留所)本ホームページでも取り上げたスウェーデン初のシングルモルト、マックミラ蒸留所の創業者。現在はリタイアして自身の経験を本にまとめているのだとか。
  • Bill Lark(豪タスマニア・ラーク蒸留所)オーストラリニアのシングルモルトウイスキーのパイオニアといえばこの人。元々はタスマニアで測量士で父と釣りをしながら飲みかわしたスコッチが蒸留所建設のきっかけに。2015年にはスコッチ業界の殿堂入り(Hall of Fame)を果たした、オーストラリアウイスキーのゴッドファーザー。
  • Steve McCarthy(米オレゴン州クリアクリーク蒸留所)バーボンの国で初めてスコッチのシングルモルトを立ち上げ。旅行で訪れたフランスで当地のオードヴィに惹かれ近所に生育している果物を使って自作できないかと考えたのが蒸留所を作るきっかけ。モルトウイスキーへの挑戦はやはり釣りが関係?!
  • Andrew Nelstrop(英イングランド・イングランドウイスキーカンパニー)圧倒的存在感を誇る本家スコットランドのスコッチウイスキーのイギリスの地で、イングランドからシングルモルトを父子で復活。父亡き後は事業を引き継ぎ更なる発展を誓う。

因みに、以上の人物の奥はワールドウイスキー系の方々ですが、これは特にそこに焦点を置いている訳では無く、今年は敢えてそこに着目してきたのだと思いいます。2021年版を見返すと、見事に老舗蒸留所のベテラン勢がずらりでした。参考までに列挙しておきます。勤務した蒸留所は他にもあるかと思いますが各々のキャリアで代表的なものとして挙げておきます。*敬称略

  • イアン・マックミラン(バーンスチュアート社:ディーンストン・トバモリー・ブナハーヴンなど)
  • アラン・ウィンチェスター(グレンリベット蒸留所)
  • コリン・ロス(ベンネヴィス蒸留所/ニッカ)
  • フランク・マクハーディ(スプリングバンク蒸留所)
  • ジム・マッキュワン(ボウモア蒸留所他)
  • マイケル・ウルクハート(ゴードン・マクファイル社)
  • デニス・マルコルム(グレングラント蒸留所)

こうして書き連ねると早くも2023年版が楽しみになりますね。本家のベテラン、ワールドのキーマンと来たら、次は「女性」とかでしょうかね。はたまた。。。

 

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